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見た目だけは激似!中国製“コピーiPhone6”の現状を中国深センで探る

2014年08月30日 16時00分更新

 アップルが新型iPhoneを販売するよりも早く、中国ではコピー品が毎年のように登場している。2014年9月発表されるとみられるiPhone6(?)も、中国では8月には見た目が同等の製品が発売された。ではそのコピーiPhone6は中国でどうやって売っているのだろうか?世界のスマートフォン工場が集まる中国の深センの電脳街で探ってみた。

中国iPhone6
↑深センまでは香港から電車で約1時間。

 深センへは香港から通勤電車に乗って1時間弱。国境は陸続きであり気軽に国を超えて訪問できる。今回訪問したのは平日の昼間だが結構な人が電車に乗っていた。大きいカバンを持った人が多く、安いものを求めて深センへ買い出しにでかける香港人も多い。しかもセミプロやバイトで買い出しを請け負う人も多いという。だが香港では安物の携帯電話は売れず、深センから香港へ低価格スマートフォンが輸入されることはないようだ。コピーiPhoneも香港で見かけることは皆無である。

中国iPhone6
↑スマホ問屋が並ぶ深セン電脳街に到着。

 香港からの電車を降り、イミグレーションで出国入国すれば中国大陸へ簡単に潜入できる。入国してしまえばそこから先は中国、香港とは街の雰囲気も人々の服装もがらりと変わるのは面白い。さて深センの電脳街は国境の羅湖駅から地下鉄で10分ほど。年々ビルの建て替えなどで街並みはきれいになっているが、携帯電話やアクセサリーを売る屋台や問屋があるなど、怪しげな雰囲気は今も十分残っている。
 

中国iPhone6
↑売れ筋はiPhone、サムスン、ファーウェイそしてシャオミ。

 家電店や携帯電話店では売れ筋のスマートフォンを大きくアピールしており、大型スピーカーの前でマイク片手に店員が絶叫しながらお買い得品の名前と値段をアナウンスし続ける姿も珍しくない。そしてどこでも見かけるのはiPhoneとサムスン電子のGALAXYシリーズだ。この2社の製品はやはり人気は絶大である。だが最近では中国メーカーが力をつけており、ファーウェイ、そしてシャオミの端末を店頭で見かけることも珍しくなくなってきている。

中国iPhone6
↑どうみても本物じゃないお店もある。

 電脳街にはメーカーのお店もずらりと並んでおり、リンゴのマークを掲げたお店も多い。だがこれらは正規の店ではなく、独自に(勝手に)iPhoneを売っている店なのだ。扱っている製品も出元が怪しいものもあるなど買物は避けたほうがいい。

 だが逆にこの手の店なら、コピーiPhone6も置いてあるのではないだろうか?そう期待して店に入り、さっそく店員に声をかけてみた。

私「iPhone 6ください」
店員「今予約中だよ。デポジット払ってね」
私「今すぐ買えるiPhone 6が欲しいんだけど」
店員「まだ出てないよ!」
私「だって中国ではもう出ているって」
店員「あー、はいはい、それはiPhoneじゃないよ(笑)。その手のものはそのあたりのビルに入って探して。でもそんなもの買ってどうするんだ?」

 まともな店ではないのに、どうやら扱っている製品はまともなもの。このあたりが中国の不思議なところでもある。ちなみにスタッフの制服から店内の什器まですべてが本物に見えるが、これらを売る専門店もあるほどだ。

中国iPhone6
↑ケースを売ってる問屋ビルに潜入。

 ということで、付近のビルをしらみつぶしに回ることに。店構えは怪しくとも、置いてあるものがちゃんとしたメーカー品のお店にはやはりiPhone6は無かった。だが、明らかにまともではない携帯電話、つまりスポーツカー型の携帯電話やキャラクター型の携帯電話などを置いている店にはiPhone6らしきものが置いてある。とはいえモックなのだろうか?

中国iPhone6
↑iPhone6を売っているという店を発見。

 もう少し歩き回ってみると「苹果6(りんご6)」すなわち堂々とiPhone6と手書きの案内を掲げているお店があった。実機があるのかと聞くと、在庫はいくらでもあるという。店員は「中国でしかこんなものは売られていないぞ。しかも値段も安いしAndroidも動く」と話しかけてくる。そう、これを本物として売ろうとしているのではなく、コピー品とわかって売っているのだ。

中国iPhone6
↑iPhone6は裏返して展示。

 その店で改めてiPhone6とやらを見せてもらうことにする。ショーケースに並んでいる製品はあえて裏返しされており、苹果6のラベルが貼られている。表を向けないところは店主の良心なのだろうか?もちろんこれはモックではなく動作する実機だという。

中国iPhone6
↑iOSと区別のつかない画面表示。

 このままでは中身がどんなものかもわからないため、展示品を出して電源を入れさせてもらった。電源ON→画面表示→設定画面と開いてみたが、アイコンデザインやフォント、メニュー項目などはiOSにそっくりだ。とはいえベースはAndroidで、アイコンなどはカスタマイズされたもの。そしていくつか実機をいじってみると動作がカクカクのものもあった。製品の品質にばらつきがあるのだろうか?

