ライゾマティクス取締役 真鍋大渡 |
未来のクリエイティブ・プロダクトが集まるイベント「SENSORS IGNITION 2015」が6日、東京・虎ノ門ヒルズで開催。ライゾマティクス取締役 真鍋大度氏(以下、一部敬称略)がキーノートをつとめ、本人が手がけてきた作品を解説した。
真鍋が手がけてきたのはいわゆるインタラクティブアート。「映像のインタラクションはかなり古くから始まっている。70年代から画像解析を使った作品はある」(真鍋)としながらも、いわゆる「枯れた技術」をいかに新しく、いかに現代的なエンターテインメントに更新できるかに真鍋は取り組んできた──
なんて、変にきどった言い方することもないか。Perfumeのライブに行ったことがある人はおなじみかもしれないけど、真鍋さんの作るものはほんとにかっこいい。エンジニアっぽいというか、アイデアを形にする力が素晴らしいんだと思う。まずはYouTubeから見てみて。キーノートから抜粋した解説つきだよ。
Drone Scene(ドローンシーン)
真鍋:
フィードバック技術とモーションキャプチャーする技術を使い、ダンサーとドローンのコラボを作った。人工知能的なものは特に入ってない。どういう仕組みかというと、モーションキャプチャーのカメラがついていてヘリがついている。ダンサーがヘリを持って動かすと、軌跡がレコーディングされる。振付家に動きを作ってもらって、プレイバックすることでだいたい同じ軌道をドローンが飛んでいくようになる。どういうことができるか。ドローンはセンサーを使って動きをつける必要があるが、ダンサーの動きをためこむことで自律的な動きをつけていける。ダンサーがこっちに動いたらこっちに動くというのを考えるようにできないかと。振り付けデータをどう集めたらいいか考えたりしている。
Love Song Generator(ラブソングジェネレーター)
真鍋:
話しかける言葉が歌のタイトルになる。「人生は花」と言うと、その歌詞を入れた歌を自動生成して、やくしまるえつこの声で歌ってくれる。5文字か7文字のフレーズになるように作った。どうやって自動生成するかがキモで、初めてビッグデータ的なアプローチをしたもの。マイクでしゃべった言葉を検索して、6万5000曲の中から「人生」という単語を使った曲を探す。愛について歌われている曲を探し、どれだけ愛について歌われているか計算し、フレーズを組み合わせて曲を作っていた。やくしまるえつこの歌を自動で歌う部分は、彼女に五十音を全部歌ってもらったものを使った。ファイル数がものすごかった。
Traders(トレーダーズ)
真鍋:
ビッグデータネタで何かをやろうと作ったもの。自動取引のアルゴリズムを作って、実際にやってみせた。300万円くらい投資をしてどうなるかを美術館で展示するという作品だった。ただ実際に美術館で取り引きはできなかったので仮想の取り引き。人工知能というかアルゴリズムが条件を見て売ったり買ったりする。どういうアルゴリズムを作るのか。実際にリアルタイムでデータをひっぱってくるのは難しいので、東証と日経クイックを作っているところにプレゼンに行き、リアルタイムでサンプリングレートが取れるような特別回線を使わせてもらってやっていた。プロジェクトで依頼されるものはインタラクティブなものが多いが、自分の美術館に展示するものに関してはそういうビッグデータネタでやろうかなと。
YourCosmos(ユアコスモス)
真鍋:
ビッグデータでラップができるかなと。韻を踏むのはコンピューターの方が得意なはずだと思い、ルールを作ってラップをさせた。アルスエレクトロニカで見せたもの。メディアアートについての話、ヒップホップについての話で韻を踏んだりした。ただ、それだけだと事前に作ったのと一緒になっちゃうので、ツイッターのトレンドをとってきてラップに入れるようなことをやった。すごく簡単に説明すると、発音がいかに似ているかを発音記号に変換して、変換した発音記号がどれだけ近似しているかを計算。韻を踏んだり、相関上似ているフレーズを見つけた。「ウェルカム・トゥ・シリア」で「ユーキャン・ビー・シリアス」が見つかった。「コートアップ・イン・エモーション」で「コンピューター・アニメーション」が見つかった。日本語版も作ってたまにライブをしている。ハッシュタグを打つとそこから韻を踏みはじめるとか、そういうことをやってる。
Perfume 4th Tour in DOME「LEVEL3」(動画はDVDで!)
真鍋:
Perfumeの2013年ドームツアーでやったもの。3Dスキャンのブースをプリクラの全方位版みたいなものとして作って、3秒に1人のペースでスキャンデータを取っていった。合計1万体近く集まった。そのデータを使い、当日のライブ映像を作ることをやった。ギリギリまでやってるけどいくつかのスキャンデータを集めてレンダリングに回した。実際の座席の位置を入口でスキャンして、実際の場所になるようにスキャンデータを置いた。当日来た人の中からつまみあげた。ライブのときは生カメラも入ってるので、驚いてる顔を一瞬見せてあげたりとか。Perfumeの3人がよく「Perfumeはみんなで作られてる」と言っていったり、演出をしているMIKIKO先生から「3Dスキャンを使って何かできないか」という話をもらいながら作ったもの。プログラミングとして実装するところが大事なところではあるが、3人や演出家のMIKIKOさんがやりたいことを翻訳して、今いけてる技術と組み合わせて演出する。そう考えると半分くらいは翻訳作業みたいなことをしてる。ファンの方とかライブに来てる人とステージの関係をどう更新するかを考えてやっているので、参加型のプロジェクトが多い感じ。
REMEMBER OUR STADIUM(リメンバーアワースタジアム)
真鍋:
国立競技場が改修工事に入る前に作られたウェブサイト。そこでどういうことをしたかというと、カメラを5000人に持ってもらい、いっせーのせで国立競技場を撮影しようとした。5000枚の写真から3Dモデルを作って、それを残す。写真が複数枚あるとどこから撮ったか推定できるので、どの席から撮られたかを大量の画像を使って推定する。そこから3Dモデルを起こしてきた。60枚くらいの写真を使ってカメラ位置を推定して、推定したデータからモデルを作る。よく3Dスキャンなんかでも使われてる方法だけど、それをこういう大きな場所でいろんな人のカメラを使ってやった。コンセプトは「みんなで残す」というのが大事。スマホのカメラを持ってきていて、そのリソースをいかに有効に使うかというのを提案して実現したプロジェクト。
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そのほか、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出演したときには、TEDやプロフェッショナルでよく使われるフレーズと自分のツイートやメールを組み合わせて、それっぽい”プロフェッショナルとは』を生成するジェネレーターを作ったりしていた。次に何をしてくれるのかほんとに楽しみな人。あー、ライブで見たいっ!
写真:編集部
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