全国スタートアップデイin中部が有限責任監査法人トーマツ 名古屋事務所にて10月4日に開催された。主催はトーマツ ベンチャーサポート、共催にサムライインキュベート。
全国スタートアップデイは、ベンチャーキャピタリストや大企業の新規事業担当者と地方のベンチャー・スタートアップ企業のマッチングの場。参加スタートアップはそれぞれが個性的なピッチを行ない、資金調達や事業提携に向けてサービスをアピールした。
ピッチ前には、急きょ参加が決定したサムライインキュベートの榊原健太郎CEOを司会に、起業家・ベンチャーキャピタリストによるパネルディスカッションが行なわれた。エンジニアとの情報共有方法や人材獲得方法、中部・東海地方からのスタートアップをテーマに、”真面目すぎる中部から成長ベンチャーが出るにはどうしたらいいのか”など、にぎやかに意見が交わされた。
パネリストからは、「中部地区では、まず早くアクセルを踏んだ方がいいというのを1年間話す。足元が確かなために急がない人が多い。投資するまで7年かかったケースも」「みなさん真面目。東京を無視して世界を相手にするケースがあってもいい」など、中部地区が持つ独特の保守性を、自信をもって破ってほしいという意見が出た。
グランプリとなったのは、家族のコミュニケーションを豊かにするインターネット写真サービスの『UniFa(ユニファ)』。保育園・幼稚園に子どもがいる家庭での鮮度の高いコミュニケーションを実現するSNSだ。
保育園や幼稚園での日常的な子供の風景を写真撮影し、家族がその日のうちにスマホなどで写真を閲覧できる。単純に我が子の様子が見えるメリットだけでなく、画像検索で必要な写真選択を自動化したり、情報セキュリティーの徹底が図られている。保育園にとっても、保護者からの要望が多い写真事務作業が効率化でき、コミュニケーションも活発になるメリットがある。事業導入のポイントは「ハイテクだけでなく、現場での理解を取れるプロダクト」だ。
ユニファの土岐泰之代表は「子どもの写真に関するエンターテイメント、家族ポータルメディアとしてLINEやFacebookのようにコミュニケーションを変えたい」と語る。将来はグローバルな家族SNSを目指しており、上場、さらにインドや台湾などアジア展開を狙う。
トーマツ賞は、図書館の蔵書検索のサイト『カーリル』。すでに公共図書館の約93%を網羅し、大学の図書館なども含めて、全ての図書館データベースをつなぐウェブサービスだ。「図書館をもっと楽しく」がコンセプトで、リアルタイムでの貸し出し情報がわかる書誌データベースが閲覧できる。新たな公共サービスの発信元として、図書館が生まれ変わるかもしれない。
サムライ賞には、建設機械の売買マッチングサービス『SORABITO(ソラビト)』が選ばれた。なかなか相手を探すのが難しく、やり取りも煩雑な建設重機市場でのB2Bを支援。タブレットやスマートフォンを活用して、現場から査定や建設機械の情報共有もできる。青木隆幸代表は、「働く機械の世界的な市場は約6.5兆円。世界中の建設機械のB2Bマッチングをして、アリババのようになっていきたい」とビジョンを語った。
表彰後の講評では、サムライインキュベートの榊原CEOがサプライズで投資先決定を発表。檀上で"ぶっこみ先"として告げられたのは、SORABITO。事前に何も知らされていなかったSORABITOの青木代表は驚いていたが、「世界を変えたい。気合を入れてがんばりたい」と決意を表明した。
思わぬサプライズで幕を閉じた中部。20兆円を超える時価総額をもつ世界企業TOYOTAを生んだ中部地区から、日本を一気に飛び越えるような、スタートアップが現われることに期待したい。
■関連サイト
トーマツ ベンチャーサポート
サムライインキュベート
ユニファ
ソラビト
カーリル
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