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会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』

2014年12月08日 17時00分更新

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』

 11月8~9日の2日間にわたり、福島県会津若松市にある会津大学で、高校生がパソコンを使った情報処理能力や表現力を競う『第12回全国高等学校パソコンコンクール(以下、パソコン甲子園2014)』の、決勝大会が開催された。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑会場となった会津大学。IT分野の専門大学として1993年に設立された。また、世界を見据えた教育・環境づくりをしており、外国籍の教員が多い点も特徴。

 パソコン甲子園2014とは、高校生または高等専門学校生(3年まで)が、情報処理に関する技術力や創造力、表現力などを競う大会。プログラミング部門、モバイル部門、いちまいのCG部門の3部門で競われる。電脳高校生が火花を散らした大会を部門別にレポートしていこう!

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑プログラミング部門とモバイル部門の予選を勝ち抜いてきた全国各地の生徒が集結。2日間にわたり、知識や技術などを競い合う。


■スピードと正確性が求められるプログラミング部門

 初日に開催されたプログラミング部門は、パソコン甲子園のメインとなる種目。全国42都道府県から622チーム、1244名が予選に参加。9月に実施された予選を勝ち抜いた24チームが、本選に出場した。

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↑いよいよ本大会が開始。会場内では、最小限のアナウンスしかなく、静まり返っているが、集中して課題に取り組む生徒たちの熱気が伝わってくる。

 競技内容は、制限時間内に課題に沿ったプログラミングを作り上げることで、難易度の異なる10問の課題を、4時間以内にいくつクリアできるかを競う。出題された問題は、最も難しい問題が15点、簡単な問題は6点と難易度により得られる得点が変わる。また、問題を解く順番は決められておらず、簡単な問題を確実に片付けるか、いきなり難しい問題にチャレンジするかで、勝敗の行方を大きく左右する。

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↑プログラミング部門で出題された課題の第1問目。オーディオルームに招いた友人に、もっとも良い音で楽曲を聴かせるため音質を計測をしたい。友人たちの位置に合わせて、計測ポイントの番号を求めるプログラムを作成するといったもの。これでも、一番簡単な問題に分類される。

 1チームは2人で構成され、作業を分担しながらプログラムを作成する。作業をどのように分担するかは、チームにまかせられており、2人で相談しながら課題に取り組むか、明確に役割を分担してそれぞれの作業をこなすか、チームによってさまざまだ。

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↑競技中、暫定1位のチームには、顔が描かれた、金色のひと際大きな風船が付けられる。風船は終了の30分前まで反映される。

 4時間に及ぶ激戦を制したのは、東京都から出場した筑波大学付属駒場高等学校のチーム『-273.15℃』。同校のチームは、昨年開催された第11回大会でも、準グランプリを受賞しており、今年は昨年の雪辱を果たした結果となった。準グランプリは開成高等学校のチーム『Is』、3位は灘高等学校のチーム『三上』が受賞。いずれも、パソコン甲子園の常連でグランプリ経験のある学校。強豪校が順当に実力を発揮した大会となった。
 また、正解だけではなく、プログラムコードの“美しさ”も評価される審査員特別賞は、和歌山県立紀北工業高等学校のチーム『VitaminO』が贈られた。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑激戦を制してグランプリを勝ち取った筑波大学付属駒場高等学校『-273.15℃』の2人。3年生と1年生のコンビを組んだチームで、昨年の雪辱を果たした。


■作品をつくりあげる総合力が求められるモバイル部門

 大会2日目に開催されたのは、注目が集まるモバイル部門。Android搭載のスマホ向けアプリを制作し、プレゼンテーションを披露する競技で、プレゼンの内容はもちろん、作品の企画力やプログラムの技術力も求められる。今年は14都道府県から35チーム98名が予選に参加し、企画書の審査を通過した8チームが本選に臨んだ。

 本選は5分間のプレゼンセッションと実際に作品を披露するデモンストレーションセッションで競われる。審査項目は、技術力・デザイン・イノベーション・プレゼンの4項目で、総合的に評価の高い作品がグランプリとなる。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑モバイル部門は、今年も研究棟の一角につくられた特設ステージで開催。8つのチームが、プレゼンバトルを展開した。

 今回のテーマは“チャレンジ!! ~苦手を得意にするアプリ~”となっており、楽譜読みと音感のトレーニングができるアプリや泳いだ距離や速度を計測して練習メニューを提示するアプリなど、いずれ劣らぬ個性的な作品のプレゼンが繰り広げされた。

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↑参加したチームは特設ステージで作品のプレゼンを実施する。プレゼン資料を正面のスクリーンに投影し、左側の画面にスマホの挙動を映し出すなど、各チームとも工夫をしていた。
会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑プレゼン終了後は、審査員から作品に対する質問が飛ぶ。問いかけられた質問に対して、緊張の表情を浮かべながらも、熱心に解説していたのが印象的。

 また、今大会で印象的だったのは、スマホ以外のデバイスを連携させた作品が多かったこと。足首に取り付けた加速度センサーと連動して逆上がりのコツを掴めるアプリや枕に仕込んだバイブレーターと連動して二度寝を防止するアプリなど、より高度な技術を盛り込んだ作品も提案されていた。

