忙しいビジネスマンにとって悩みのタネでもあるランチタイム。お弁当を買いに行く時間がないとき、アプリでサクッと注文できるサービスを始めた小林篤昌さんに、起業のきっかけをうかがいました。
株式会社ベントー・ドット・ジェーピー 代表取締
小林篤昌
毎日のランチをボタンひとつで20分以内にお届けするサービス、"bento.jp"を運営する、株式会社ベントー・ドット・ジェーピー代表取締役 CEO。1986年北海道生まれ。2005年北海道札幌南高等学校卒業、2009年東京工業大学工学部建築学科卒業後、株式会社イトクロ入社。2010年2月より事業責任者として上海支社立ち上げ。その後2012年秋に上海支社をKLab社に売却に伴いKLabChinaに転籍。退職後、2014年1月株式会社ベントー・ドット・ジェーピーを創業。ファストデリバリー事業のNo.1を目ざす。
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進藤:小林さん、お若い! まだ20代なんですね。
小林:いま27歳です。世代論的には僕らの世代って強い日本を知らないんです。物心ついたときには経済的にどんどん落ちていっていた。サッカーとか、強くなっているものもありますけどね。ダルビッシュ選手や本田選手とも同世代なので、彼らに負けないようにという視点も強かったりするんですよ。
進藤:どうせ勝負するのなら国内より海外を見すえて勝負するという世代ですね。
小林:海外で活躍するという意識はかなりフラットだと思います。事実、僕も去年まで3年半くらい上海で働いていたので。
進藤:お若いのに経験豊富ですね。"bento.jp”は現在、社員は何人いるんですか?
小林:実は、今年の6月にやっとひとりジョインしたところなんです。
進藤:それまではおひとり?
小林:はい。それ以外の宅配のかたはすべてアルバイトで40~50名くらいが登録してくれています。そのなかから毎日10数名が、注文が入るその都度、運んでくれています。実は、今回、あらためて大変だなと思いまして。僕、いままでゲームをつくっていたんですけど、そのほうがラクというと怒られますが、ゲームづくりは基本的には座っていて完結する仕事なんですよ。
進藤:ふむ。
小林:もちろん、ゲームづくりは違う意味での大変さはあるんですけど。やはりいまの仕事は物理的にきついと思う瞬間があるので、僕も、もう一回ゼロからやるかというとちょっとハテナなくらいで。
進藤:そうなの(笑)?
小林:リリースの2週間前とか、アルバイトさんが2人しか決まっていなくて。3人目は、決まったなと思った人に連絡したら、連絡が取れなくなってしまい……。でも、その次の土曜日に4件面接が入ったので、僕、すごいやる気満々で来たのにひとりも来てくれなくて。
進藤:ええ~っ。でもそのあとちゃんと間に合ったんですね。
小林:なんとかしたって感じですね。いままでダメっぽかった人にもう一度連絡したり、知り合いに「とりあえず週1でいいからお願い!」って頼んだりとか。
進藤:キッチンのスタッフは?
小林:つくることはプロではないので、別のお弁当屋さんと提携していまして。販売と宅配をうちの会社でやっています。
進藤:お客さんには、スマートフォン用のアプリをダウンロードしていただいて、注文してもらうんですよね。ただ現在は注文できるエリアが限られている。
小林:いまは渋谷と六本木です。
進藤:4月10 日にこのサービスが開始され、最初の2日間は大反響だったそうですが。
小林:ええ。前日までは情報をまったく出さなかったんですけどね。プレスリリースも出さなかった。メディアのかたにお話だけはしていましたが、4月10日の朝9時をプレス解禁の時間にしていたんです。
進藤:本当にぎりぎりまでナイショにしてらした。
小林:はい。その時間からウェブのメディアに情報が出て、そうしたら10時くらいまでの1時間で一気にツイッターやらフェイスブックやらでどんどん広まって。11時半にスタートしたら、たとえば在庫設定が100だったとしたら、“更新”を押すと次の瞬間には数字が90、さらに次の瞬間には80になっていた。つまり1秒、2秒で。
進藤:10人、20人からオーダーが入っちゃった。
小林:正直、そんな想定していなかったのであわてて止めたんですが。そんなわけで、初日は20分以内に届けるはずが、時間内で届けられなかったケースが何割か起きてしまった。でも逆に、それだけのニーズがあることはわかり、いまのデリバリーにみなさん満足していないのだなと実感しました。
