みなさん、こんばんは。いまは週刊アスキーの吉田でございます。さて、12月8日にApple Store銀座で「Inspire to Code」というイベントが開催されました。Appleは、ワールドワイドで、コンピューターサイエンス教育を推進するCode.orgが提唱している「Hour of Code」というコンピューターサイエンス教育週間(12月8日〜14日)に賛同していますが、Inspire to Codeはその一環ともいえるもので、これらかアプリを開発しようと考えているユーザーにとって非常に興味深い内容でした。
登壇したのは、Flaskというアプリ開発会社の女性お二人。小川秀子氏がプログラミング、堀内敬子氏がUIデザインを担当しています。
同社のアプリとして一躍有名になったのは「FitPort」。iOS8、正確にはiOS8.0.2で利用可能になったHealthKitを利用したアプリです。HealthKitを利用したアプリとして、各国のニュースメディアで取り上げられました。
「FitPort」では、歩数やランニング、ウォーキングなどのデータをHealthKitから取得できます。 |
取得したデータは図のようにシンプルなインタフェースで表示されます。 |
Fitportでの週表示画面。下部ににグラフが表示されます。 |
Inspire to Codeでは、このFitPortの開発話を中心に進められました。小川氏によると、「もちろん、いちばん乗りを目指して開発していた」とのこと。
iOSのアプリ市場は、初期はとりあえず日本語対応のものを出せばヒット、そしてカメラアプリを出せばヒット、カードゲームを出せばヒットなど、真っ先にアプリをリリースしたものが勝利する、先駆者利益がハンパない市場です。
iOS8で解禁になった他社製キーボードアプリでも、英語キーボードの「SwiftKey」が公開後24時間で100万本のダウンロードを記録するなど人気を博しました。
少し前では、iOS6でGoogleマップから純正に切り替わった「マップ」アプリの精度がかなり低く、Googleマップをベースにした代替アプリのダウンロード数が伸びたこともありましたね。
iOS8で搭載されたHealthKitは、各種センサーやデバイスが記録したデータを一元管理できるもので、FitPortはこのHealthKitが管理するデータと連携して動作するものです。新しい技術を追いかけるのは大変で、しかも伝統的に突然の仕様改変やSDKのバグが多いAppleに付いていくのは相当な忍耐力と精神力が必要です。
FitPortが管理できるデータは個別設定が可能。「ヘルスケア」アプリにデータを書き込むこともできます。 |
FitPortでは、HealthKit(「ヘルスケア」アプリ)で管理できる、歩数や移動距離、登った階数、自転車の走行、消費カロリー、摂取カロリー、体重などを管理できます。 |
しかし、FitPortは見事にHealthKitの解禁日にアプリをリリースすることに成功し、国内メディアはもちろん、海外メディアでも大々的に取り上げられました。小川氏はApple関連の最新の情報や噂をいち早く公開する人気のニュースサイト「9 to 5 Mac」に掲載された記事をスライドに表示して説明していました。
「9 to 5 Mac」の該当記事。iOS8.0.2でのHealthKit対応を知らせる記事中で「FitPort」が紹介されています。 |
FitPortの開発話で最も興味を引いたのはその開発手法です。このアプリは「Storyboard」と呼ばれるGUIツールをフル活用したそうです。Storyboardの利用により、従来は6対4の比率だったプログラミングとUIデザインの作業量が逆転したそうです。
UIデザインを手がけた堀内氏は、小川氏がベースを設計したStoryboardのUIパーツを駆使して、さまざまなインターフェースデザインを生み出していったとのこと。
Storyboardは、ボタンをタップした次の画面、画面をフリックした場合の次の画面などを、操作画面で視覚的に把握できるのが特徴です。UIデザイナー自らが、デザインだけでなく画面遷移やボタンの機能などを決められるため、作業効率が格段にアップしたそうです。
堀内氏によると、「Storyboardを利用したことで、さまざまなプロトタイプを次々と作成できた」とのこと。実際にイベントでは、試作段階のインターフェースデザインが数多く紹介されました。しかも、本採用となったのはスライドでは右端に表示されていた背景が黒のデザイン。堀内氏によると、「黒背景のアプリは人気が出ない傾向があるのは知っていたが、アプリ申請登録の段階になって思い切って黒に変更した」とのこと。ソースコードを改変せずに、短時間でUIを切り替えられるのもStoryboardの魅力ですね。
ちなみに両氏はイベントの最後の質疑応答で、「フリーランスではなく法人化した狙いは?」という観覧者からの問いに対して、「フリーランスでやった場合、アプリの開発者名(販売元)はどちらの一方の個人名になってしまう。FitPortは二人で開発したアプリなので、法人化したFlaskという名で登録したかったのもひとつの理由」と答えていました。
iOSアプリは、膨大な数が毎日のように配信されており、大手もしくは宣伝費を大量につぎ込まない限りランキング入りは難しいといわれています。しかも、ゲーム以外のタイトルのランキング入りはさらに狭き門。
しかし、FitPortのようにAppleが提供する新しい技術をいち早く採用することで、一躍スターダムにのし上がることも可能です。堀内氏も、アプリ開発に必要なのは「チャレンジ」「タイミング」「UIのこだわり」の3点を挙げていました。
2015年2月ごろにはApple初のウェアラブル端末であるApple Watchが登場します。そして、開発キットであるWatchKitがすでに配布されています。次のチャンスは、このApple Watchと連携、もしくはApple Watchで動作するアプリかもしれませんよ。
『FitPort ヘルス&フィットネスダッシュボード』
バージョン:1.2
App Store価格:200円
(バージョンと価格は記事掲載時のものです)
(c) Flask LLP
■関連サイト
Flask
Apple(Hour of Code特設サイト)
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