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特定層向け端末を投入するau春モデルの狙い(石野純也氏寄稿)

2015年01月19日 22時00分更新

 auの春モデルは、子ども向けあり、シニア向けありとターゲットが明確に絞られた端末が取りそろえられた。1年を通して最大の商戦期である春商戦に向けた端末であるにも関わらず、“王道”と言えるスマホは『AQUOS SERIE mini』ぐらいだ。その背景は明快で、スマホへの移行の速度が鈍化しているため。KDDI代表取締役社長の田中孝司氏も「我々のスマホ所持率は52%。残りの人にピッタリ合ったスマホをつくらなければならないという思いがある」と、狙いを説明する。

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↑ターゲットを絞り込んだ端末をそろえた、auの春モデル。
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春モデル投入の狙いを解説するKDDIの田中孝司社長。

 田中氏によると、全体のスマホ所有率が52%なのに対し、高校生から40代までの社会人のスマホ所有率は74%。その平均を押し下げているのが、50代、60代のシニアと、小学校高学年や中学生などのジュニア層だ。前者に対しては、光る通話&メールキーや、大きなアイコンをユーザーインターフェースに採用した『BASIO(ベイシオ)』を投入。後者の層には、子どもが使うのにふさわしくない言葉を入力しようとすると警告が表示されるなどの機能が特徴となる、『miraie(ミライエ)』を用意した。

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↑シニアとジュニア、それぞれのスマホ所持率。平均を押し下げているのがこの層だとわかる。

 田中氏が「聖域なき商品開発を行なった」と語っているように、どちらも端末だけでなく、コンテンツや料金、サービスまでセットで提案されている点も特徴と言えるだろう。『BASIO』用には文字の大きなauスマートパスを用意したほか、55歳以上のユーザーには本来3000円の“auスマートサポート”も3月31日までキャンペーンで無料にする。また、55歳以上向けに月0.7GBのパケットプランを設定し、合計4280円と維持費用も抑えた格好だ。

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↑シニア向けに、通話、メールキーを採用した『BASIO』。
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↑専用の料金プランも用意した。

 miraieにも同様の施策を展開し、こちらは月0.5GBのパケットプランを用意。また、新たに始める端末のアップグレードプログラムもここに含め、子どもの成長に合わせて買い替えをしやすいような仕組みを整えた。

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↑子どもを見守る機能を充実させた『miraie』。
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↑こちらも、アップグレードプログラムつきの専用プランを用意。

 ターゲットを絞っているのは、金属ボディーを採用したデザインモデルの『INFOBAR A03』も同じ。約2年ぶりとなる『INFOBAR』だが、元々このシリーズはデザインに関心のある層という、ユーザー像が明快なモデルだ。『A02』からちょうど2年経っており、買い替えを促す狙いもあるだろう。

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↑『INFOBAR』は、VoLTEに対応して生まれ変わった。

 ターゲットを絞り込んだスマホを用意し、フィーチャーフォンからの乗り換えを促進する一方で、フィーチャーフォンそのものもスマホ的に進化させた。その象徴的なモデルが、プラットフォームにAndroidを採用した『AQUOS K』だ。Androidを採用しているとはいえ、一見しただけではフィーチャーフォンと区別がつかないUIを採用。タッチパネルは非搭載で、ほぼすべての操作はキーで行なう。

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↑Androidを採用し、フィーチャーフォンを進化させた『AQUOS K』。
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↑メニューなどには、Androidの面影を感じさせない。

 関係者によると、Androidを採用したメリットは高機能化しやすいところにあるという。ここ最近のフィーチャーフォンは従来の焼き直しが多く、通信などの機能の進化は止まっていた。メーカーのリソースもスマホに集中しており、フィーチャーフォンのプラットフォームを、LTEなり、最新のカメラなりに対応させるのは難しかったというわけだ。

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↑LTEやテザリングなど、Androidを採用することで高機能化が容易になった。

 逆に言えば、Androidを採用し、チップセットもスマホのものを流用することで、これが可能になった。テザリングにも対応しており、auではタブレットとセットで利用するシーンを訴求していく。データ定額が1000円割引になる“AQUOS Kスタート割”も用意したが、狙いどおりにユーザーの利用量が上がれば、フィーチャーフォン以上に稼げる1台になるというわけだ。

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↑専用割引はあるが、テザリングなどで大量のパケットを使えばauにとってもプラスになる。

 また、現状ではVoLTEが利用できず、通話には3Gを使用するが、ゆくゆくはVoLTE対応モデルを出すことも視野に入れているという。2020年に向け、KDDIはLTEに通信を一本化することを目論んでおり、そのためには一定数残るであろうフィーチャーフォンもいつかは3Gを捨てなければならない。そのための第一歩となるのが『AQUOS K』と言えるだろう。

 もちろん、現時点ではまだ様子見な部分もある。田中氏は「今後どうしていくのかは、はっきり決めていないのが本音」と明かしつつ、次のように語る。

「それぞれ違うお客様がいる。ガラホ(AQUOS K)でもいいとなれば、大きくシフトしていくこともあるが、現状は『GRATINA2』も出していて、どっちにするかの最終判断はしていない。色々なお客様の声を聞きながら考えていきたい」

 OSについても、Androidに一本化していくというより、状況を見ながら徐々に検討を進めていく方針だ。

「(フィーチャーフォンのプラットフォームとして)Firefox OSを使わないと決めたわけではない。海外ではフィーチャーフォンのOSにForefox OSを使おうとしているところもある。新しいことをまず提案してみて、お客様が『これがいい』と言ってくださったらそちらに舵を切っていきたい」

『AQUOS K』に触れるとわかるが、操作性はフィーチャーフォンそのもの。ブラウザーを起動してサイトを閲覧したり、設定の深くからOS名を呼び出したりしなければ、Androidだと気づかないレベルにまでつくりこまれている。

 EZwebに非対応などコンテンツ面での問題は残るが、そこは“auスマートパス”でカバーしていくというのがauの方針だ。年間数百万台規模でフィーチャーフォン市場が残っていることを考えると、思わぬヒット端末に成長する可能性もあり、今後に注目の1台と言えるだろう。

●関連サイト
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