Deff(ディーフ)の『DDA-LA20RC』は、手軽にハイレゾ音源を楽しめるポータブルハイレゾヘッドホンアンプ。手持ちのイヤホンをつなぐだけで使える手のひらサイズのガジェットで、音楽CD(44.1kHz/16bit)の約3倍の情報量をもつ96kHz/24bitのハイレゾ形式の音楽データを再生可能。バスパワー駆動で扱いやすく背面クリップで服やバッグに固定できる。
今回、『DDA-LA20RC(iPhone/Android用)』がVGP(ビジュアルグランプリ)金賞とガジェット大賞に入賞、『DDA-A20RC(Android用)』がVGP受賞とガジェット大賞に輝いた。この製品、週アスとも縁の深い霜田憲一さん(@Shimoken)が手がけたもの。週刊アスキー編集長代理のイトーが、開発の裏側を訊いてみました。
※VGP(ビジュアルグランプリ)とは、映像やサウンドジャンルの優れた製品を表彰する賞で音元出版が主催している。
Deff広報担当・霜田憲一氏。 |
イトー VGP2015受賞、おめでとうございます!
霜田 ありがとうございます。ガジェット大賞は、この製品のために新設いただいた賞なんです。音楽を気軽に楽しむ“ファンオーディオ”というコンセプトがおもしろいと評価していただきました。
イトー 具体的にどんなコンセプトで作ったんでしょうか?
霜田 ポータブルヘッドホンアンプを買う人は、ハイエンドユーザーとまではいかなくてもオーディオ好きのユーザーです。音質を求めると機器はどうしてもそれなりに大きくなります。スマホで音楽を聴くときにDACやパワーアンプを一緒に持ち歩くと、3台4台を重ねてシリコンバンドで留めるといった姿になって、もはや全然ポータブルじゃないんです。我々が目指したのはそこじゃなくて、もっと気軽にハイレゾを楽しんでもらおうと思ったんです。
実は去年も同じコンセプトで製品『DDA-L10RC』を出したんですけれども、できるだけ安くしたいという思いで作ったところ、サイズ感は非常に好評だったのですが、質感が安っぽいと言われてしまいました。そこで、サイズ感は維持したまま質感やデザインのほか、音質も見直したのが今回の製品です。
前モデル『DDA-L10RC』
“モノ”としてハード面の並々ならぬこだわり
イトー それにしても質感がすばらしくイイですね。
霜田 どうやって質感を高めるかと考えたときに、Deffという会社はアルミバンパーをずっとやってきた中でお客様がマテリアルに求めるものはメタルだと確信していましたので、素材はアルミニウムを選択しました。
今回新しい試みとして”鍛造”という工程を追加しました。アルミバンパーなどのDeff製品はアルミの削り出しが一般的で、アルミの塊からガリガリと削って形を作っていきます。もちろんこの方法でも作れるのですが、鍛造では、まずある程度の大きさのアルミの板を200トンのプレスにかけ、いったん大まかな形に打ち抜き、そこから先を削っています。鍛造直後というのは、ちょうど型からたい焼きが出てきたような状態です。まだ耳がついているものの、大体形になっているというわけですね。そして、イヤホンの穴などを全部削り出して仕上げます。
Deffのアルミバンパー
鍛造はクルマのホイールや腕時計の本体などで採用されている方法です。鍛えるという文字からわかるとおり、圧をかけることで強度が増して品質が安定します。削った部分もキレイなんです。
イトー カラーはシルバー、ブラック、ホワイトの3色ですよね。
霜田 実は3色すべて表面処理を変えています。ブラックは弊社のバンパーでもよく採用しているアルマイト処理、シルバーはアルミの地金を磨いたポリッシュ仕上げ、ホワイトは粉末塗料を静電気で吸着させる電着塗装でサラッとしたマットな質感です。
イトー 手間かかってますね!シモケンさんらしい(笑)。在庫のことを考えるとチャレンジングですね。ちなみに人気の色などあるのでしょうか?
