グーグルのWebメールサービスGメールは無料で15GB、企業などでGoogle Appsというサービスを使っている場合は30GBのストレージが使えることになっています。でも、実際には1人15GBの容量なんて確保してないらしいのです。
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Webメールが提供されだした当時、ユーザー1人当たりの容量は数MBから数百MBが普通でした。当時はハードディスクがまだ高価で、Webメールがどんな風に使われるのかよく分からなかったからです。
でも、実際にWebメールを提供した企業は、“90%のユーザーは与えられた容量の10%しか使わない”ということに気付いてしまったのです。
そうすると、事情は変わってきます。100万人のユーザーに15GBの容量を提供しようとすると、15ペタバイトも必要ですが、実際には90%の人は1.5GBしか使いません。残りの10%が15GB使い切るとしても、全体で必要な容量は、
90万人×1.5GB+10万人×15GB=2.85ペタバイト
となり、19%分で済むのです。
現在8TBのハードディスクは3万円で入手できますが、8TBのハードディスクで15ペタバイトの容量を確保するには、
15000÷8=1875台
のハードディスク、価格にすると約5625万円もかかってしまいます。ところが実際には2.85ペタバイトしかいらないわけですから、
2850÷8≒357台
となり、価格は約1069万円で済んでしまいます。1518台も節約できるわけです。実際には1つのデータを3台程度のハードディスクに重複して記録しているはずなので、3倍の約3200万円かかりますが、15ペタバイト分を本当に確保するには1億6875万円もかかります。グーグルのような巨大企業にとって、100万人相手のサービスに3200万円かけるのは訳もないことでしょう。
こういうクラウドサービスの節約術を銀行に例えているのがソフトウェア開発者のアブドラ・レガリさん。質問サイトQuaraで、「銀行が紙幣として保有しているのは預金残高の9%」と回答しました。日本の都市銀行は預金額の数%しか「お札」としては保有していませんが、そうなると心配なのは“大勢の人がGメールを急に使い出したらどうなるか?”です。
Forex Money for Exchange in Currency Bank / epSos.de |
銀行は預かったお金を企業に貸し出したり、国債を買ったりして運用しています。突然預金者が多くのお金を引き出そうとしても「お金」としては持っていませんので、破綻(取り付け)してしまいます。Gメールでも同じことは起きないのでしょうか?
Gメールでも大勢の人が急に使えば、なにしろ19%分しか確保してないのですから、容量が足りなくなって破綻してしまいそうです。
でも、大丈夫。Gメールに大勢の人がメールを送っても、ペタバイト級のデータを一気に保存させるのは無理なのです。サーバー間は毎秒1Gビットのネットワークで接続されていると考えられるので、15ペタバイトのサイズを送りつけるには、
15ペタバイト×8ビット÷1Gビット÷60秒÷60分÷24時間≒1389日
となり、約4年もかかる計算です。4年もあれば、ハードディスクを1518台×3=4554台買ってきて取り付けるのに十分そうです。銀行に似ているけど、銀行の入り口がとても狭いので、取り付けは起きない、という訳です。クラウドってとてもよく考えられた仕組みですね。
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