実在する製品がたくさん。いくつ分かるかな? |
4月7日発売の『週刊アスキー4/21号 No1024』は、注目のハードウェアスタートアップを特集した(ぜひ本屋さんでバックナンバーを見つけてね)。特集の扉絵を描いてくれたのは絵師のへびつかいさんだ。大量の情報量をスタイリッシュにつめこんだ構図がめちゃ素敵で、思わず制作を依頼してしまったというわけ。
実はへびつかいさんは現役プログラマー。「JavaとかC、Pythonを使ってます」なんて人がどうして絵師になったのか、へびつかいさんの半生を振り返ってもらった。
中学校の壁にスネークがいた
へびつかいさんは島の子供だ。
小学校・中学校と、同級生はみんなご近所の小さな世界。絵が得意なへびつかいさんは、落書き好きの子供だった。
「メタルギアソリッドにどハマリしていたころ。シャープペンで壁に絵を描いていて、中学校の壁にスネークがいました」
先生を困らせながらも描きつづけた。だが、高校に上がると事情は変わった。
小・中学校とちがい、高校にはいろいろな場所から、いろいろな才能を持つ生徒が集まっている。だが、自分と同じレベルで切磋琢磨する友達が見つからず、いつしか情熱は薄れていった。帰宅部になり、ゲームをして、テレビを見て、のんびりした高校生活を送ることになる。
押入れ少女(2013)pixivより |
大学時代にイラスト愛が再燃「100枚あっさり描いた」
絵への愛情が再燃したのは大学時代だ。進路を考え、情報系学科の研究室に進んでいた。ある年の10月のことだった。
「今年もあと3ヵ月で終わるなあと思っていたとき、『Yahoo!知恵袋』に100件回答しようとしたことがあったんです。ただ、最初の30件くらいは楽勝だったんですが、後半は回答する質問が少なくなって、ただただ苦痛な作業だったんですけど……ともかく知恵袋を終えたあと、100という数字はキリがいいので、今度はイラストを100枚描いてみようかと思ったんです」
1~2週間ほど1日1枚のペースで絵を描き、pixivに投稿してみた。しかし、閲覧数はたった2人ということもザラ。pixivには同年代なのに良いイラストを描いている人がいた。悔しかった。こんなはずはないと、失っていた情熱にふたたび火がついた。
毎日夢中で描きつづけるうち、気づけば描くことそのものが楽しくてたまらなくなっていた。
「30枚を過ぎたくらいのころ、100枚とかどうでもよくなってきたんです。もう面白すぎて。最初は2~3時間だったのが、最後は1日7時間くらいかけるようになってました」
双子のアシンメトリー(2013)pixivより |
pixiv有名絵師になるも「まだまだです」
以来数年でめきめき腕を上げ、pixivでも「ハイセンス」「なにこれ素敵」「10点じゃ足りない」と賞賛のタグをつけられることも増えてきた。
評価に比例し、仕事の依頼も舞い込んできた。最初はボーカロイド系CDのジャケットを手がけ、やがて小説『環八イレギュラーズ』(中央公論社)の装画、最近では『空想法律読本』(KADOKAWA/メディアファクトリー)などを担当した。
「もっと感動があるかと思ったんですけど、自分のイラストを本屋で見かけると『ここはもっとこうしておけばよかった……』と思っちゃうんですよね……」と苦笑する。
しかし、ほかの絵師と比べられると「いやいや、全然及ばないですよ」と首を振る。
「まだまだ理想が低すぎる。完成度を上げていかなければいけないと思ってます」
海上自営隊(2013)pixivより |
きれいなコードのように美しい作品世界
イラストを描きはじめたときは漫画『けいおん!』のようなかわいいイラストが大好きだったというへびつかいさん。しかし自身の作品に求めるものは、イラスト全体としての完成度だ。
「キャラを描くのはあんまり面白くなくて、作品を完成させるのが面白かったんです」
完成された作品とは、構図、カラー、デザイン、バランス、すべてが調和して過不足のない世界。昨日より作品が完成に近づいている、そう思うだけで楽しくなり、のめりこんでいく。
「とにかく家にいるときは、イラストを描きたい欲がおさえられないんですよ」
いくら時間がかかってもまったく苦にならないそうだ。
現在はデザインやイラストを本業にできないかと考え、プログラマーとのバランスを考えているところなのだとか。
プログラムの世界ではよく「美しいコード」という言い方をする。膨大な情報がムダなく整理されて配置されたイラストは、まるで絵に描かれたプログラムのようだ。へびつかいさんの作品は、今日も美しい完成形をめざして進んでいる。
■関連サイト
hebiport へびつかい 公式サイト
pixiv
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