霜田 やはり鉄板はブラックですが、予想に反してシルバーもよく出ています。
イトー 女性にも売れていると聞きましたけど……。
霜田 意外にも、シルバーはアクセサリー的なカラーなので洋服に合わせやすいという意見をいただいています。ほかにも背面のクリップは板状にせずワイヤーを使っていたり、ネジを専用に起こしたりと弊社デザイナーは細部にまでこだわっています。
音質へのこだわりを訊く
イトー 前モデルから音質をよくしたということですが、テーマはあるんでしょうか? 音質をよくするとひとことで言ってもいろいろあるように思います。
霜田 ハイレゾのいちばんの特徴は、解像度が高くてより繊細な部分がわかるという点です。聴いたときの新鮮さや、業界的な表現で言う“音の粒が立つ”といったところをメインに考えました。ですが、我々はモノは作れても音質のチューニングに関しては素人なので、今回アドバイザーという形でプロデューサーの山木隆一郎氏にサウンドコンポーザーをお願いして音の味付けをしています。聞きやすく、ハイレゾ感が伝わりやすい音質を目指しました。
イトー 具体的に山木さんはどのように関わられたんでしょうか?
霜田 製品よりも大きな評価ボードという基板があり、評価ボードはPCとつながっていて微妙な音質の調整がリアルタイムで行えます。これを使ってスタジオで音を聴き、一番いいポイントを探ります。音質を決めたら、何種類かの製品サンプルを作り実際に聞き込んでどれがベストが探ります。オーディオって、回路は同じでも基板のサイズなどで音が変わって来てしまうんです。ですから、まずは評価ボードで音を絞り込み、次に量産基板に近いものでの作り込みを行い、最終的に製品化するわけです。
一般のオーディオ製品と同じくらい追い込んでいると思います。そして、データではなく耳で必ず評価しました。お客様がどう使われるかわからないので、どう聞いても粗が出ないようさまざまなイヤホン・ヘッドホンだけでなくスピーカーでも試しました。おかげで、多くの方から言われるとおり、どんなイヤホン・ヘッドホンとも合わせやすくニュートラルで変なクセのない音になっています。
イトー iPhoneに直接イヤホンを挿して聴くのと、ポータブルハイレゾヘッドホンアンプを通したのでは、定位感の違いがハッキリわかります。電車の中でもわかるくらいです。
霜田 iPhoneって中低域がしっかりとした味付けになっていて、今風といえば今風なんですけどジャンルによってはキツいかなということもあると思うんです。そこで、まず全体的にフラットにしてから、人が聴いたとき敏感なところを調整しました。聴いていただいてわかるとおり、明瞭度や定位感が増し、楽器ひとつひとつの音やボーカルの息継ぎまでしっかりと聴こえるようなものになり、出来栄えには満足しています。
イトー ボーカル曲でハイレゾを楽しむ人は多いと思うのですが、男声と女声どちらに向いているといったことはありますか?
霜田 もちろん、男声女声とも明瞭に聴こえますが、特に女性の声がキレイに通るように気をつけています。オペラなんか聴いていただくとわかりやすいです。また、ハイレゾということであまり聴こえない高帯域にも気をつかっています。ぜひライブ音源を、できれば大きめのボリュームで聴いていただきたいです。ライブ会場の何とも言えない空気感や、音は出ていなくてもお客さんのいる雰囲気、レコーディングスタジオにはない音の混ざり具合がわかるんです。意外とピアノ1台だけのコンサートなんかもおもしろくて、鍵盤のタッチはもちろんペダルを踏む音などまで聴こえますし、オーケストラの指揮者の服のこすれる音などもわかります。
イトー ハイレゾ音源に変えたときの差って、写真でいうと黒ベタに見えてた暗部の質感や階調がちゃんとわかるみたいな感じですよね。
霜田 そうですね。ちょっとおもしろい話があります。ハイレゾを聴き慣れていないお客様から「とある楽曲にノイズが入ってる」と連絡があったんです。いろいろ調べたところ、最近って雰囲気を出したりするためにちょっとしたノイズを入れたりひずみを入れるということがあって、その音源は元々その音が入っていたんです。
イトー これまで聴こえていなかった音が聴こえたわけですね。
霜田 iPhoneに直接イヤホンを挿すのでいいと言っていた人でも、一度試してもらうと開眼しちゃうと思いますよ。
イトー そうですね。たとえば1万5000円くらいのちょっといいイヤホンに買い替えると音が劇的に変わって感動しますよね。でも、次に同じだけの感動を味わおうと思ったら3万円くらいしちゃう。グレードの高いイヤホンを買いますときの最大の問題は、結局古いイヤホンが余っちゃうこと(笑)。そういう意味では、今あるものを余らさずに音質のステップアップができるポタアンの選択肢って費用対効果が高いと思います。ちなみに、個人的にオススメのハイレゾ楽曲はありますか?