中国iPhone6
↑値段は1万4000円、いきなりそこから1700円引き。

 Androidとして使うのも面白そうなので値段を聞いてみることにした。価格は850人民元、約1万4400円だと言う。だがすぐに続けて電卓を叩き「今日は750元でいいよ」。交渉もなく100人民元の値下げ、約1700円も即座に下がった。ただしこれは、お買い得感を出すためにわざと最初は高い値段を言ってきたのかもしれない。

中国iPhone6
↑残念ながら日本語が入っていない。

 750元でも悪くはない。念のため改めてあちこちをいじってみることにした。ホームボタンの押し具合も個体差があるが、まあこの手の製品であればこのくらいが普通なのだろう。設定画面も開いてひととおりチェック。すると残念ながら日本語ロケールが入っていない。MoreLocale2を使えばここに日本語が出てくるのだろうか?

中国iPhone6
↑日本語無し、でさらに1700円値下がり。

 日本語がないことを店員に伝えると、解決方法を教えてくるのではなく、すかさず電卓を叩きなおして“650”と入力するではないか。再び1700円の値下げで、これで約1万1000円に下がった。そんな簡単に値下げしていいのか?

中国iPhone6
↑システム確認アプリで2台の差をチェック。

 ここで再び悩んでいると、店員はショーケースの上に出したiPhoneにその場でアプリを入れ出した。中国製のシステム確認アプリだという。そして先ほど使ってみたところカクカク動くほうのiPhoneでこのアプリを走らせたところ、CPUはシングルコアとの判断結果が出た。一方、もう片方の問題なく動くほうはデュアルコアCPUを搭載。見た目が同じでも中身が違う製品があったとは……。それにしても本物のiPhoneに本気で近づけるなら、せめてクアッドコアは欲しいところ。メーカーもそこまで真剣には作らなかったのだろう。

中国iPhone6
↑お詫びでさらに850円値下がり。

 このあたりの混乱でどれを買うべきか悩ましくなってしまった。店員に値引きを交渉すると「混乱させてしまいすまなかった」と電卓に600と打ち込んだ。何度も電卓を叩かれると、果たしていくらまで下がるのだろうかという興味が湧く。だがこの値段交渉は、ふっかけてきた値段に対して値段交渉をするという、東南アジアの屋台でブランド品コピーを買うのとはどうも空気が違う。店員はあきらかに早く売りたい、という雰囲気を出しているのだ。

 つまり今ここで値段交渉をしている目の前にあるブツは、店にとっては「本物よりも先に出てきた、貴重なiPhone6のコピー」ではないのだ。「売ればいくらか利益の出る、どこかの工場が作ったノーブランドのスマートフォン」にすぎないのだろう。下手にiPhone6のコピーにしてしまったものだから、本物が出てくる前までに売り切らないと売れ残って赤字になってしまう、ということなのだ。

中国iPhone6
↑3色並べて「さあ」どれでも持ってけドロボー!

 「3色あるんだよね」と確認すると、箱と一緒に3色を並べ「これみんなデュアルコアのだからね」とこちらの目を真剣に見る。「もうどれでもいいからとっとと買っていってくれ、俺はこのiPhone6には少しも興味がなく、早く在庫を吐きたいんだ」。無言でそう語っているかのようだった。

中国iPhone6
↑最後の値下げで1万円を切った!

 そして「これが最後」と電卓を叩いて出てきた数字が550人民元。日本円で約9300円、ついに1万円を切った。筆者の経験からこの手のコピー製品は最大限まで値切ると、店の利益は1台あたり5人民元、約80円程度にすぎない。それでも売らなければ不良在庫となり、中国人ですら買わないただのゴミとなってしまうのだろう。

中国iPhone6
↑最後の最後、カバーも無料と言ってきた。

 中国では誰もがiPhoneのコピー品を欲しがり、それを自慢げに使うという時代はもう昔のことになっている。例えば海外からのSIMロックiPhoneなら比較的安価に入手でき、それに通称"SIM下駄"をはめて中国で使えるようにして利用している人も多い。また今や中国のまともなスマートフォンも十分高機能だ。シャオミのヒット商品、紅米なら799元で購入でき、コピーiPhone6よりも高性能かつ品質もきちんとしている。

 中国で毎年のごとく生まれるコピーiPhone、もはやそれは“ネタ”だけのためにどこかのメーカーが作っており、中国人ですら見向きもしない存在になっているのが現状なのだ。とはいえアイデアを思い立ったら即座に現物を作ってしまうという、中国のモノづくりのスピードの速さはこれからも変わらないはずだ。これからも新型iPhoneが発表されるたびに、コピーiPhoneがすぐに登場し続けるのだろう。

山根康宏さんのオフィシャルサイト
香港携帯情報局

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