2015年1月19日、KDDIが春商戦モデル発表会を行なった。INFOBARの最新モデルやガラケーっぽいAndroidスマホ“ガラホ”やシニア向け、ジュニア向けなど全6機種が発表となった。メーカー別に見ると、シャープが2モデル、京セラが4モデルという、まさに“春のパンまつり”ならぬ“春の京セラまつり”となっていた。
■グローバルシェアの高い京セラ
今回、KDDI向け新製品で京セラが目立つ背景にあるのが、京セラはグローバルでシェアの高いメーカーであり、キャリアに対して安価に商品を提案できる力があるようだ。実際、ジュニア向けスマホ『miraie』は海外モデルをベースに開発されており、またシニア向けスマホ『BASIO』はKDDI向けアルバーノがベースとされている。
京セラは日本では地味なメーカーであるが、米国では低価格のラインアップで売れており、こうしたモデルをベースにして国内モデルを開発することで、安価な製品を実現しているという。また、京セラは国内生産も多く、昨今の円安傾向により「海外で製造して、日本に持ってくるよりも有利になっている」という。為替面でのアドバンテージもあるのだ。
さらにキャリア関係者によれば「京セラはコスト意識がとにかく高い。またCMなどもあまりやっていないため、宣伝費もかかっていない。結果、良い製品を安くつくれているのではないか」という。
新製品である『INFOBAR A03』を触ってみると、とにかく質感が高い。KDDI関係者は「あの質感を出すのには日本メーカーではないと不可能。海外メーカーではまず実現できないレベル」と語る。INFOBARを好むようなスマホ好きを振り向かせるにも、日本メーカーの品質というのが効いてくるようだ。
■今後、重要になる日本メーカー
実は京セラやシャープと言った日本メーカーを中心としたラインアップは、今後のスマホ市場を占う上で重要だったりする。今回、KDDIでは、ジュニアやシニア向けなど、特定のユーザー層を狙い撃ちしたモデルを投入してきた。すでにこのあたりのターゲットを絞り込んだスマホはドコモやソフトバンクモバイルも取り扱っている。
ソフトバンクでは、ジュニアもシニアもシャープが開発し、ドコモはシニアが富士通、ジュニアはシャープといった具合だ。スマホを使い慣れた層であれば、アップルのiPhoneやソニーのXperia、サムスンのGALAXYといったグローバルで流通する、メジャーブランドのスマホで満足していることだろう。
しかし、スマホの普及率がようやく50%を超えたところであり、ジュニアやシニア層にはまたスマホを使っていない人が多い。そうしたユーザー層からすると、iPhoneやXperia、GALAXYといったハイエンドスマホは「使いこなせそうにない」という先入観がある。キャリアとしても、そうした「これからスマホデビューする人たち」の気持ちをとらえるには、メジャーブランドではなく、ターゲットを絞り込んだスマホのほうがやりやすいのだ。
日本のメーカーとしても、ブランド力はもはやアップルには勝てっこない。フラッグシップモデルでiPhoneと戦うよりも、こうしたニッチなユーザー向けで勝負した方が手堅く稼げるというわけだ。キャリアとすれば、いまやiPhoneやXperiaは3キャリアで同じモデルが扱われ、GALAXYであっても、それに近い状況になろうとしている。
もはやグローバルモデルはどのキャリアでも売られており、ユーザーを新たに獲得できるキラー端末にはなり得ないのだ。今後、キャリアが新たな客層を開拓し、さらにユーザーを囲い込むには、日本メーカーに、ターゲットごとに合わせたニッチな製品をつくってもらう必要があるのだ。
その時、京セラやシャープといったグローバルに通用するブランド名のある製品はないながらも、小回りが効き、日本人が使いたいと思えるスマホを開発できるメーカーが不可欠なのだ。キャリアとすれば、グローバルブランドは重要だが、それはもはや「ラインナップとしてあって当たり前」になりつつある。今後はいかに「うちのキャリアにしかない商品」を日本メーカーにつくってもらうかがカギとなる。
その点、KDDIには京セラ、ソフトバンクにはシャープが存在する。ドコモには本来であれば、パナソニックやNECモバイルがその位置に来てもおかしくなかったが、かつての“ツートップ戦略”でグローバルメーカーに肩入れし、さらにiPhoneを導入したことで、日本メーカー2社が撤退してしまった。ドコモにとって、富士通もしくはシャープに個性的な端末をつくってもらえるかが、今後は重要になってきそうだ。
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