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端末が回収されるauの買い替えプログラムはおトクなのか(石野純也氏寄稿)

2015年01月21日 06時00分更新

 auが2月6日から開始する“アップグレードプログラム”とは、加入すると端末を買い替えやすくなる仕組み。スマホの購入は24回の分割払いが一般的だが、それが足かせとなり、2年間機種変更できないと捉えられがちだ。もちろん、縛りではなく残債を払えば機種変更は可能だが、24回払いが心理的な障壁になっていることは、端末購入のサイクルが2年超に伸びている各種データからもわかる。アップグレードプログラムは、こうした不満を解消するものだ。

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↑auの開始するアップデートプログラム。分割支払いの残金を支払う必要がなくなる。

 具体的には月額300円の料金がかかり、19ヵ月目から利用中の端末の残債が無料になる。つまり、18ヵ月同じ機種を使えば19ヵ月目に新たな機種に負担なく乗り換えられるということだ。逆に、端末の代金を24回きっちり払い切ってしまうと、月額300円がムダになると思われるかもしれないが、この場合は利用料が丸ごとau WALLETに返金される。20ヵ月以降で機種変したときは、19ヵ月目を超えたぶんだけ返金がある。

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↑料金は月300円。現状の対象機種は4機種で、発売済みのモデルはiPhone6、6 Plusのみが含まれる。
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↑機種変更の権利を行使しなかったときは、au WALLETへの返金を受けられる。

 ただし、条件として機種変更に伴い利用中の端末は回収される。毎月の支払額は変わらないものの、下取りを前提にしているという点では、自動車の世界で広がりつつある“残価設定ローン”にも発想が近い仕組みと言えるだろう。

 auがこのアップグレードプログラムを投入した理由は、「ずっとauを選んでいただきたいという思いがあるから」(KDDI代表取締役社長 田中孝司氏)だという。機種変更をお得に行なえることで、auへのロイヤリティー(忠誠心)を高め、他社への流出を抑止する効果を狙っているようだ。田中氏はこうした状況を踏まえ、アップグレードプログラムを「au大好きプログラム」と呼んでいる。

 解約抑止とともに、端末の販売数を上げる効果があるかもしれない。スマホへの以降がひと段落したこともあり、端末の販売数は鈍化傾向にある。また、auはドコモと比べると契約者当たりの端末販売数が少なめだ。

 例えば、すでにデータが出ている上期の端末販売台数を比べると、ドコモが1095万台なのに対してauは426万台。契約者数がドコモで6429万、auで3495万で、約1.8倍強の差しかないのにも関わらず、端末の販売台数は2.5倍以上の開きがある。さらに、契約者数の少ないソフトバンクモバイルよりも端末の販売台数は少ない。アップグレードプログラムは、こうした状況を改善するきっかけになるかもしれない。

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↑端末販売台数の面では、ドコモとソフトバンクの後塵を拝しているau。

 では“アップグレードプログラム”は、本当にユーザーがauを大好きになるような仕組みなのか。すでに価格が定まっているiPhone6の16GB版を例に検証してみよう。iPhone6の16GB版は、一括価格が7万2360円。毎月の支払いは3015円になる。仮にその時点で最新のiPhoneに乗り換えようと、19ヵ月の段階で機種変更すると、残債は2万1105円だ。機種変更時には“毎月割”もなくなるため、この額がユーザーの支払い額として残る。

 ここで“アップグレードプログラム”を使うと、18回ぶんの料金は300円×18回×消費税8%で5832円。これで2万1105円がチャラになる。つまり、差額の1万5273円がおトクになるというわけだ。一方で、計算式に含まれないものに端末本体がある。端末をauに差し出す代わりに、1万5273円が無料になるという見方もできるだろう。

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 発売から約1年半経っていても、iPhoneならもう少し高く売れる可能性はある。状態によるため一概には言えないが、使っていた端末の売却をセットで考えると、必ずしもおトクにならないケースがある点には注意が必要だ。

 もっとも、端末によっては18ヵ月後だと、売却しても二束三文にしかならないケースは多々ある。また、使い込んでボロボロの状態だと、買い取り価格は大幅に安くなる。こうした点を勘案すると、“安心して”19ヵ月目以降で機種変更できるのが“アップグレードプログラム”と言えるかもしれない。将来いくらになるのかわからない端末の買い取り価格を、あてにしなくてもいいからだ。めんどうな手続きなしで、19ヵ月目から残債なしで機種変更できるとわかれば、心理的な負担も少なくなる。

 ちなみに、こうしたアップグレードプログラムは海外でも導入されている。特に米国では動きが活発で、auもこうした先行事例を研究したようだ。日本でアップグレードプログラムが一般的になるかは、ライバル次第の側面もある。ドコモやソフトバンクが導入して広がりを見せれば、端末は18ヵ月で機種変更するという習慣が根付くかもしれない。端末の販売台数減少に苦しむメーカーにとっても悪い話ではないだろう。

(1月21日19:45編集部追記)アップグレードプログラムは旧機種が故障、水濡れ、破損がなく正常に動作することが回収の条件となります。

●関連サイト
au(アップグレードプログラム)

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