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佐藤紳哉六段が敗れた電王戦第二局を詳細レポート

2014年03月27日 15時00分更新

二度と見られないであろう両国国技館での対局

将棋電王戦第二局

 東京・両国国技館は、春の日差しを受けているものの、まだまだ肌寒い。大相撲春場所は大阪で開催中だったが、この場所は門が締め切られひっそり静まり返っていた。前回の有明コロシアムでもそう思ったが、誰もここでイベントが行なわれているとは思わないだろう。

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↑国技館入口横には稲荷神社が2つ並んでいた。今回の両対局者はここでお参りしたのだろうか?

 初めてここへ訪れたが、土俵がある場所は地下1階。土俵は……なかった。流石にあるわけないか。セットは前回と同様の木組みの畳部屋を用意。観客席などが和の雰囲気なので、意外とマッチしている。そして館内は暖房が効いていて、前回より過ごしやすい。セラミックヒーターも一応設置してあった。

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↑土俵はなく、吊り天井だけはあった。その下に前回同様の舞台を組んでいる。

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↑このガランとした無観客状態での対局姿を見せたいがためにこういう舞台を選んだと言っても過言ではない。

 9時47分に対局場へ姿を現わした佐藤紳哉六段。ソフト改変問題でいろいろとあったが、いつもの“お笑い担当”の表情は一切見せず、和服姿で真剣そのもの。対するやねうら王の開発者・磯崎氏も今回はスーツ姿で、真摯な態度をみせていた。

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↑和服姿の佐藤六段に対し、スーツ姿の磯崎氏。

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↑ソフトの開始設定画面。持ち時間を4時間45分とし、秒読みは50秒に設定していた。

 電王手くんは、相変わらずかわいい。お辞儀することが話題になっていたが、味をしめたのか(?)今回は対局者だけでなく、記録席と視聴者へもお辞儀を披露。またファンが増えることは間違いない。

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↑佐藤六段へのお辞儀に加え、記録席と視聴者にも。あと見ていないのは、投了時の姿だけ。

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↑佐藤六段は最初からこの表情。対局中はいつもこんな感じだとか。

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↑優勝額が周りを取り囲んでいるが、白鵬関だらけでした。

 今回の対局の模様は

 棋譜は

 を参照してほしい。

 午前中は、駒がかち合うこともなく、佐藤六段は穴熊の陣形に、やねうら王は、振り飛車。控室には、遠山五段や有野七段、片上理事などがいたが、特にそれほど検討は行なわれていない。第一局ほど報道関係者の数は多くなく、控室も広いことからゆったりとした雰囲気。ニコファーレでは、木村一基八段と飯島栄治七段の解説、安食総子女流初段の聞き手で大盤解説。相変わらず木村八段の解説は聞いているだけでおもしろい。現地レポートは今回もレポーターに藤田綾女流初段。午前中は、対局前と昼食休憩前の2度だけだった。

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↑電王手くんからの佐藤六段を映すカメラ映像が、ものすごくいい絵面でした。

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↑これも電王手くんに設置したカメラからの360度映像なのだが、これって放送中に活用されているのかな?

 昼食休憩前に現地レポート。立会人・有野芳人七段と片上理事が登場した。

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――電王戦はいかがですか?
有野七段
「初めてなんで、なんとも言い様が無いですね。ロボットと指すなんて、私ではとてもできそうにないです」

片上理事
「対局場の雰囲気は、いつもながら素晴らしいセッティングですね。前回と同様、みんなグルっと取り囲んで観るところを、誰もいない無観客試合みたいな感じが共通点ですね。しかし今回は、歴代の横綱が(正しくは最近の優勝した力士・優勝額)がグルっと取り囲んで見守っているのが前回と大きな違いですね。館内も明るく、マス席をなくすこともできるのですが、出してもらっていて」

――佐藤六段は対局前どうでしたか?
有野七段
「普段とちょっと違っていて、朝、会ったときはちょっと硬い感じがしました。緊張感漂う感じでしたね」

――今回和服姿でしたね。
片上理事
「そうですね。準備されていたみたいです。今日まで秘密にしていたみたいですが。私は、事前に和服でいくと聞いてまして、決意の表われかと思います」

――磯崎さんの様子は?
有野七段
「私はよく知らないです(笑)。すみません」

――今回振り飛車になりましたが、この展開は予想されてましたか?
有野七段
「出だし見たとき、変わった指し方だったので、(今現在)普通の形になるとは思わなかった」

片上理事
「『やねうら王』は初手だけは何が出るかわからない仕様になっているようで。私が指したときは、▲5八飛という中飛車の手が多かったです。そのほかにも、端の歩を突いたり。ただ▲1六歩というのは、一度あるかないかですね。初手だけは変な手を指してきて、そのあとはオーソドックスに進め、見た目はトリッキーなんですが、中身は正統派。ただホントのところはよくわからないという、なんとなく開発者の方に似ている感じがします」