 見事、グランプリに輝いたのは沖縄県から参加した沖縄工業高等専門学校のチーム『きゃらめるぷいでぃんぐ』。複数の料理を最適な手順で手際よくつくるための支援アプリ『テキパキッチン』が受賞した。また、沖縄工業高等専門学校は、チーム『ホワイトハッカーズ』の逆上がり支援アプリ『Qoolqle』がベストアイデア賞も獲得し、2冠を達成。実力の高さを見せつけた結果となった。残るベストデザイン賞は地域の高台を記録して防災に役立てる津波対策アプリ『たかサーチ』をつくった鳥羽商船高等専門学校のチーム『ぶるどっく』が受賞した。

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↑沖縄工業高等専門学校『きゃらめるぷいでぃんぐ』の3人。審査員から、アイデアが高く評価され、グランプリを獲得した。


■“チャレンジ”をもっとも表現したCGを競う

 テーマをもとに描いたCGを競ういちまいの絵CG部門は、事前に審査が済まされており、入賞作品が2日間とおして展示されていた。今大会のテーマは、モバイル部門と同様の“チャレンジ”。独創性・インパクト・技術力・テーマを生かし切れているかの4項目に重点を置き、表現力と独創性が総合的に審査された。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑すでに審査が終了している、いちまいの絵CG部門は、プログラム部門が開催された講堂の入り口に、佳作の15作品も含め、入賞した全作品が展示。
会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑優秀賞3作品と3DCG賞の作品。自分の殻から飛び出し、いろいろなことに挑戦することをイメージして描かれた新野莉央さんの『羽化』をはじめ、いずれもインパクトのある印象的な作品だった。

 今大会では、668作品の応募があり、その中から優秀賞に選ばれたのは、福島県立福島西高等学校の新野莉央さんの『羽化』、明石工業高等専門学校の芝崎優也さんの『ちっちゃい頃からでかい夢』、愛知工業大学名電高等学校の伊藤賢吾さんの『DEFAIANCE』の3作品。また、3DOC賞には沖縄県立那覇工業高等学校の安里このみさんの『月に魅せられた少年の夢』が受賞した。いずれも“チャレンジ”というキーワードを巧みに表現した作品で、訪れたお客さんの目をひいていた。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑今大会のポスターに掲載されているイラストは、昨年、優秀賞を受賞した生徒が描いたイラストだという。


■パソコン甲子園2015に向けてレベルアップ!

 2日間にわたって繰り広げられたパソコン甲子園2014の全プログラムが終了し、入賞チームの表彰式が執り行われる。各部門の入賞者の発表のあと、審査員から参加した高校生に向けてのコメントが述べられた。

 プログラム部門では、早稲田大学理工学術院教授の筧捷彦氏が「どこが優勝してもおかしくない接戦で、年々、参加チームのレベルが上がっているのを非常に強く感じました。来年以降も、高いレベルで大会が開催されることを期待しています」とコメント。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑早稲田大学理工学術院教授(基幹理工学部情報理工学科)に加え、一般社団法人情報処理学会情報処理教育委員会委員長も務める筧捷彦氏。

 また、グレープシティ株式会社アドバイザリースタッフの矢沢久雄氏が「無駄なく、やっていることがわかりやすいプログラムに特別賞が与えられます。3チームのプログラムが候補に挙がったが、その中でもが短いものを選びました。ぜひまた来年も挑戦してほしい」とコメントを残した。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑グレープシティ株式会社アドバイザリースタッフの矢沢久雄氏。

 一方のモバイル部門では、角川アスキー総合研究所 主席研究員の遠藤諭氏が「作品の内容が飛躍的に良くなり、まるで大人の世界のコンテストを観ているようだった。『たかサーチ』はユーザーインターフェースがわかりやすく、ゲーミフィケーションの要素も取り入れられ、子どもたちに自然に使えるように作られていたためデザイン賞に、『Qoolqle』は、逆上がりの最中にスマホを身に着けられないという問題点をAndroid Wearを利用して解決した点などを評価してアイデア賞となりました」と講評。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑角川アスキー総合研究所 主席研究員の遠藤諭氏。

 また、ITジャーナリストの林信行氏は「グランプリを獲った『テキパキッチン』はアイデア部門でも、デザイン部門でも受賞できる作品。総合力が勝っていたことで、グランプリに選ばれました。受賞できなかったチームは悔しいと思うが、本選まで進めたことだけでもすごいこと。今大会の結果をしっかりと検証して、次回はグランプリを目指してほしいです」と締めくくった。

会津大学を舞台に電脳高校生が熱戦を繰り広げた『パソコン甲子園2014』
↑ITジャーナリストの林信行氏。

 今大会が閉幕した。パソコン甲子園は、授業や部活、趣味でパソコンに触れている高校生の知識や経験を活かす絶好のチャンスだ。予選が開催される来春までに腕を磨き、来年のパソコン甲子園に参加しよう!

(関連サイト)
パソコン甲子園2014
 

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