霜田 メジャーどころだと、アナ雪のサウンドトラックはハイレゾ版が出ているんですが、意外と細かい音がいっぱい入っているのがわかって驚きます。歌い上げ系の曲が多いので、歌い手さんの喉の音なども聞こえて生々しいくらいです。
編集長代理・イトーもポータブルハイレゾヘッドホンアンプユーザー。 |
そのほかにもこだわりが満載
霜田 バスパワー駆動というのもこだわったポイントです。実際に使った人はわかると思うんですが、充電式だとどうしてもバッテリー駆動時間の問題があります。
イトー そう、充電式って不便なんですよね~。小さいと充電切れやすいし、充電しなきゃいけない機器がひとつ増えるし。iPhoneは充電したのに、こっちは忘れてたなんてことありますよね。
霜田 オーディオって大きな電気を使ったほうが音的にも有利なので、本当はバッテリーがあるほうがいいんですけど、葛藤しつつも気軽に楽しめるファンオーディオという点を優先しました。極論を言うと、買ってその帰り道で楽しんでもらいたいと思っています。
イトー これ、マイクロUSBだからPCでも使えますよね。
霜田 そこもミソですね。Windows、Mac関係なく使っていただけます。ハイレゾ音源じゃなく、iTunesのライブラリを聴いていただいても音の違いは明確にわかると思います。
また、ユーザーによるファームウェアアップデートにも対応しています。”ポップノイズ”といって通電時にポツッという音が入る問題をすでに認知していて、解決するアップデーターを提供予定です。これはバスパワー機器ゆえに起こる問題で、一般のオーディオ機器でも電源を入れたときにポツッという音がすると思いますが、スマホの音楽プレーヤーアプリを立ち上げたときなどに音がしてしまうんです。イヤホンだとやっぱり気になりますよね。最初は難しかったのですが、やっと解消方法が見つかりました。
イトー 細かいところですが、うれしいポイントですね!
霜田さんがお気に入りのハイレゾ楽曲 5選をご紹介
●Alive (Hiromi『Alive』より)
“生きる”がテーマの上原ひろみのアルバム。ライブ感ある迫力の演奏はハイレゾだとよりパワフルに。ジャズ初心者にもおすすめ。
●ロザーナ (『TOTO 35周年アニヴァーサリー・ツアー〜ライヴ・イン・ポーランド 2013』より)
70〜80年代の名曲の数々をハイレゾで配信。聴き始めると世界観に没頭できるはず。
●Don't Know Why (Norah Jones『Come Away With Me』より)
新たにマスタリングされたハイレゾ音源は、細やかな息づかいも明瞭にして、まるで目の前で歌っている感覚を堪能できる。
●生まれてはじめて(英語) (『アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック -デラックス・エディション-』より)
もはや聴き飽きてしまった人も多いと思うが、そういう人に聴いて欲しい。歌いあげているボーカルの力強さに迫力を感じる。
●One more time, One more chance (山崎まさよし『LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾』より)
録音からデータ化までデータフォーマットを変更せずに配信。ボーカルの息づかいやギターのストリングスの響きの生々しさとライブの臨場感はハイレゾならでは。
『ポータブルハイレゾヘッドホンアンプ DDA-LA20RC』はアスキーストアでも販売中。さらに詳細なスペック&オンライン購入はアスキーストアでどうぞ(品切れてしまったらすみません)。
Deff Sound Lightning対応ポータブルハイレゾヘッドホンアンプ
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