前編の機構設計やカラバリに引き続き、Xperia Z3の秘密に迫る開発者インタビュー。後編はISO12800まで対応のカメラ、USB DACなしでのハイレゾに対応したオーディオ機能、そして歴代モデルから着々と改善されている省エネ設計にフォーカスを当ててお送りします。
——カメラモジュールから自社で開発している、ソニーならではでしょうか。
新井氏 そうですね。
入山氏 カメラモジュールに関しては、前機種のXperia Z2と比べて0.7ミリ薄くなっています。
鈴木氏 全体で約1ミリ薄くなっているので、その中の0.7ミリはかなりの割合だとおわかりいただけると思います。
↑写真左がXperia Z3に搭載されたカメラモジュール。右がXperia Z2のもの。 |
入山氏 カメラが目指しているのは、Z1のころと変わっていません。レンズ、センサーから信号処理まで、すべて内製していることを最大限活用しました。Z3についてはレンズを薄くして、外から見えないセンサー部分も極限まで削っています。
信号処理部分の進化としては、ISO感度12800での静止画撮影と、動画撮影時のインテリジェントアクティブモードがあります。暗い場所ではフラッシュをたいて撮ることもできますが、人物だけが浮かび上がって後ろが暗くなってしまい、その場の雰囲気がわかりません。高度感度撮影ができることで、その表現の幅が広がります。
ソニーのデジタルイメージングで開発している最新のサイバーショットとほぼ同等の信号処理で、HXシリーズと同じ最高感度を実現しています。縮小してノイズを減らし、さらに複数枚の写真を重ねてノイズを減らす。超解像技術で解像劣化を減らし、画質を保ちつつノイズを抑えています。
もちろん、ISO12800には非常に暗いところでのみ有効になります。多くのユーザーが体験できる感度ではありませんが、“極限でも撮れる”ということは、“その手前ならもっと余裕を持て撮影できる”ことにもつながります。他社のカメラだと最高感度に張り付いてしまうようなシチュエーションでも、ISO3200ぐらいで余裕を持って撮影できるため、ノイズは少なくなります。日常的にはメリットとしては、こちらの方が大きいですね。
インテリジェントアクティブモードは、人を追いかけながら動画撮影してもピタッと止まるような、非常に強力な手ブレ補正です。実現している背景の技術をお話すると、撮影した画像をすぐに保存するのではなく、いったんバッファリングして、過去のフレーム、未来のフレームの両方を見て、最適な位置を切り出しています。カメラを動かしながら撮っても、それがブレなのか、動かしたい方向に動かしているだけなのかまで解析します。
——手ブレと意図的な動きを見わけるということですか。
入山氏 現在の揺れだけを見ていると難しいのですが、数十フレーム見るとことで、それを特定できます。これもラフティングの振動ぐらいまでを止められますが、もちろん皆さんがラフティングをしながら撮影するとは思っていません。ISO12800と同じ理屈で、ここまでのブレを抑えられるなら、日常の範囲で余裕を持って撮影できるということです。
↑カメラエンジニアの入山慎吾氏。 |
——Xperia Z3は、単体でのハイレゾ対応も売りになっています。次にオーディオ周りのお話をお聞かせください。
池田氏 オーディオ周りの3大フィーチャーとして、ハイレゾオーディオがより手軽に楽しめるようになったこと、デジタルノイズキャンセリング対応で高音質を損なわずに楽しめること、内蔵スピーカーの音質がいいことがあります。
まずハイレゾに関しては、今までDACと呼ばれる変換機器が必要だったものを、直接アナログで出力できるようにしました。ソフト、ハードの両面を改善することで実現していますが、特にこだわったのがハードです。携帯電話はウォークマンなどと違い、音楽再生専用の機器ではありません。電波を使うデバイスのため、ノイズが発生するなど制約も多くなります。その基準をクリアしつつ、オーディオ的に有利な部品を選んで搭載する。ここに難しさがありました。
もうひとつの特徴としては、DSEE HXに対応していることです。これは元々、ウォークマンの最上位機種にしか載っていなかったものです。MP3やストリーミングの圧縮された音源を、96KHz相当に引き上げることができる仕組みで、オンにするだけで圧縮で失われた音を復元できます。ハイレゾ音源を持っていない方でも、お気に入りの曲を買い直す必要がなくなり、気軽に高音質を楽しめるようになったのではないでしょうか。
↑圧縮音源もハイレゾ音源並みにアップスケーリングとする“DSEE HX”。 |
