クルマを運転していると♪テンテケケテケ テケテケ テケテケ テンテケテケテケ テケテケ テケテケ……と、ナイトライダーのテーマを思わず口ずさんでしまう、いーじまです。昨日、80年代の大人気海外ドラマ『ナイトライダー』の全作品を収録した完全版『ナイトライダー コンプリート ブルーレイBOX』が11月27日に発売することが発表された。昔クルマにナイト2000のような左右に流れる電飾を付けていた私にとって、これほどの朗報はない。
『ナイトライダー』を知らない人のために、簡単に解説しよう。民間の犯罪捜査員マイケル・ナイト(デビット・ハッセルホフ)が、特殊装甲で人工知能のK.I.T.T.(キット)をもつクルマ“ナイト2000”を操り、悪の犯罪組織に立ち向かうカーアクションドラマだ。銃弾を物ともせず、時にはキットがクルマを操り自動走行するナイト2000の設定が男心をくすぐり、トランザムをナイト2000の外観と内装に改造するキットも売られていたほど。当時はまだCGではなく特撮でアクションシーンをこなしていたので、自動運転のシーンは大変だったことだろう。そういったアクションシーンもさることながら、マイケルとキットとの軽妙なやりとりも魅力のひとつ。日本での吹き替えの声を担当していたのが、マイケル役がささきいさお氏、キット役が野島昭生氏だ。
マイケル・ナイト役のささきいさお氏 |
キット役の野島昭生氏 |
ナイトライダーは全84話。そのうち74話しか日本で放送されなかったため、10話ぶんを新たに吹き替え収録。さらに、日本で放送されたものでもカットしたシーンが多数あり、それらのシーンもすべて吹き替える。ささき氏と野島氏のほか主要メンバーがみんなそろって今回の吹き替えにあたっているので、正真正銘の完全版だ。しかも、世界に先駆けて日本で先行発売されるという。今回、このささき氏と野島氏の二人が収録スタジオに登場し、アテレコ風景とナイトライダーにまつわるエピソードをいろいろと語ってくれた。
まずは、アテレコのシーンから動画で見てほしい。
あぁ、もうこの声を聞いただけで情景が思い浮かぶよね。昔とほとんど変わらない声に感涙。
そして、引き続きインタビューが行なわれた。いろいろと苦労話とかも話していたので、すべてを熟読してほしい。
――25年ぶりに共演することになった感想は?
ささきいさお氏(以下ささき) 復活するという話を聞いただけで、うれしくて「あぁ、またみんなに会えるな」っていう。毎回終わったら飲みに行くという繰り返しで、次のシリーズの時に会えるのが楽しみ。それが4年も続いたので、家族のような仲間が、またいっしょにこの楽しい作品ができることがうれしかったですね。何しろ作品が楽しいですからね。緊張すると言うよりも楽しむ雰囲気が出ることがいちばん大事だったので、雰囲気づくりを昭生ちゃんもよく相手をしてくれて、がんばってくれたので楽しかったです。
野島昭生氏(以下野島) 25年って考えただけでも大変なことなんですよね。生まれた子供が25歳ですからね。単純計算ですけど。またみんなで集まって、終わったあと飲めるというのがなんと言っても楽しかったんですけど(笑)。でもこの作品は僕がたくさん仕事をやってきた中で、3本指に入るぐらい、いちばん印象に残っているし、楽しいし、おもしろいし。ささきさんや中村さんやみんなで集まっていろいろ話をするのが、ほかのことでも楽しかったですから。家族のような感じで、また25年ぶりに集まれるのがうれしかった。でも、ちょっとあの頃の声が出るか不安でしたけど(笑)。でも、それは買って観て聴いてもらって、ひとつよろしくお願いします。
ささき この部分が新しいってわからないよね。
野島 わからないよ(笑)!
――この完全版は世界初のブルーレイボックスで、日本が先駆けて発売されることに関してはいかがですか。
ささき 以前DVDが出たという話は聞いていて、僕はもっていないのですが、観た方からよく、「どうしても部分部分英語になってしまうところが、どうしてもつながりが途切れ途切れになってしまい、どうにかならないでしょうか」とハガキとや手紙をいただいていたんですよ。できることなら完全につながったものをつくりたいと。でも古いものだからそんなことはないだろうなと、あきらめていたんですが、こうして現実になって、ましてブルーレイという高画質・高音質の作品になると僕としてもうれしくて。僕はあまり長いレギュラーの作品はやったことがないんですよ。特にこういうDVDとかになったものはないので、これは生涯の記念として僕自身も宝物としたいと思います。
野島 ぼくも全く同じですね。こういう昔の作品がつくり直されてブルーレイになるということはあまりないことなんですよね。しかも(日本での発売が)世界初ということですし。日本でもヒットした作品なので、コンプリートされて世界初はうれしいですね。
ささき 単なる作品ではなくて、時代に先駆けた作品じゃない。いまでこそカーナビなどがあってしゃべったりするけど、あの頃そんなものがなかった時代に、こういうものがあって。みんなで「こんなのがあったらおもしろいな」って言っていた、そういう一世を風靡していたものが、また時代を経て現実になった時代にこの作品が売られるのは、若い人が観てもおもしろいと思うけどね。
野島 そうですね。
ささき 特に僕は、変な言い方だけど、洋画はその国の言葉でみるのが好きなんだけど、この作品は日本語で観た方がおもしろい。字幕を追うより、言葉のやりとりとニュアンスを壺井さん(ディレクター)も工夫しているし、昭生ちゃんも工夫しているし、みんなが「あっ、これはおもしろいよね」といいながらつくったものだから、その楽しさが伝わってくると思うんですよね。
野島 全くその通りです(笑)。
――当時としてはあり得ない設定ですが、今ではカーナビやロボットとかあるので、先駆け的存在としてどう思いますか?
