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いつまでも待ってるから……発送待ち実録1年半!360度ストリーミングカメラのクラウドファンディング体験記

 今日は、クラウドファンディングの一ファンの視点から、ずっと待ち焦がれているけどなかなか届かない、そんな歯がゆいクラウドファンディングプロジェクトの商品をご紹介します。

360度のムービーが撮れるBublcam(バブルカム)

クラウドファンディング体験記

 最近は、リコー『THETA m15』で3分間の360度動画が撮れたりできるようになったり、YouTubeで360度動画がアップできるようになったりと、いよいよ360度のパノラマ動画が大ブレークしそうな予感がします。

 ただ、世界有数のクラウドファンディングサイトのキックスターターでこのプロジェクトが開催されていた2013年11月は360度ムービーはそんなに手軽に撮れるものではなく、GoProを6台組み合わせたものを使ったりした割と大掛かりなものでした。

 360度動画をつくろうとするときにネックになるのが、“ステッチング”という、別々に撮られた動画をつなぎ合わてひとつの動画にする作業。

クラウドファンディング体験記

 このbublcamがとっても画期的なのは、このステッチングをリアルタイムで行なってくれるため、たとえば360度のビデオストリーミングができてしまうということ。そんなこともあって、プロジェクトは808人が支援、目標の10万ドルを大幅に超え、38万ドル(日本円で約4200万円)が集まり大成功しました。

 さて、プロジェクトが開催されていた2013年11月時点では、bublcamの出荷予定は 2014年5月でした。その後、何回かの活動報告を経て、1月13日を最後にプロジェクトオーナーからの情報が途絶えます。次に活動報告がアップされたのが3月。

3月22日「Tシャツ完成したので送ります!」
4月7日「Google MapsやStreet Viewに写真をアップロードすることもできます」
4月18日「タブレットアプリのアルファ版ができました」

Bubl Mobile/Tablet App Alpha Demo from Sean Ramsay on Vimeo.

 すごくおもしろそう! 早く欲しい!

 ここでまた1ヵ月以上活動報告がなくなります。「本当に届くんだろうか」と、徐々に支援者の不安が募っていきます。そして、プロジェクトの潮目が変わったのが当初の出荷予定だった5月末の、この活動報告。

5月23日「プロジェクトをローンチした時には、数百台つくろうと思っていたところ、予想をはるかに超える数千台の支援が入りました。その結果、当初予定よりも沢山の人を雇い、設計図もつくり直しました。また、ハードとアプリ両面で、改善できる点が幾つも見つかりましたた。本当は夏までに出荷したかったのですが、こうした設計変更などを踏まえて、より完成度の高い製品をお届けするために出荷予定を8月に後ろ倒しします」

クラウドファンディング体験記

 行間を読むと「いろんな問題がどんどん明るみに出て、そのままの予定では到底届けられないことがわかった」というような感じでしょうか。

 ところが、支援者は意外なくらい好意的で、「状況報告ありがとう。楽しみにしているよ!」というようなものばかりでした。

その後……

6月17日「カメラは8月~9月にかけて、支援していただいた順にどんどん発送します」
(前回は8月に、という話だったのですが……)

クラウドファンディング体験記

 6月23日にはライブストリーミングのデモ映像が。これまたカッコイイです。

 7月末になると支援者が「活動報告まだ?」とコメントし始めます。そして延期された出荷予定の8月が来ました。

8月30日「みなさんが心配している声を真摯に受け止めています。製品はどんどん進化し続けていますが、ハードの品質向上などに予想以上の時間がかかってしまっていることもあり、商品出荷は10月の第3週からとなります」

 という発表が。

クラウドファンディング体験記

 おっと、今度は10月に延期か!そして当たり前ですが、また10月に入るとコメント欄に徐々に心配の声が寄せられるように。「これってひょっとして詐欺?」、「どんな小さなことでもいい。「生きているよ」でもいいから、活動報告お願い」とか……。

 それを受けて、ポツポツと、ただ、きちんと活動報告が続きます。

10月21日「工場からの商品入荷を10月20日に予定していましたが、レンズのピント合わせに問題があることが判明したとの連絡がありました。続報が入り次第お知らせします」
11月5日「ピント合わせの問題は、製造ラインの問題によって発生していたようです。骨組みを組み立てる工程で、余計な圧力がかかったためピントがずれる問題が起こったようです」