また、どこでも音を楽しむという観点で、Z2に続いてデジタルノイズキャンセリングに対応しています。これは耳元で集音して、逆位相の音をぶつけてノイズを打ち消す仕組みです。ヘッドホンには電池もプロセッサーも搭載しておらず、処理は本体で行ないます。ですから、イヤホン部分は軽量になります。電車・バス、室内、航空機の中と、それぞれに最適な打ち消し方を選べるのも、デジタルノイズキャンセリングの強みです。
フロントスピーカーは、スリムな外観を保ちつつ、より大きく、いい音が出るようになっています。大きな音やいい音を再生するためには、振動板の面積が必要になり、幅や厚みも重要になります。コンパクトな筐体だとそこに制約は出てきますが、それでも大きなスピーカーをふたつ搭載することができました。Z2と違い、フロント部分に音を通す穴が開いているため、音響的にも有利です。特に高い周波数の音はチューニングで補正しないと減衰してしまいがちですが、ほぼ正面に穴が開いていることで、素直な音が出るようになりました。
音という観点では、もうひとつ、ステレオレコーディングにもこだわっています。ボイスレコーダーやビデオ録画の音質も、大幅に改善しています。ソニーではICレコーダーやビデオカメラもつくっているのでそのノウハウも取り入れています。
↑オーディオエンジニアの池田有基氏。 |
——ただ、ノイズキャンセリングはその仕組みのために、イヤホンの選択肢が少ないのが残念です。ハイレゾにも対応してないですよね。
池田氏 確かに、(発売中のノイズキャンセリングに対応しているイヤホンでは)いわゆるハイレゾと呼ばれる、20KHz以上の帯域の音を出すことはできません。とは言え、電気回路の部分はかなり改善しているため、少なくともZ2と比べた際の差分はあります。帯域は出ないが、品質はよくなっているということですね。
——WiFi版Xperia Z2 Tabletはアップデートでハイレゾを扱えるようになりました。そことの違いは、どこにあるのでしょう。
池田氏 ソフトとハード、両面を改善していることです。ソフトウェアアップデートではハードの部分までは変えられません。確かにアップデートでハイレゾフォーマットを扱えるようにはなりましたが、音の通り道が(Z2 TabletとZ3シリーズでは)そもそも違います。
——ちなみに、Xperia Z3は発表時に、省電力であることもアピールされていました。ここには、どういった工夫があるのでしょうか。
篠藤氏 薄型化したことで、バッテリー容量自体は100mAh減少しています。その中で、いかに電池の持ちをよくするかということに注力しました。過去の機種より駆動時間は伸ばしたい。ただ、何か飛び道具があるというわけではなく、地道な努力の積み重ねがあり、その上で解析したデータを活用しています。自分を知り、お客様を知り、その上で省電力化したということですね。
大きなところでは、まず、メモリー付きのディスプレーを採用したことがあります。静止画については描画を毎回する必要がなくなり、効果が高い技術です。その上で、蓄積したデータを元に、メモリーつきディスプレーの特性を生かすチューニングをしています。
ふたつ目の工夫は、CPUのコントロールをより細かくしたことです。ユーザーからすれば必要十分な性能が出ればいいので、作業に適したクロック周波数になるよう、アルゴリズムを再設計しています。
3つ目は少し飛び道具的ではありますが、ユーザーが何を使うのかを分析し、そこを最適化しました。調査だとユーザーが1番使うのはブラウザーです。過去に蓄積したデータを照らし合わせ、どのように見せて、どのように動かせば、使い勝手が変わらず、消費電力が下げられるのかを研究しました。標準ブラウザーはオープンソースのため、ここに手を入れ、電池の持ちがよくなるようにしています。
↑“省エネ”カスタマイズが加わっているのは、標準のブラウザーのみ。 |
——今回のディスプレイは『Xperia Z1 f SO-02F』などと同じ、メモリー搭載型だったんですね。ちなみに、そのディスプレイですが、他社ではWQHDのものも出ています。フルHDにしたのは、省電力を考えてあえてそうしているのでしょうか。
内田氏 まさにバッテリーの持ちや、操作感を重視しています。むやみにあげることで、使い勝手を損なっては意味がないですから。コンテンツもフルHDまでは充実していますが、WQHDのものはまだまだ少ない。そういった環境も踏まえて決定しています。
↑今回インタビューに協力してくださったソニーモバイルのXperia Z3開発陣のみなさん。 |
──ありがとうございました。
●関連サイト
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