設置場所付近で鳴った音を解析し、サーバーを介して遠隔地に通知できるクラウド型リスニング・デバイス『Listnr』(リスナー)の開発が発表された。米国のキックスターターでクラウドファンディングを開始している。
Listnrはインターネット接続機能とマイクを搭載した小型デバイス。音声による家電の制御や、音声認識による見守りといったホームオートメーションとの相性の良さが期待できる。
■乳児の泣き声から感情を認識することも可能
Listnrで録音された音声は、クラウド上に存在するサーバーへ自動でアップロードされ、サーバー側の音声認識エンジンで音声解析される。特定の音声を認識した場合に本体のLEDが光って通知するほか、スマートフォンのアプリへインターネット経由で通知を送信したり、スマート家電の操作を自動的に行なったりできるという。
開発当初に提供する機能としては、乳児の泣き声から「泣く」「笑う」「叫ぶ」「喃語(乳児が発する意味のない声)」といった4パターンの感情を認識し、スマートフォンアプリ上のアイコンで乳児の感情を通知する機能や、スマートフォンからコントロールできる照明システム「Philips hue」をフィンガースナップ音(指を鳴らす音)で操作できる機能があるという。
またAPIを公開し、Listnr対応サービスやアプリを自由に開発できる環境を用意。APIは録音した音声ファイルを指定したサーバー(開発者が独自で実装するサーバー)にアップロードできるほか、音声認識サーバの解析結果をAPI経由で自在に利用することも可能だ。
量産化にむけた市場調査、PRならびに量産モデル開発資金調達を目的に、米国キックスターターにて1月6日よりクラウドファンディングを開始、また同日より開催中の「2015 International CES」にもListnrは出展している。
製品の特徴である音を聞く技術は、パナソニック研究開発部門の音声認識エンジンによるものだ。意味をもたない乳児の泣き声から「泣く」「笑う」「叫ぶ」「喃語(乳児が発する意味のない声)」といった4パターンの感情を認識できる。
Cerevo広報の甲斐祐樹氏はその特徴について、「単に音声を認識するだけではなく、音声の中から「感情」を判断します。乳児の声から感情を判断して通知するという機能も本エンジンによるものです」と答える。
↑リリースによれば、Listnrは「聞く人」という意味の「Listener」という単語を元にした造語で、音を発生するスピーカーとは逆に、音を聞くことに特化したデバイスという製品コンセプト。「人間の耳を拡張することで、もっといろいろなものとコミュニケーションしていきたい」という想いが込められているという。
■DMM.make AKIBAへの訪問がきっかけで実現
Listnrの「音を使ったコミュニケーションデバイス」というコンセプトは、ボタニカルデザイナーの江原理恵氏のアイディアから生まれた。製品の実現に向けてハードウェア・スタートアップ開発・検証施設「DMM.make AKIBA」に相談し、DMM.make AKIBAに入居するCerevoとABBALabが江原氏と打ち合わせの場を持ったことから、プロジェクトがスタートしたという。
一方で、パナソニックの研究開発部門で製品化を検討していた音声認識エンジンがあり、ベンチャーならではの開発スピードに優れるCerevoと共同で、2014年夏頃からプロトタイプの開発に着手。このプロトタイプが江原氏のアイディアと親和性が高いと判断され、共同での製品開発につながった。
日本の大手電機メーカーに眠っていた高いコア技術は、「音を使ったコミュニケーションデバイス」というコンセプトと出会ったこと、さらに「DMM.make AKIBA」のサポートもあり、一気に製品化に向けて動きだした。
ABBALabは製品アイディアを受け、「ABBALab Scholarship」に採択。プロトタイピングに必要な予算を設定し、製品開発のための業務や権利に関する契約をプロジェクト実施者と取り交わす「Budget Type」を江原氏と契約し、Listnrの本格的な開発が始まったという。
デザイン面ではCerevoのスマート電源タップ「OTTO」を手がけたデザイナーの柳澤郷司氏がプロジェクトに参加、さらにListnr開発チームとしてCerevoのメンバーも参画し、Cerevoの中山浩一氏が代表となる形で、Listnrを開発・生産するハードウェア・スタートアップ「株式会社Interphenom(インターフェノム)」が設立決定となった。Interphenomには、ABBALabから「Invest Type」の追加支援も決定し、1月末に設立が完了次第、ABBALabからの出資を受ける予定だという。
2014年11月に「DMM.make AKIBA」はオープンしたばかりだが、早くもCerevoとパナソニックによるプロトタイプがアイデアと結びついて動き始めた。大企業とベンチャーによるオープンイノベーションの取り組みならではのスピード感が実現している一例といえるだろう。今後もこのような取り組みは加速を見せるだろう。
Listnrは、支援が50,000ドルに達成した時点で開発が決定し、2015年9月には支援者に向けて製品を発送する予定となっている。
↑キックスターターで公開されている動画より。実際のサイズ感や、制作工程も垣間見える。
写真提供:Cerevo
●『Listnr』(リスナー)仕様
無線LAN: IEEE 802.11b/g/n(2.4GHz)
対応OS: iOS 8以降(Androidアプリは支援総額が75,000ドルを達成した時点で開発。対応バージョンはAndroid 4.4以降)
専用ACアダプターによる給電(USB給電可)
本体サイズ: 高さ68mm、幅 112mm、奥行き 68mm
重量: 未定(100g前後を予定)
■関連サイト
Listnr(Kickstarter)
Interphenom
Cerevo
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