――局面は落ち着いてますが、今後の展開は?
有野七段
「プロ同士の戦いのように流れていくのではないか」

――SSF(佐藤紳哉ファミリー)のメンバーが控室に来ていて賑やかですね。
片上理事
「そうですね。人間が戦うというのは、将棋盤に向かってホント孤独なんですよ。応援が多いことはありがたいことなんです。だからいつも以上に気合が入って力を出せるかと思います」

――どのあたりに注目してほしいですか?
有野七段
「私はコンピューターがどのくらい強いのかわからないのですが、きっと突然、人間では指せない手が出てくると思うんですけど、それを観てほしいですね」

片上理事
「このあとなんですが、私が知っているやねうら王なら時間をかけてゆっくり進むはずなんです。5時間あれば5時間かけて時間配分を考えることに心血を注いでいるんですよ。たとえば、5時間あれば1手20分使ってもいいじゃないですか。だんだん持ち時間がなくなってくると、それに合わせて時間の投入が少なくなってくる。人間だったらどんどん指すというところを一手一手考えて、プロみたいな指し手を出してくると思われます。その辺りを観てもらいです」

 片上理事は最後このように語っていたが、実際には長考と呼べるような長考はほとんどなく、逆に佐藤六段は時間を使い切るという苦しい展開になってしまった。

 佐藤六段の手番のまま、12時の昼食休憩に入った。残りの持ち時間は佐藤六段が4時間4分、やねうら王が3時間59分と、ほぼ同じ。前回の菅井五段は、昼食を5分で終えて、早々に対局場に戻ってきたが、佐藤六段は控室で食事をしながらゆっくり熟考していたようだ。

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↑お昼は末広膳を選択。磯崎氏も同じものを選択していた。

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↑藤田綾女流初段だけのショットもちゃんと押さえておきました。

 12時40分に対局室に現われた佐藤五段は、扇子を振りつつ盤面に向かい考えていた。

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↑タイトル戦などを観ていると、開始ギリギリに登場したりすることが多いが、前回同様、早めの登場。盤の前でしっかり熟考したいのだろうか。

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↑昼食休憩中のやねうら王の画面。評価値の変動はほとんどない。

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↑終始このような険しい表情。表情だけでは優勢なのか劣勢なのかわかりづらい。

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↑磯崎氏は将棋も強いそうなので、自分でも読んでいるのだろうか。

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↑対局中はカメラが置いてあるだけ。読み上げと記録係ぐらいしか人はいない状態だ。

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 対局再開してからしばらくして、△7四歩と指した。表情は最初のときと変わらず険しい。現地レポートとして遠山五段が登場した。

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――両国国技館はいらしたことはありますか?
「相撲はわりと好きで、1月にも来ました。5月場所もチケットを取っております」

――今回はお客さんが入っていない状態ですが。
「ちょっと異様というか、面白い雰囲気ではありますね。ただ、今回はわりと指しやすい環境で佐藤六段も指されているかと思います」

――今日は和服ですね。
「かっこいいですね。佐藤六段はもともとイケメンですからね。一部を除いては(笑)。それさえなければもっとスターなのではないかと」

――対局中は表情が変わりますね。
「いつもこんな感じなんです。私も対局したことがありますが。朝から晩までこうなんです。だから対局するときは極力見ないようにしないと、笑っちゃいますので。盤面だけを集中して。形勢が不利なように見えますが、いつもこんな感じなので」

――午前中の展開はどうですか。
「佐藤六段の方がいい感じで進めていると思います。まだ、これからですが」

――やねうら王の初手はどうなんですか?
「佐藤六段自身は、練習対局でやねうら王は最初に変な手を指してくることはわかっているので、特に気にしていないと思います。むしろ今の感じは悪くないと思いますが」

――穴熊対銀冠の戦いでしないかといわれてましたが?
「Ponanzaの開発者・山本氏がコンピューター側はこのまま銀冠にいくのではないかと。玉が硬いと千日手模様になることもあるのではないか。今日は長いですねぇ。夕方ぐらいから駒がぶつかる感じではないでしょうか。控え室でも本格的な検討はやっていない」

――磯崎さんも表情が険しいですよね。
「磯崎さんは将棋も強いので、現在の形勢がわかるんだと思います。なのでやねうら王があまり良くないと思ってちょっと心配されているのかと」

