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巨大ロボ『クラタス』のOS技術、OculusでVRテニス、ハコスコ開発秘話まで“電脳空間カウボーイズ祭り”レポ

2014年08月25日 12時30分更新

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 ユビキタスエンターテインメントは、8月23日に東京都の湯島にある同社ビル内にて“夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り”を開催した。

 本イベントでは巨大人型ロボット『クラタス』制御OSの開発者である吉崎航氏や段ボールでできるヘッドマウントディスプレー(HMD)、ハコスコでお馴染みの理化学研究所の藤井直敬氏など、豪華なメンバーが登壇し、トークセッションを行なった。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 会の冒頭にはユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏が登壇。清水氏は人の脳をたとえに出してデジタルとアナログの関係を解説して、“Digital and Analog”といったテーマを伝えた。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 青山学院大学 国際政治経済学部の井田昌之教授は、複数のサーバーやクライアントを用いてプロセスの負荷分散を行なうシステムについて解説。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 セカンドライフのような仮想空間で用途を伝えた方が、ユーザーインターフェース(UI)として優れているのではといったアプローチを解説。3Dキャラクターをもちいて仮想空間にある店舗を行き来して買い物したり、メールを行なうといったデモを動画で紹介した。

未来は明るいと感じたロボットOSがスゴイ

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 水道橋重工が制作した人が登場可能な巨大ロボット『クラタス』の制御OSをつくった吉崎航氏が登壇し、ロボットOS『V-Sido』(ブシドー)を紹介。

 V-Sidoはサーボモーターやバッテリーといったロボットに必要なパーツの管理を行なったうえで、PCやAndroid(スマホなど)でロボットを動かせるシステムを目指しているという。たとえば、ロボットに指示した抽象的な命令、腕を前に出せとして反動で後ろに倒れないようにするといったこを、大まかに補うことがリアルタイムにできるという。

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 一般用のホビーロボットの足を延長しても、ジャイロセンサーや速度センサーなしに、シミュレーションベースできちんと歩かせることができる。また、ジャイロセンサーをもちいれば動きが柔らかくなり、700グラムのロボットに対して、200グラムくらいの中身の入った缶コーヒーを投げつけても転倒しないそうだ。

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 また、ロボットをV-Sidoに対応させれば、アプリの開発なしにスマホを使って遠隔操作が可能。V-SidoがサーバーになるためHTML5でアクセスするだけでOK。

 V-Sidoは人形を動かすと連動して、等身大の着ぐるみロボットを動かすといったこともできる。

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 人形は腕だけしか動かしていなくても、着ぐるみロボット側は、その動きに合わせて首や肩が不自然にならないように動作する。さらには力の加減なども行なうため、柔らかいモノから堅いモノまで判断してきちんと持ち、人と抱き合うといったこともできる。

 ロボットは炎天下でも人のように疲弊しない。また、背を小さくして子供と触れ合える目線の着ぐるみを動かせるといったメリットがある。

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 吉崎氏は重機を動かす人型のロボットの開発にも取り組んでいる。重機をロボット化するのとは異なり、人手が足らないときに余った重機に人型ロボットを乗せて運用すれば良いといったアプローチ。

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 もちろん話題となった『クラタス』も紹介。V-Sido OSでは設定を変更することなく、いつでも油圧とサーボモーターなどといったパーツを交換して運用できる。また、操作はKinectやスマホといった外部インターフェースを使った遠隔操作も可能だが、クラタスはロマンで人が乗って動かしているそうだ。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 吉崎氏はV-Sido OSはとりあえず使ってみて、どの分野に使えるかを試してもらいたいと考え、『V-Sido CONNECT』(年内発売予定)というシステムを考案。

 このV-Sido CONNECTは、市販のロボットに組み込みV-Sido OSをダウンロードするだけで、10行の短いプログラムを投げるだけでロボットが動かせるという。

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 吉崎氏は市販のサーボモーターを使ってV-Sido CONNECTをもちいたロボットを使った実例を紹介。人が手を引くと自動で立ち上がったり、スマホなどを用いた発話、iBeconによりかかってきた電話に出るといったことが可能になるという。

 現在はハードメーカーと協力関係を結ぶということを進めているということなので、近い将来このシステムをもちいた驚きのロボットが出てくるのではと期待が高まる。

9分間でゲームを作成“9min.コーディング・バトル”

