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ロボットドライバーが我々の身を守る方法

2015年04月21日 09時00分更新

「デイブ、君に運転させるわけにはいかないよ」(ReadWrite Japan提供記事)

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2015年現在、今年のSXSWフェスティバルで身近になったテーマが自動運転車だ。その技術は短期間に進化し、はるか遠い未来の夢から、今後5~10年以内に日常生活に溶け込みそうなものとなった。

その急速な進歩により、多くのドライバーがしぶしぶ運転席を譲ることになる。いつでもソフトウェアプログラムに車の支配権を譲れるという人は、業界外にはほとんどいないだろう。しかし、自動走行車の最先端にいる人々は、われわれの向かう方向性について、臆面もなく率直に述べている。

「遠い未来、車を運転することは法律で禁止されるかもしれないと思います。なぜなら非常に危険だからです」イーロン・マスクは今週行われたNvidiaの協議会の壇上で語った。後に彼はTwitterで、彼自身はこのようなことは望んでおらず、テスラの車には常にヒューマン・モードが搭載される予定だと強調した。だが、この発言は、自動走行技術が最終的にどう展開するかについて長期的な観点を示しており、興味深い。

テクノロジーの巨人、グーグルで自動運転車プロジェクトの責任者を務めているアストロ・テラーは、数日前、SXSWの講演で同様の所感を述べた。グーグルの自動運転車からはハンドルが撤去されることが決まった。なぜなら、人間には二次的な運転手としての役割を安心して「任せ」られないためだ、と彼は語った。人は運転の際に「本当に愚かなこと」をする、と。

どうしてそれを知ったのだろうか?グーグル自身の実験からだ。同社の社員は自動運転車の路上テストを行った際に多くのミスを犯し、人間による運転は全くの逆効果となった。テラーは「良い結果ではなかった」と述べるに留まり、詳しくは説明しなかったが、グーグルは現在、運転の諸要素から人間が関与する部分を完全に除外しようとしている。

時は2025年、あなたは車に自動運転をさせれば、より安全に、より速く、よりリラックスして出かけられることを知りながら、ガレージに向かう。さて、あなたは本当に自分でハンドルを握ろうとするだろうか?(運転するのが違法ではないと仮定しても、だ)

シフトチェンジ

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グーグルの自動運転車のプロトタイプ

ロボットに自分をコントロールさせるという少々嫌な考え方を変えてみれば、より深い真理が現れる。われわれ人間は運転が非常に上手いというわけではない、ということだ。われわれはぼんやりしたり、怒ったり、疲れたりする。知っていたはずの道路のルールを忘れてしまうし、合理性よりもリスクを取ってしまうこともよくある。

全能で信頼性の極めて高いロボット・ドライバーは道路上の安全に劇的な変化をもたらすだろう。高速道路の悲惨な交通事故だけではなく、実生活での安全が保障されるという面においてもだ。あなたには生け垣に隠れてしまった自転車がわかるだろうか?レーダーセンサーならばそれができる。ストックホルムでの最近の研究によると、ラッシュアワーの交通渋滞はほとんど解消可能だという。自動運転車は加速やブレーキのタイミング、合流地点などを正確に知っているからだ。

自動運転車と聞くと、多くのドライバーは最悪のシナリオを思い浮かべてしまうようだ。突如として自分の意思を手に入れたロボットによって、橋から落とされたり、湖に突っ込むなど。だが現実には、ロボット・ドライバーは人間よりもはるかに速く突然の事態に対応できる。同時に多くの情報を取り入れ、ミリ秒単位で然るべき措置を決定し、人間の両腕と両脚にはできない操作によって車を動かすことが可能だ。

私はイギリス人だが、昨夏に米国で道路の「反対」側をしばらく運転していたことがあった。全く新しいルールや規則を覚えるのは難しい。州ごとにそのルールが変わることも、だ。もちろん自動運転車ならば、現在地によってソフトウェアのモードを切り替えるだけで済むだろう。

これは良い例えというわけではないが、現在、旅客ジェット機に自動操縦装置が標準搭載されていることは、自動運転車について考えるにあたり、示唆に富んでいる。エールフランス447便の大西洋墜落事故のような最近起きた数例の悲劇的な事故では、いったん自動操縦が解除されると、責任はパイロットの操縦ミスにあるとされてきた。自動操縦装置によって空の旅がより安全になったのは間違いないが、自動化されたシステムは非常に信頼性が高く、大局的な判断を行うため、パイロットが予想外の緊急事態に正確に対応する際には効果が下がるという説もある。

アストロ・テラーが示唆しているように、われわれは完全に自動車に運転を委ねなければならないのかもしれない。

自動運転車の未来

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日産とNASAは自動運転テクノロジーで提携を結んでいる

だが、ロボット・ドライバーが良い成績を出しているのはデータ上だけであり、それを可能にしているのはセンサーだ。われわれには欠陥があるものの、自転車が急に方向転換しようとしたり、土砂降りの日に停止信号を見る際の判断では、人間のほうがまだはるかに優れている。現在、自動走行車が非常に高い水準に到達しているのは、晴天時に高速道路を決められたルートに沿って走る場合であり、その他のあらゆることに関しては、未だ格闘中である。

自動運転車がどんな場合でもその能力を証明できるまで、われわれは鍵を渡すわけにはいかない。店まで10分運転して帰ってくるまでの間、どれほど多くの問題に対処しなければならないか考えてみてほしい。駐車場をぶらぶらと横切っている高齢者に道を譲るなど、われわれが当たり前にしている行動が、自動運転システムにとっては様々な種類の問題を生み出すことになるだろう。

外出できるようになることで高齢者や障害者が活気を取り戻したり、人間が立ち入ることのできない地域を探検できるようになるなど、自動運転技術がもたらす利点までをここで述べることはできなかった。考慮すべき利点は非常に多いため、自動運転車は初めは徐々に導入されるだろうが、その登場は間もなくのことになるだろう。日産は2020年までに半自動運転車を実用化する予定だ。

もちろん、多くの規制問題を乗り越えなければならない。それは全く新しいテクノロジーにはつきものだ。だが、次にあなたが自動運転車のニュースを目にしても、慌てる必要はない。それは人間の役に立つためにあるのだから。

画像提供:Daimler, Google and NASA

David Nield
[原文]


 

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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。
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