クラウドファンディング体験記

12月4日「活動報告が遅くなってしまいすみません。これまで沢山の課題に直面しましたが、中でも大変なのが、複数の映像のキャリブレーションでした。以下の写真でもわかるように、工場から出荷されたままだと1台1台キャリブレートしないとうまく映像がつながらないことが判明しました。チームで検討した結果、これまでに届いたサンプルの半数を手作業でキャリブレートし、残りを工場に送り返して、修正を加えてもらうことにします。また、併せて手動キャリブレーションが必要なくなるような自動キャリブレーションを開発中です」

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12月19日「出荷予定は現時点では未定です。どんな場合にせよ、支援者の方々には必ず一番に商品をお届けします。現在の予定では、フルスケールでの生産は2015年春を予定しています。その時には、モバイルアプリ、自動キャリブレーションなども含めてお届けします」

 ついに、出荷予定から日程が消えました。

12月25日「支援者の方限定で、自動キャリブレーションがどのように行なわれるかデモします」

 実はこの活動報告、実際にプロジェクトを支援した人にしか見れないのですが、ビデオを見る限りは非常にうまく機能している様子!ここで一気にbublcam出荷へのリアリティーが増します。よしよし。

1月8日「YouTubeの360度映像アップロードもサポートします」
1月25日「外部電源を使っている限り、ずっと映像を撮り続けることができるようになりました!」

クラウドファンディング体験記

 え、今までは違ったの??どうやらとても電気を食う仕様になっていたらしく、USBで電源を供給してもやがて充電がなくなってしまっていた問題が解決したとのこと。

2月25日「生産スケジュールに今のところ変更はなく、春の製品出荷に向けて頑張っています」
3月7日「40回目の活動報告です!あと数週間で春ですが、今のところまだスケジュールに変更はありません。また4月末までにはiOS/Androidアプリがアプリストアに登場する予定です」

クラウドファンディング体験記

 と、そうこうしているうちに、もうそろそろ春が来てしまいそうで、コメント欄には今も「あと数日で春ですが……」みたいな書き込みが散見されます。これを書いている時点ではまだ、きちんとした出荷日のアナウンスはありません。

 ただここまで待つと、だんだんとストレス耐性もついてきて、「届いたらその時によろこぼう」というようなメンタリティーになってきます。そう、1年近く待たされても、まだbublcamが届く日を心から待ちわびている自分がどこかにいるのです。

 プロジェクトを支援した人達からすれば、何にも伝えてくれない人よりも、良いことも悪いことも含めてきちんと真摯に伝えてくれる人の方が、はるかに安心できるということのようですね。

 なんだかこれだけ書くと、まるでクラウドファンディング自体が怖いもののようにも聞こえますが、幸いにして日本ではこのような話はあまり聞きません。たとえば我々(きびだんご)は、プロジェクトオーナーの方が「約束をきちんと守り、特典となる商品やサービスなどをちゃんと支援者に届けてくれるかどうか」を非常に大事に考えていて、約束した特典についてはお金さえ集まれば、実行できるかどうかを審査しています。

 ところで皆さん、ちょうどお腹が空いた時に入ったレストランで注文しすぎて、食べられないくらいの量が出てきてしまったこと、ありませんか?

 実はこのプロジェクトを支援してから、既に2つの360度カメラプロジェクトを支援してしまいました……。うちひとつは支援が目標まで集まらず、未達成に終わってちょっとホッとしたり。

クラウドファンディング体験記

 次に支援したこちらの360度カメラ『360cam by GIROPTIC』は、2014年8月の出荷予定だったのですが、今もまだ届いていません……。

クラウドファンディング体験記

 おもしろかったのは、今年の2月になってから、年賀状が届いたことでしょうか。これがその2月に届いた年賀状。

クラウドファンディング体験記

 どちらのカメラが先に届くか、気長に、でも暖かく見守りたいと思います。

松崎良太 松崎良太(きびだんご株式会社 代表取締役 Chief Momotaro)
 日本興業銀行を経て2000年に当時100人足らずの楽天に入社。国内外のおもしろい投資買収先を見つける仕事などに携わる。退社後2013年にクラウドファンディング型EC『kibidango【きびだんご】』を立ち上げ、事業主やクリエイターの“やりたいこと”をみんなの力を借りて実現するお手伝いを行なっている。

 

■関連サイト
kibidango【きびだんご】
Kickstarter

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