週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

緊急時にAEDを届けてもらうためのアプリ「AED SOS」が3月に京大で実証実験

2015年02月09日 18時00分更新

 みなさま、こんばんは。いまは週刊アスキーの吉田でございます。さて突然ですが、AEDをご存じでしょうか。「Automated External Defibrillator」の略で日本語では自動体外式除細動器と呼ばれる、れっきとした医療機器です

AED SOS

 AEDを簡単に説明すると、機器の音声ガイダンスに従って操作すれば、心停止を起こしている人に対して素人でも適切な電気ショックを与えられる救命機器。

AED SOS

 心臓が停止している時間が長くなるほど急激に生存率が落ちていくので、救急車がすぐに来られない場所に心停止した患者がいる場合、AEDによって心停止状態から復帰させることで生存率が上がるというわけです。一般には心停止から5分以内にAEDを使って心臓を動かせば、生存率が大幅に向上するそうです。

AED SOS

 1年間で心停止による突然死で亡くなる人は約6.5万人。1年間で交通事故で亡くなる人は4300人程度であることを考えると、かなり多いと言えます。

AED SOS

 とはいえ、AEDは民間レベルでは設置義務はなく、どこにでもあるというわけではありません。最近の新しいビルには設置されていることが多いですが、深夜や休日にビルが閉館してしまうと一般人は使えません。AEDの設置情報は、厚生労働大臣が設立認可した財団法人日本救急医療財団が集約しているものの、民間企業については任意の届けを要請しているだけで強制力はありません。

 前置きが長くなりましたが、今回はこういったAEDをもっと有効活用するためのiPhoneアプリやサービスの開発を進めている医療系のスタートアップであるCoaidoに話を聞いてきました。Coaidoは、各種ハッカソンイベントで優勝や最優秀賞を獲得した実績のあるスタートアップ企業。クラウドファンディングの「READYFOR?」で300万円の支援を受け、現在常勤2名、非常勤1名の3人でアプリとサービスを開発中です。

AED SOS
AED SOS
代表取締役CEOの玄正 慎氏
AED SOS
取締役CCOの小野哲生氏
AED SOS
技術顧問CTOの松澤太郎氏
AED SOS

 開発中のアプリ「AED SOS」では、実際に心停止の患者を発見した場合にアプリを起動すれば、GPSで現在地を捕捉して付近に設置されているAEDの場所を教えてくれます。さらに、そのAEDの近くに同じアプリをスマホにインストールしている人いれば、AEDのピックアップの要請や通話などが可能になります。医療関係者が近くにいれば、アプリ経由で呼び出しつつ、自分がいる場所も知らせられるわけです。

 さらにCoaidoでは、3月から京都大学構内で実証実験も予定しているとのこと。これは、大学構内に設置されたAEDの位置情報と地図データを「AED SOS」アプリに組み込み、構内で心停止者が出たという想定のもと、「AED SOS」アプリを利用することでAEDの設置場所確認からピックアップ、使用までの時間がどれだけ短縮されるかということを測定するもの。

 実証実験の結果は、京都大学から論文として発表される予定です。また、一般ユーザー向けの「AED SOS」アプリもiPhone/Android用が5月にリリースされる見込みです。

AED SOS

 7月には、「AED SOS」アプリと連携可能なSOS管理システム用端末を一部地域の消防指令センターに導入してもらい、消防署と一般ユーザーをつなげる実証実験を開催する予定。具体的には、アプリからの119番通報、通報を受けた消防署から最寄りのAED付近にいる人へのコンタクトなどを可能にするシステムになり、消防指令センターはこのシステムを利用できるiPadを導入するそうです。

 SOS管理システムがうまく機能すれば、消防署は救急車を向かわせつつ、現場に居合わせた人にAEDで応急処置を要請できるわけです。この実験は3カ月ほど続けられ、10月には成果を取りまとめる予定です。

 Coaidoでは、消防指令センターでの実証実験の成果をもとにほかの自治体へも導入の働きかけを行っていくとのこと。すでに一部の先進的な自治体では市内にあるコンビニ全店にAEDを設置しているほか、メーカーと自治体が手を結んで市内のAED機器のメンテナンス状況の管理に消防も協力するなど、新しい取り組みが始まっています。

 また、AEDの設置場所情報についても自治体がオープンデータとして市民や民間事業者が自由に使えるデータ形式で公開しているところも出始めています。自治体レベルでこういった動きが活発になれば「AED SOS」を使ったAEDの検索や使用も効率的になるでしょう。

■関連サイト
Coadio
AED SOS

週刊アスキー
Amazonで購入は表紙をクリック
週刊アスキー
Kindle版はこちらの表紙をクリック
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう