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非金属なのに金色に輝く、可能性無限大の素材が誕生!【素材マニア】|Mac

2014年04月09日 13時00分更新

世界初! 金属を使わずに金色を実現する塗料

 皆さん、メタリックな質感のもの好きですよね? オリンピックのメダルに象徴されるように、金属が持つ独特の光沢は、古くから我々を魅了し続けてきました。実際、身の回りのありとあらゆるプロダクトに金属素材が使われていますし、金属でない素材の製品がメタリックカラーで塗装されることも珍しくありません。

 今回、千葉大学の星野勝義教授のグループが開発したのは、金色に輝く液状の樹脂(プラスチック)です。これまでにも金色や銀色など、メタリックな塗料というのはあったのですが、既存のそうした塗料は本物の金属を使って金属光沢を出していたんです。

既存の金属色塗料
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 もう少し具体的に言うと、従来の金属調の塗料は本物の金属をフレーク状(薄い板状)にして溶剤に溶かしていたんです(上図)。この方法では、フレークが沈降してしまわないように常に撹拌する必要がある、フレークが基板と平行になるように塗らないとムラや光沢感の低下を招く、塗料自体が重いといった問題があります。

 また、本当の金属を使用しているために、電気を通す性質(導電性)も持っています。これは必ずしも欠点ではありませんが、この性質のために用途が限定されるのは確かです。

金属とも生物とも異なる原理の金属調光沢

 さて、今回星野教授らが開発した塗料は、上図のようなチオフェン系化合物のオリゴマー(重合体)を合成して溶媒に溶かしたものです。これをガラスやプラスチック基板上に塗布したところ、金色調に輝くコーティングが実現したそうです。

 これまでにも非金属で金属光沢を有する材料はいくつか発見されていましたが、いずれも溶媒に溶けない、膜を形成しない性質のものでした。つまり、星野教授らが開発したこの材質は「塗料・塗膜として使える、金属光沢を持つ非金属」として世界初の材料なのです。物質としては樹脂(プラスチック)の一種なので、既存の金属調塗料より軽くて扱いやすいという性質を持っています。

新開発の塗料の色味
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 上がその写真で、左が本物の金をガラス板に蒸着させたもの、右が今回開発した塗料をガラス板に塗ったものです。本物の金と比べると若干輝きが鈍く、またやや黄色みが強いように見えますが、十分に「金色」と言って差し支えない色調です。また、星野教授らが開発した塗料にはもう1種類あり、そちらは単純に塗っただけでは暗褐色ですが、表面を布でこすると金色に輝くという性質を持っているそうです。

 金属以外の物質でも、例えばクジャクの羽根やタマムシの翅の色も我々の目にはメタリック調に見えますが、これらは金属とは別の原理で光沢を発しています。星野教授によれば、今回開発した金色調の光沢は、金属ともクジャクやタマムシとも異なる、新しい原理によるものだそうです。目下、このメカニズムを解明中とのことで、それが解明され次第、製品として量産される予定とのこと。
 

ひょうたんから駒の研究成果?

 星野教授によれば、実はこの材料は意図的に開発したものではなく、別の研究を進めている際に偶然に発見したことがきっかけなのだそう。基になった研究は、「透明な導電性ポリマー」の開発です。導電性ポリマーといえば、2000年に白川英樹博士がノーベル化学賞を受賞したことで知られる物質です。

 星野教授らは、電子機器のスクリーンなどに使える材料として、無色透明な導電性ポリマーの開発を試みていました。しかし、この研究がなかなかうまくいかず苦労していたところ、透明な導電性ポリマーではなく「金色の樹脂」が偶然できてしまった。まさに瓢箪から駒の発見というわけですね。

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 上の写真は今回の取材で撮影させてもらった実物です。左はガラス板に塗ったもの、右は紙に直接塗ったものです。紙のほうは周囲に紺色の輪ができていますが、これは溶媒が染みたもの。色合いも暗めなので、この塗料をそのままインクとして使うには何らかの加工が必要なのかもしれません。

 さて、下記は今回開発された塗料の主な特徴をまとめると下記のようになります。

(1)金属を使用した既存の塗料と違って軽い・扱いが容易
(2)製造コストが圧倒的に安い
(3)XXX(現在非公開)


 これらの特徴を持つため、すでにさまざまな企業からのアプローチがあるそうです。守秘義務の関係で具体的な企業名は明かせないそうですが、大手企業との共同研究が決まっており、遅くとも3〜5年以内には製品化できるだろうとのこと。我々一般ユーザーとしては、もっと早期の実用化を実現してほしいところですね。

 金色の塗料や絵の具がこれまでより安価になるわけですから、素人の勝手な想像ですが、この素材の普及によって、金閣寺のように金色に輝く建物がいまよりもっと増えるかもしれません。インクジェットプリンター用の金色インクも開発されそうですし、それ以外のさまざまな製品にも、金色のカラーバリエーションが追加される可能性も出てきたわけです。

 なんと言っても、お隣の中国の人々は金色が大好きだと言われていますから、ものすごい規模の需要が想定されます。ちなみに、金以外に銀や銅といった色はできないのか、という疑問が湧くわけですが、星野教授によれば、銅色はすでに実現しているそう。

 この材料はまだ研究中ということもあり、現段階では公表できない部分も多々あります。守秘義務の関係で明かせませんが、実は上記の「特徴3」がすごい可能性を秘めていたりします(わかる人にはわかると思いますが)。実用化の目途が立ち、正式発表される段階になれば、この材料の真のポテンシャルがわかるはずです。本コーナーでは引き続き追いかけていきますので、続報をお楽しみに。


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