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 9min.コーディング・バトルは、ユビキタスエンターテインメントの社員が9分間にプログラムを書いてゲームをつくる恒例イベント。

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 最初のバトルでは、ゴトー博士のみがenchant.jsをベースとした手描きメモに特化のハード『enchantMOON』を使い参加。

 4人の参加者は“夏”、“雨”といったテーマに沿った、雨でスイカを洗ったり、雨のように降るアイスを食べるといったユニークなゲームを9分間といった短い時間につくって驚かされた。

 さらに、余った時間を使い3分間でゲームをつくるバトルが行なわれた。ゴトー博士は入力したキーワードに即した画像などをネットワークから拾ってきて反映できる“MOONBlock”の最新機能を使うなどし、enchantMOONの利点をアピールした。

いつでもどこでも誰もが使う“全世界コンピューターティング”

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 慶應義塾大学の増井俊之教授は、手軽な開発環境によるプログラミングのを一般化し、全世界どこでもだれでも使える全世界コンピューティングについて言及。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り
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 その実装例として“Linda”と呼ばれる分散並列プログラミングを用いて、ドアの開閉においてスマホを傾けるだけで、センサーにより鍵を開くといった装置などを紹介した。

3Dグラフィックスによる仮想空間

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 ファイナルファンタジーⅦの開発でも知られるNVIDIAの橋本和幸氏は、3Dグラフィックスの仮想空間『BlueMars』の開発について語った。

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 橋本氏は2005年セカンドライフが流行した際に、メタバース(インターネット上の仮想空間)もゲームと同じくポリゴン化が起こるのではということと、データの売買についても注目して開発。

 グラフィックエンジンは『CryENGINE2』を採用。アイテムだけでなく都市空間(例:オンラインゲーム)をリリースできるように、COLLADA をベースとしてキャラクター、アニメーションの共通化を進めているという。

 そうしたアセットは、データベースには置かず、IDの交換のみで共有化することにより知的財産の保護を行なっているのが特徴だ。

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 BlueMarsはかなり動作が重いということで、キャラクター1人を動作させるiOSで動作する『BlueMars Mobile』も開発。操作はiPhone/iPadで行ないTwitterとの連携も可能。Twitterの文章が吹き出しで表示されたり、特定の単語によってモーションが変化する。

 BlueMars Mobileであってもキャラクターの髪や服装といったパーツは売買ができる。また、AR機能によりアバターをカメラ映像と合成して表示機能も搭載する。

 橋本氏はBlueMars Mobileの開発の後、BlueMarsの動作が重い理由であった背景をGoogle Street Viewに置き換えて、複数人数とのやり取りが快適に行なえるようにしたとのこと。BlueMarsは現在もユーザー登録して利用できるので、興味がある人は公式サイトを参照してみよう。

彼女との遠距離恋愛のためゲームをつくる

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 成蹊大学に通いインターンでユビキタスエンターテインメントで働いていた野田翔氏は、付き合っていた遠距離恋愛の彼女と楽しむために、今話題の3Dヘッドマウントディスプレー『Oculus Rift』とKinectを使ってテニスゲームを作成。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 バリバリの文系だった野田氏は、幾度のバージョンアップを繰り返し、2つのPCをクロスケーブルでつなげることでネットワークの遅延をクリアーし、ゲームを実用レベルにまでにしたとのこと。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 野田氏は実際に会場でゲームのデモを行なった。ゲームは3レーン上を動き、目線でボールの方向を指定、手を振って打ち返すといったことが可能で、さらなるバージョンアップ次第では、もっとおもしろくなりそうな予感。

コストを下げる発想から話題沸騰のアイテムが

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 理化学研究所の藤井直敬氏は、仮想の映像を使って脳に現実の映像と誤認させるSR(Substitutional Reality=代替現実システム)を実現する研究を行なった。

 藤井氏の実験では360度カメラで撮影した映像を使って、撮影に使った部屋でヘッドマウントディスプレーを被験者にかぶらせ、目の前の映像とは違った映像を流す。脳が記憶している映像と、視覚で得ている映像との境界がなくなることで仮想現実を得ることになる。

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 藤井氏いわく、現実感を得た映像の中で自分が現れると、かなり驚くとのこと。