進藤:サービスを提供するエリアを渋谷と六本木に設定されたのはどうしてですか。
小林:まず僕らとして、ユーザーがすごくイメージしやすかった場所が渋谷、六本木なんですよ。このあたりはウェブ系、IT系の企業が多いので、そのへんのかたがたがどういう生活をし、日ごろどんなメディアを見ているか、イメージしやすかった。だから、まずはそこからと思ったんです。
つねに自分はこういうことがしたいと公言していました
進藤:小林さんは建築学科に進まれたんですね。
小林:環境問題に興味があって、それでたまたま見たのが『紙の建築』という本で。ざっくりいうと廃材なんですが、トイレットペーパーの芯みたいに堅いものがあって、あれを構造体にして被災地に仮設テントをつくったり教会をつくったり、いろいろなことをやっていて。ようはゴミなのに、軽いし丈夫だし。
進藤:温かいし。
小林:そういうものを使ってなにかできないかなと思い、建築学科に進んだというのがきっかけですね。だけど、入学するとしばらくは教養の授業ばかりで、建築の勉強をしにきたのにとつまらなく思ってですね。そんなころ、同期生から孫正義さんの本を渡されて「これを読め」と。僕はそれまでそういう本を全然読んでいなくて。かろうじて孫正義という名前をぎりぎり知っていくらいで(笑)。
進藤:そうなの!? 意外!!
小林:「ヤバイ、この人すごい!」と思って、それ以降はそういう本を200~300冊、読みました。それと“おてつだいネットワーク”というサービスがあって、これはつまり居酒屋さんとかでアルバイトが2、3人休んじゃってヤバイとなったとき、いまから2時間後に2時間だけ働ける人をマッチングするというようなサービスなんですね。
進藤:まあ、なんて合理的。
小林:これはすごいなあと思って、電話して「自分は大学1年だけど働かせてくれ」と言って、その会社で働きだしたんです。
進藤:それでこの世界に目覚めたんですね。入社された “イトクロ”もいま、大変な人気企業でしょう?
小林:そうですね。僕らは新卒の一期生だったんですよ。そこではウェブのマーケティングの仕事などをしていました。
進藤:上海に行かれていたのも、その会社から。
小林:そうです。当時は会社の売り上げの比率的にはモバイルの仕事って1%くらいしかなくて。それでも僕はモバイルの仕事がしたかったし、その割合をもっと増やさないと今後伸びていかないということはずっと言っていたんです。それで1年目の10月に新たに部署をつくってもらい、それをきっかけに12月には代表と上海の出張に行って。そうしたら初日の飲み会で「じゃ、アツマサ、上海よろしく」と言われてしまい。
進藤:うわぁ、チャンス!!
小林:中国語もしゃべれないのに、会社をつくるように言われて。まあ、そうやってまるっと仕事をまかせてもらえていたのはありがたかったですけどね。
進藤:その経験を活かして、モバイルの仕事を立ち上げられた。夢を実現させるコツ、前進させるためのアドバイスをお願いします。
小林:アドバイスなんておこがましいですが、やってよかったなと思うのは主張すること。先ほどの代表の出張に自分も連れていってほしいと、とりあえずダメもとで言ってみる。言うだけならタダだし(笑)。社内でも「こういうことがしたい」と常に言っていました。「モバイルの仕事がしたい、こんなサービスをつくりたい」と。そうすると社内でモバイルのプロジェクトが立ち上がるたび、さいしょにミーティングに参加させてもらえた。「じゃ、ひとまずアツマサを呼ぶか」と。その結果、チャンスが増えたと思います。
進藤:では最後に、これからの野望を教えてください。
小林:bento.jpはボタンひとつで手軽にランチができるサービスですが、いずれは弁当以外のものでもほしいときにほしいものを手軽に手に入れることに対して価値提供できる会社になりたいんです。「ファストデリバリーといえばbento.jpだね」と言われるような会社になりたいですね
今回の聞き手
進藤晶子(しんどうまさこ)
'71年9月10日生まれ、フリーキャスター。著書に、本誌連載をまとめた『出会いの先に』(小社刊)がある。
http://www.shindomasako.jp/
■関連サイト
bento.jp
週刊アスキーで全部読めます!
7月29日発売の週刊アスキー8/12号(No.990)では、小林篤昌さんを直撃したインタビューをすべて掲載。"bento.jp"をはじめたきっかけや、サービスとして目指していることなど、たっぷりとうかがっています。
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