 控室には開発者の山本氏や一丸氏、竹内氏、そして瀧澤コンピューター将棋協会会長の姿も。午後になっても、本格的な検討には入らず、第一局よりもゆるやかに進んでいった。この頃は穏やかな空気が流れていた。

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↑控室にある現場レポート用のセット。今回は別室も用意されていてSSFのメンバーはそちらに。なのでこの時間の控室はそんなに多くはなかった。

 控室にいた習甦の開発者・竹内氏が、現地レポートに登場。

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――対局から一週間経ちましたが。
「なんというかあっという間の一週間で、菅井五段とあのあとに感想戦みたいなことをしたのですが、できすぎの将棋でした。習甦の特徴は盤面の効きを重視して戦うので、前回のような中央に厚みを築いて戦うというのは理想的な展開でしたね」

――場所が有明コロシアムでしたがいかがでしたか?
「私は、そんなでもないですが、菅井五段のほうはハチとかトイレが遠かったりしたので大変だったのではないか」

――現在の形勢はどうですか?
「私はあまり将棋が強くないのでなんとも言えませんが、コンピューター同士の戦いだと、穴熊に組んだほうが強いですね。習甦も居飛車穴熊は比較的好きでよくやります」

――第一局の戦いで中飛車は予想していましたか?
「十分予想していました。あとは、石田流三間飛車とか角交換振り飛車も考えていました」

――穴熊に組む考えなかったのか?
「乱数と評価関数によって選ぶ形になるので、形によっては穴熊になると思います。菅井五段によると、何度か練習対局して、その都度少しずつ違う形になったとおっしゃっていました」

――竹内さんの棋力はどのくらいなんですか?
「最近将棋を指さないのでわからないですが、10年ぐらい前だとアマ2段でした」

――今後どの辺を強化していきたいのですか?
「私の棋力では理解不能な域に来ているので、局面による評価関数の強化をしていきたい」

 現在の局面についてというより、前回の戦いの話がほとんどでした。

 14時半ぐらいにポケモン竜王戦会場から中継が入る。森内俊之竜王・名人が登場だ。

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――第一局の戦いはいかがでしたか?
「結果を見させてもらいましたが、本格的な戦いで、菅井五段得意の振り飛車で戦っていたのですが、習甦が完勝ということで、コンピューターの強さを改めて感じた一戦でした」

――第二局はどうでしょうか。
「かなり時間がたっていますが、静かな立ち上がりで、これから戦いが始まるのかなという感じです」

――昨年の電王戦タッグマッチで解説されていましたが、コンピューターの指す将棋は特徴がありますか?
「そうですね、コンピューターもソフトによって指し手は少し違うと思いますが、人間では気がつかない盲点のような手を指してきますので参考になります。これからますますプロの将棋界においても、コンピューターの役割や使い方は大切になってくるのではないか」

 森内竜王・名人はコンピューターの役割をしっかり心得ているかのよう。実際、コンピューターが指した手を実践で活用し、勝ちに結びつけている。

 おやつが出されたころの15時9分に、長考の末38手目△8六歩と、とうとう駒があたった。やねうら王はあまり時間を使わず、▲同角と取った。六本木のニコファーレで解説している飯島七段は、おぉぉと唸る。控室もちょっと慌ただしくなった。残り時間は佐藤六段が2時間18分。やねうら王が3時間13分。かなり持ち時間に開きが。

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↑ツツカナの読み手を見ながら検討している。

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↑おやつはおはぎを選んだ佐藤六段。現地レポートには塚田九段とSSFのメンバーが登場し試食タイム。

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↑塚田九段がおはぎをパクリ。私も食べましたが、ほどよい甘さがおいしかったです。

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↑藤田女流初段がシャッター音の凄さにおののいていた(笑)。この一瞬を撮るためなんで許してください。

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↑SSFのメンバー3人が登場。左から伊藤慎吾五段、アナウンサーの堀越美穂氏、ポーカー世界王者の木原直哉氏。

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↑モデルとして活動している村上景子さんが今回のスイーツを紹介。着物姿で気合が入ってます。

 SSFは来た人が自動的に会員になるシステムで、100人は超えるそう。飲み会や旅行なども行なっていて、友達が友達を呼ぶ感じだそうだ。一度入ったら抜けられないとも。

伊藤五段
「佐藤六段は基本的に真面目な方で、いろいろと盛り上げてくれる。対局中は全く人格が変わる。今日の印象は普段通り盤面に集中している」

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 16時ぐらいの時点での評価値は、佐藤六段が100前後を示していた。その状態が17時ぐらいまで続く。