 Oculus Riftを使えば、数万円でこれを実現できるが、学生が数万円でも高いと話しているのを聞いて、とことんまで安くした結果が話題となった“ハコスコ”(hacosco)だ。

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 ハコスコは段ボールでつくった視覚を覆う箱にアプリをインストールしたiPhoneを入れて、仮想映像を楽しめるもの。

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 藤井氏はハコスコを使ってディスコの映像を流し、大人数でダンスを行なうイベントを実施。その場で激しく踊る人を見て、周りで見ている人もみんなで楽しめると語った。

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 ハコスコはamazonなどでも購入でき、今後対応アプリも増えるので、iPhoneユーザーは購入して試してみてはどうだろう。新型iPhoneのサイズが違ったら、サイズ違いが必要になるだろうが。

紙を使って効率よく・低コストでアイディアを形に

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 株式会社THE GUILDの深津貴之氏は、手早く低コストでアプリの設計や機能のアイディアをまとめられる手法として、紙を使ったペーパープロトタイピングの実装を提案。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 紙はペンと消しゴムさえあれば、どんな形のものでもすばやく形にできる。タブの動作に関しては、ポストイットを張って表現すればよいとのこと。

 また、アイディアは1つだけでなく複数作成することで、モバイルアプリの問題点を議論できるとしている。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 例では、お金の送金を行なう際に送金の確認をポップアップさせるか、送金情報の下にスライドを表示させるかのパターンを記載。ポップアップした方は送金情報が隠れるが、スライドを表示させる方は送金のワンテンポ前に情報が正しいかを再度確認できる。

スマホと連携してテレビがさらに楽しめる

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 株式会社バスキュールの西村真理子氏は、100万人のアクセスも可能なマッシブ・インタラクティブ・エンターテインメント・システム(M.I.E.S)と呼ばれるシステムを使い、ユーザーがスマホを使ってテレビ番組に参加するといった実例を紹介。

 実際にタレントの壇蜜さんの体を舞台とした血液型対抗電脳レースゲームなど、スマホで楽しめるコンテンツが今後も登場する未来を語った。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 また、東京の街並みを“ドラえもん”でお馴染みの“タケコプター”を使って楽しめる、Yahoo! JAPANの特設サイトに公開された『のび太と空中散歩』といったウェブコンテンツも紹介。

 パソコンやスマホを使ってウェブページにアクセスし、仮想のタケコプターを端末に表示。ユーザーはその端末を使って移動を行ない、東京の街並みを空から楽しむことができる。PCやスマホと連携したおもしろい事例は未来を感じさせた。

 すでに公開されているので、興味がある人は楽しんでみよう。

 そのほか、株式会社ロボットの田中朝子氏によるスマホや携帯を使ったコンテンツの紹介や、日本マイクロソフトの物江修氏によるenchant.jsでつくったゲームをVisual StudioによりWindows8.1やiOSに移植するデモなどが行なわれ、来場者と視聴者の関心を誘った。

夏だ一番!電脳空間カウボーイズ祭り

 イベントの最後には、角川アスキー総研の遠藤諭氏とシン石丸氏による“夏のグダグダカウボーイ対談”が行なわれた。

 遠藤氏はドコモインサイトマーケティングが2013年10月から提供している“モバイル空間統計”と、角川アスキー総研の“メディア・ライフスタイル調査”によるコミックマーケット来場者のプロフィールとを合わせて構成したコミケによる人の動きを視覚化した記事を冒頭に、人の行動とデジタル技術について多方面から語った。(参照ascii.jpの記事:コミケで人がどう動くかを視覚化してみた

 遠藤氏は無線LANについてアメリカのように至るところで無線が使えると、人は自分のMACアドレスをまき散らしながら歩いているが、iOS8ではこうした問題を解決するため、でたらめなMACアドレスを飛ばすことになっているといった新機能についても言及。

 また、同じメーカーのカーナビを使っていると、使用しているビッグデータは同じのため、指示される道の優先度は同じで、結果として寄せ集められているのでは?といったユニークな問答が行なわれるなど、ありとあらゆるネタが展開され盛り上がっていた。

●関連サイト
電脳空間カウボーイズZZ公式ニコニコチャンネル
ユビキタスエンターテインメント
V-Sido製品情報
BlueMars公式サイト
のび太と空中散歩
角川アスキー総合研究所

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