NECが2月5日に発売した『LaVie Hybrid ZERO』。最上位のHZ750はヒンジ部分で360度回転する2in1ながら926グラムという驚異の軽さを実現している。この軽量化の秘密について、同シリーズを企画した仕掛け人である中井氏に聞いてみた。
NECパーソナルコンピュータ
商品企画本部 プラットフォームグループ
中井裕介氏
軽さ追求のポイントは天板とタッチパネル
2in1化を実現しながらも、重量1キロ切りを実現した『LaVie Hybrid ZERO』(以下、ZERO)。当たり前だが、軽さを追求するなら、従来モデルの『LaVie Z』(以下Z)と同様、クラムシェル型のほうが軽量にしやすい。実は2代目のZでタッチパネルを搭載したときも、2in1化するかどうかという議論があったそうだ。ZやZEROの商品企画を担当している中井裕介氏は「当初からタッチパネルを搭載するなら完成形は2in1だろう、と考えていました」と語る。Z開発当時の技術では、断念したものの、その後技術が進歩して2in1でも軽量化できるめどが付いたそうだ。
では、ZEROで軽さを維持しながら2in1化を果たした技術とはどういったものなのか。そのポイントとして中井氏が挙げたのが、“マグネシウムリチウム(Mg-Li)合金の天板への採用”と“フィルム型タッチパネルの採用”の2つだ。 Mg-Li合金は、マグネシウム(Mg)合金と比べて比重が約75%と軽量だが、ほぼ同等の強度を備える新素材。Zシリーズで初めて採用された。ただ、Mg-Li合金は加工が難しく、Zではボディーの底面にのみ採用していた。ボディーの底面は平板に近く、内側にも突起などがほとんどないシンプルな形状だ。それに対し天板は、外観こそシンプルだが、内側にはボスと呼ばれるネジ穴用の突起や、強度を高めるリブがあるなど、かなり複雑な構造。そのため、底面と同様のプレス加工では製造が難しかった。しかし、材料をたたいて加工する“鍛造”という方法を取り入れ、複雑な形状でも製造できるようになった。
結果、天板だけで十数グラムの軽量化を実現したという。「従来のZのMg合金の天板でも、0.6ミリ厚だったので十分に軽量でした。そこからの十数グラムの軽量化は、たったそれだけ、と思われるかもしれませんが、かなりのブレークスルーでした」と中井氏は強調した。実際にZの天板とZEROの天板を手に持って比べてみたが、Zの天板でも十分に軽い。しかし、さらに軽量なZEROの天板は、手にした瞬間に驚きを感じるほどの軽さだった。
重量の差は十数グラム
↑右がZERO、左がLaVie Zの天板。かなり薄いが組み上げると規定の強度に達するという。 |
タッチモデルの底面はやや重い
↑ZEROのタッチモデルと非タッチモデルは底面のつくりが少し異なる。黒い樹脂部分のぶんやや重い。 |
タッチパネルには軽量フィルムを採用
一般的なタッチパネルはガラスを利用するのに対し、ZEROのタッチパネルはガラスではなくPET素材のフィルムを採用する。フィルムはガラスよりも圧倒的に比重が軽く、当然軽量化につながる。その反面、非常に柔らかい素材のため、どうしても強度が劣る印象を受けるのも事実。しかし、その点について中井氏は「ガラスに比べて品質が落ちるようでは出荷するわけにはいきません。当然自信を持ってお出しできる品質で出荷していますので、安心してお使いいただけます」と語る。
強度については、液晶部分のボディー厚を約1ミリ増やし、側面の壁を高くして補っている。また、フィルム自体の強度は、表面のハードコーティングによって克服。ガラスタッチパネルと比べてほぼ遜色のない表面硬度を実現しており、フィルムだからキズがつきやすい、ということもないそうだ。ちなみに、液晶パネル自体には従来と同様ガラスが使われているので、ガラスが一切使われていないということはない。タッチパネルの素材がガラスからフィルムに変わっただけなので、そういった意味では液晶部の強度はタッチパネル非搭載モデルと同等以上と考えていい。
なお、タッチパネルは従来と同様、液晶パネルに直接貼り付ける“ダイレクトボンディング”なので、ガラスより柔らかいフィルムでは扱いが非常に難しかった。ただその部分も、製造技術の進化で克服したそうだ。「Zも軽量化のためにタッチパネルに薄型のガラスを採用しましたので扱いが難しかったのですが、今回はそれよりも柔らかいフィルムですし、13.3インチという大きなサイズですから、非常に難しい課題へのチャレンジでした」(中井氏)。