野島 当時はこんなものは絶対できないと思っていました。25年前は。これはドラマだからこういう楽しいものができるのだと。苦しみながらの部分もあったのですが、でも楽しくつくっていって。25年たった今は、半分ぐらい? 運転しなくてもいいクルマもできてますよね。だから、だんだんナイトライダーに近づいてきているなとは思いますが、あんなに楽しいK.I.T.T.(キット)はきっといないでしょう(笑)。
ささき ナイトライダーをやっていたせいか、カーナビがしゃべると、それに反論したりするんですよ(笑)。「うるせ~」とか「黙ってろ」とかね(笑)。“ケータイ電話はお忘れですか?”「忘れてないよ!置いてきたんだよ!」とかそんなことやってますよ。うちの女房もつられてやってますよ(笑)。
――本作品のおもしろいエピソードとかありますか?
ささき 当時はいろんなエピソードがあったんだろうと思うんだけど……。
野島 なにしろ25年前というと若かりし頃だったんですが。
ささき だんだん記憶が飛んじゃうんだよね(笑)。
――今回改めて収録した際のお話でも。
ささき 当時は今のようにデジタルではなく、別々のロールで録ったんですよ。僕がしゃべるときは、昭生ちゃんがガラス越しに聴いていて、こういう風に来るならこうしようと。ただ、本番になると僕なんか微妙にニュアンスが変わったり、こうした方がやっぱりおもしろいかなと台詞を変えちゃったりすると、昭生ちゃんはちゃんとそれを受け止めて……。
野島 それが大変だったんですけどね(笑)。このスタジオで、テストまではいっしょにやっているんです。ただ、かぶっちゃうと僕の声(キットの声)はちょっと変えるので、かぶれないわけなんです。ささきさんの声とか息とか、「だよぅ」とか来ると、出損なったりするんで、全部別録りなんです。なので、いつも後ろにいて、ささきさんの台詞を全部聞いておいてインプットしておいて、終わったらまず僕のを録ってもらう。印象に残っている間にとにかく録ってくださいということで、すぐに録ったんです。ですから、あの昔の掛け合いでもうまく息が合っているんだなと、これだけは自負できる部分ですね。
――ということは、ささきさんのアドリブに野島さんが合わせていたという。
ささき そうなんですよ。昭生ちゃんが一生懸命盛り上げてくれたという。
野島 これは、機械的にしょうがないんですよ。ホントはいっしょに録りたいんですよ。でもテストまでしかできなかった。
――たくさんの作品の中から印象に残っているシーンは?
野島 全体がおもしろくて突出したものはないよね。
ささき 強いて言えば、できたてのキットと、完成後のキット、改造をどんどん加えられたキットとで、性格が変わってくるんだよね。マイケルも最初は遠慮したり、やり合ったり、けんかしたり、張り合ったり、いろんな段階を経て、最後にあのような信頼感が出て。そしたら、今度はやきもちを焼くような人間的なキットになっていくという。そういう移り変わりが4年から5年の間にありましたね。今回、前の古い作品をやったりすると、この頃けんかしていたよなって。やたらと突っかかってきたりして(笑)。
野島 そのあたり、クルマでコンピューターだから、喜怒哀楽をどの程度出したらいいのかって、ホントに悩みました。ディレクターさんとささきさんと話して、「あそこまでやっちゃっていいのか?」、「もうちょっとこういう感じで」とか。毎回工夫してやっていった。それも楽しみのひとつだったんですけどね。いちばん最初、ささきさんも知らないことなんですが、最初にパイロット版をつくったき、どういう風につくるかが産みの苦しみでしたね。ディレクターの壺井さんといっしょに、最初はあの頃のコンピューターというと、イントネーションのない単調な声質がふつうだった。でもそれじゃいけないんですね。一度それで録ったんですが、局がおもしろくないと。なら違う感じ、相棒でもっとフレンドリーで、まるっきり友達のようなしゃべり方にしたけど、それでもダメで。そしたらどうするかなと、壺井さんと酒を飲みながらいろいろ話し合って、ちょっとマイケルを好きな弟で、奔放な兄を心配している感じにしようと。それがとっかかりで、やってみたら、あの最初の原点ができたんですよね。でも、そっからも難しかったですよね。たとえば「マイケルいけませんよ」と、どこまで「いけませんよ」と言うのか。どこまで感情を出すのかホント難しかったですね。でもこうしてみなさんと和気あいあいとつくっていく中で、今のあのようなマイケルとキットの話ができてよかったとすごく思っています。
――セリフとして印象に残っているものはありますか?
