3月23日に発表された株式会社フォトシンスのスマートロックロボット「Akerun」。一般販売は4月23日からだが、(株)フォトシンスとネクストが共同で開発した「スマート内覧」の実証実験を取材できた。カギのスマート化が賃貸業界に与える影響についてレポートしよう。
■スマホひとつでロック解除
「スマート内覧」の実証実験は、東京都足立区・江戸川区と、神奈川県横浜市で実施されている。今回は、足立区にある(株)アミックスが管理している物件を取材した。
江戸川区某所にある実証実験の対象物件。閑静な場所にあるごく普通のアパートで、最先端の実証実験の場所にとても見えない。 |
この物件のカギには「Akerun」が取り付けられており、内覧希望があった場合に仲介会社は管理会社から発行されたキーをスマートフォンで受け取ってカギを開ける。
サムターンの部分に「Akerun」が取り付けられている。Akerunは特殊な粘着テープで固定されているので、導入時に工事費がかからない点も魅力だ。 |
フォトシンスの河瀬航大社長が自らデモ。スマートフォンから開錠操作をすると、2秒ほどでカギが開く。実にシンプルだ。 |
Akerunはオートロック制御になっているので、内覧が終わって帰る際にカギを閉め忘れたとしても、自動的に部屋はロック状態に戻る。Akerunのメモリーにはいつ誰がカギを開けたのかが記録されており、この記録は管理会社がサーバー上で確認できるので、カギがどれくらい使われたかの管理も容易だ。
■なぜスマートロックが必要なのか?
ここまで読んで、「わざわざコストをかけてスマートロックなんて付けなくとも、カギなんて今までどおり借りてくりゃいいじゃないか」と思うかもしれない。筆者もそのように考えていたが、これは不動産業界の構造に関わる問題なのだという。
賃貸物件の貸し借りの仕組み。賃貸物件は「オーナー」が「管理会社」に委託して貸し出し、管理会社は「仲介会社」を介して広く部屋の借り手を募集する。1つの物件に複数の仲介会社が関係していることも珍しくないという。 |
これまでは借り手が仲介会社に物件を問い合わせると、仲介会社から管理会社へ部屋の空き状況などが電話で問い合わせられ、空いていれば管理会社からカギを借りて物件の内覧という流れだった。このシステムだと、まず仲介会社の誰がいつ問い合わせをしたのかが記録に残りにくく、管理会社からカギを借りに行き、返す手間や交通費、時間もかかっていた。例えば、借り手が異なる管理会社の物件を5件見たい場合、5カ所からカギを借りに行かねばならず、契約に繋がらなかった場合はこのぶんの人件費や交通費が丸々損になってしまう。
カギの貸し借り。顧客からの問い合わせを受けてから部屋の空きを確認し、内覧日が決まったらカギを受け取りに行き、内覧が終ったらカギを返却する。この、カギの受け渡しにかかる部分がメール等で済ませられるため、大幅に短縮できるようになる。 |
従来は、カギの貸し借りの手間を省くために、部屋の傍にキーを入れたボックスを用意したり、ダイヤルロックで施錠するケースもあるそうだが、これらも番号を使い回すケースなどが多く、セキュリティー上問題が多い。
交通費をかけずともメールなどで電子キーを送付でき、キー自体にも利用時間制限などを細かく設けられ、ログも残せるAkerunを導入すれば、これらの問題が一気に解決するというわけだ。さらに、カギの貸与や開閉のログが残ることで、物件のオーナーや管理会社は、どの仲介会社が熱心にその物件を紹介してくれているかを確認できる。こうして管理会社と仲介会社の関係も、より効率的に変わっていくわけだ。
現時点ではまだ実証実験が開始されたばかりだが、早ければ1〜2年後には賃貸業界の主流になっていくことも考えられる。Akerun自体の応用範囲は不動産業界に限らず幅広いこともあり、将来性が楽しみなプロダクトだ。
Akerunについては、コンセプト画像がYouTubeで公開されている。
■関連サイト
Akerun(製品紹介)
Akerun(購入)
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