ヒートパイプの長さの違いでさらに軽量化
LaVie Z
LaVie Hybrid ZERO
↑2in1になったことでファンの位置を変更。併せてヒートパイプが極限まで短くなったことで、さらに軽くなった。 |
メモリー8GBもこだわった部分
従来のZシリーズはメモリーを4GBしか搭載しないなど、軽さを追求するために性能面で妥協した部分があった。当初は、割り切ったユーザーに向けた製品として投入していたが、製品の認知度が高まるにつれて、性能面に対するフィードバックも多くなってきたそうだ。そこで、ZEROでは性能面についてもメスが入れられている。中井氏は「今回は性能の強化は重くなってもやろう。でも、その部分は重くなっても全体としては軽くしてね」と開発にお願いし、性能強化で大きな進化となったのが先述のメモリーだ。最近の高性能ノートのほとんどが8GBのメモリーを搭載する。メモリーの増加はユーザーから最も多く要望があったとのこと。そのため、ZEROのコアi7搭載モデルでは8GBとZから倍増。デュアルチャンネルになり、CPUやGPUの性能をフルに引き出せるようになった点もポイントだ。メモリーを大量に使うソフトでは従来モデルから大幅に快適になる。
また、ウェブ直販モデルでは、PCI-E接続の512GB SSDが選択できたり、クラムシェルモデルでも大容量バッテリーが選択できるなど、仕様選択のメニューが従来より大幅に充実している。これも、こだわりのひとつだという。中井氏いわく「これまでは軽量化に特化して割り切るものはすべて割り切るぐらいのイメージでやってきましたが、今回はBTOのセレクションも充実していますし、来るところまで来たかな、という感覚です」とのこと。
Fristaは戦略的位置付けの製品
また、LaVieは'15年春モデルで初代LaVieの登場から20周年となる。その節目に、“LaVie”はノートPCだけでなく、デスクトップPCも含めたNEC製PC全製品に加え、アプリやソリューションなども含めたPC関連製品の統一ブランドとなった。LaVieは、フランス語で“生活”という意味で、より身近に生活の中に取り込んでいってもらいたいという思いから統一ブランドとして採用したという。
Fristaはどこでも使える
↑『Frista』は液晶を机に水平に折り曲げて、タブレットに近い形状で使うことも想定されている。 |
その新生LaVieの中で、戦略的な製品として位置付けられているのが『LaVie Hybrid Frista(フリスタ)』(以下、Frista)だ。同社の調査ではA4ノートPCユーザーの多くが据え置きで使っているという。Fristaはキーボードを収納し、狭い場所に置いて使えるという点で、A4ノートPCよりも設置自由度が高い。ジェスチャーや音声など、手を使わずに操作すればキッチンカウンターまわりでも利用しやすいとしている。バッテリーも内蔵しているので、短時間ならACなしで駆動。ある意味こちらも“2in1の進化形”と言える。
スマホやタブレットの普及でPCの位置付けが大きく変化している現在、これまでにない発想の製品が求められているように思う。そういった中で、PCブランドの再構築を試みているNEC。今後の展開に要注目だ。
そのほか、週刊アスキー2/24 No1016号の特集『春モデルノートPC購入ガイド』では、各社の特徴的な春モデルPCを詳しく掲載。軽量、薄型、バッテリー駆動時間においてそれぞのNo.1製品を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
■関連サイト
NECパーソナル商品総合情報サイト
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日本電気 LaVie Hybrid ZERO - HZ750/AAB ストームブラック PC-HZ750AAB
204,295円
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日本電気 LaVie Hybrid Frista - HF750/AAB ピュアブラック PC-HF750AAB
193,890円
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