ささき 僕はもう「行くぞキット!」ってこればっかだから(笑)。
野島 僕の方は「いけませんよマイケル」って(笑)。止めないとすぐマイケルは女性の方へ行っていたから(笑)。
ささき ホント久ぶりにやったら、10本のうち8本ぐらい別の女性を口説いていたので(笑)。その回の主人公の女性を。
野島 だから「いけませんマイケル。何していたんですか?」ってすっとぼけて言うんですよ。キットは監視モード働かせているので、全部聞こえているんだけど。
ささき ラブシーンだって、キスするぐらいでそれ以上のことはないしね。だから、健全娯楽なところを狙っているんだよね。
――新しい話をやっての印象と吹替えしなかったシーンを演じて新たに感じたことがあれば。
ささき 部分部分でやったところは、前後の流れがわからないことが多くて(笑)。適当にくっつけてもらって、それを見ながらやったんだけど、どういう話だったかよくわからないままやってしまったものもあるし(笑)。正確に覚えていたものもあるし。これはディレクターのほうが大変だったと思います。まだこれからも作業は続くのだろうけど。
野島 カットしたシーンって、マイケルとキットのどうでもいいというか、本編の話題に関わりのない、違う話のところが多かったですね。
ささき 突然音楽の話だったり。
野島 カウボーイの話になったり。だから二人の掛け合いが結構ありましたね。だから、そこがまたおもしろかったり、こういうシーンがカットされてしまうのかと、ちょっと残念な部分もありましたね。
ささき それから久しぶりにやって、セリフの躍動感といいますか、最初のうちは乗りきれなくて躍動しないから、どうしたら躍動するのかと、ずいぶん家で稽古してきました。あんまりやり過ぎるとつまらなくなってしまうかと思ったけど、どうすれば躍動するのだろうと、それがいちばん難しかったですね。年取ってくるとセリフが安定感の方へ走ってしまうので、若い時のようにおもいっきりできないときがある。できるだけおもいっきり突き放せるよう、ずいぶん練習しました。
――今回気づいてた新たな魅力は?
ささき やっぱり(デビット・)ハッセルホフって素敵だなと思いますね。実際に作品を録ってからトランジットで偶然会ったんですよ。電話しているところを通りかかった時、うちの奥さんが「マイケルがいる」って。それからしばらくお話して、3人で写真とったら奥さん首しか入らなくて(笑)。ハッセルホフはでかくて、でも感じの良い人で。今回改めて演じてみて、ハッセルホフって可愛いところと大きなところと、いろんなことを兼ね備えた素敵な人だなって。音楽も好きで歌も歌っていたし。ホント魅力的な人ですよ。とにかく、ハッセルホフのよさ、甘さとかを出すように……。
野島 ぴったりでしたよ(笑)! 僕の方は機械ですのでそれほど。ただしゃべるとき、古い方は赤く明滅するだけなんですけど、新しくなると三本線で表現されたり、そのあとは、いろいろと(ウイングが)出てきたり速くなったり飛んだり、変化していくところがおもしろかったですね。
ささき 時速200何十キロで話しながら運転しているから、すごいよね。あれは真似してほしくないよな(笑)。
――本作のPRを。
ささき 外国の近未来のドラマでありながら、なんとなく日本的なドラマが展開するという。僕らが観ていても「アメリカの話ね」ではなく、その辺でありそうな話の中で、事件もそれほど大きなものでもないし、身近な作品でちょっと可愛い女の子が出てきたりという、なんかいろいろと楽しい作品ですね。僕はとっても好きで、今回もやってみてやはりおもしろいなと思いました。
野島 この作品はあまりピストルで撃ちまくったり、人が死んだりというのがあまりなく、だいたい最後はマイケルが、えいやって悪い人を捕まえる話が多いんですよね。だから小さいお子様からお年寄りまで、家族そろってお茶の間で和気あいあいと楽しめる作品です。マイケルとキットの掛け合いが売りですので、ぜひ観てください。
ということで、インタビューでも二人のコンビは息もピッタリで、25年の月日を感じさせない風景でした。
『ナイトライダー コンプリート ブルーレイBOX』はブルーレイ26枚組で『新ナイトライダー2000』と『ナイトライダー2010』の特典DVDと全エピソードを網羅した40ページのブックレット、初回特典として日曜洋画劇場のナイトライダー吹き替え台本復刻版もついて、5万8000円(税別)。速攻でポチるでしょう。
トレーラーはこちら
ちなみに、最近のデビット・ハッセルホフは、ナイトライダーGT-Rに乗って楽しんでいたそうです。動画はNISMO Channelより。
■関連サイト
●ナイトライダー ブルーレイコンプリートBOXサイト
●NBCユニバーサル・エンターテイメント
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