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 17時前に、佐藤六段が電王手くん動作中に頭を前に出してしまい、緊急停止。しばらくして、元の位置に戻った。デンソーウェーブの人たちは、一瞬焦ったのではないだろうか。盤面に集中していると、センサーのことは忘れてしまうのだろう。

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↑夕食のサンドウィッチとおにぎりのセット。

 17時に夕食休憩に入るが、佐藤六段はそのまま盤面に向かっている。手番は佐藤六段。この30分を有効活用して、持ち時間の節約をしたいところだ。10分後に席を立って食事をとっている。この時点で評価値は、後手佐藤六段の130となっている。

 休憩中に豊島七段が現地レポートに登場。

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――今日ここまでの戦いはいかがですか?
 コンピューターが一番力を発揮する戦型になったので、佐藤六段も男らしいなぁと思います。現在は難解な局面。良くなる手がありそうですが、わからない。佐藤六段のほうが少しいいと思います。ただ、▲6四歩の場面は△同銀と銀で取るほうが良かったですね。

――来週に向けていかがですか?
 毎日のように研究しています。何局やったか数えられないぐらい。序盤でやめることもある。YSSの場合、1時間でも5時間でもあまり変わらないので、1時間でやるケースが多い。

――あべのハルカスは行きましたか?
 見に行くシーンがPVで流れるかと思います。

――来週に向けて意気込みを。
 勝負にこだわって、少しでも勝つ確率をあげるよう頑張りたい。

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 夕食休憩後、53手目の▲6五歩に対して△同歩と歩を取った一手が、評価値をマイナスに。ツツカナは△4五歩が最善手と読んでいた。その後△6四歩、▲8三飛と進んで評価値は、佐藤六段の-363へと一気に沈んだ。この手に対して、木村八段は疑問手ではないかと指摘。
 検討室にあるツツカナは、続く57手目を▲7三歩成りを読む。やねうら王は同じ手を指した。ここで佐藤六段は、メガネを掛けた。

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↑一丸氏持参のPCでツツカナを動作。現局面を読ませて次の一手を探っている。

 現地レポートには、アマチュア最強とも呼ばれている細川大市郎氏が登場。ニコファーレで聞き手の安食女流初段の旦那さん。

将棋電王戦第二局レポート
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↑映像の中でだが、最初で最後の共演? と言ってました。

 69手目の△6四角を控え室の検討マシンGPSとツツカナは、読まなかった。この手を指したとたん、やねうら王側の評価値が一気に下がり238に。19時過ぎ、佐藤六段の持ち時間は30分を切った。

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↑上がツツカナ、下がPonanza。ほかにGPSでも読ませていた。意外と次の一手は違ったりすることも。

将棋電王戦第二局レポート

↑現地レポートで永瀬拓矢六段が登場。やねうら王がミスをしたため、控え室の雰囲気が一気に明るくなっていた。

 しかし、佐藤六段が秒読みとなり読み切れず、残念ながら20時26分に投了した。

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↑投了後の佐藤六段。しばらく天を仰いでいた。

終局直後のインタビュー

佐藤六段
――本局の流れはどう感じていましたか?

「相手が強いから負けたという将棋をしなければならなかったのですが、私が弱いから負けたという将棋になってしまい、残念です」

――悔いが残るのは?
「51手目▲6四歩のところを△同銀だったかなと。歩をたらされるのをうっかりしていたので。そういうミスをして負けるのが」

――その後は難しかったですか?
「指せると見ていたのですが、正解を見つけられなかったですね。(コンピューターが)粘り強いので。仕留められなかったです」

――やねうら王の特徴は?
「受けが強いと思う。コンピューター全般に思いますが。やねうら王は序盤がうまいと思います。今回はオーソドックスな定跡系でしたが」

――初手はびっくりしませんでしたか?
「初手はいろいろランダムに入っていて、ただ▲1六歩は率が低いので。あるとは思っていたのでびっくりはしませんでした」

――戦前の読みではいかがでしたか?
「今日は五分五分だと思っていました」

――人間側が連敗になってしまいましたが。
「やっぱり応援してくれる方が多いと思うので、期待に応えられず残念でした」

――豊島七段に対してなにかありますか?
「力を発揮してくれれば大丈夫だと思います。本局はホントにプロが弱いというより、私が弱いという将棋になってしまったので、プロと将棋ソフトの力を測るにはちょっと残念な将棋だったと思います」

将棋電王戦第二局レポート

続いて磯崎氏へのインタビュー

――今日のやねうら王の指し手はいかがでしたか?
「9手目までは定跡の指し手だった。それ以降は(ソフトに収録されている)定跡にはないですし、局中学習によって一度指した局面に関しては学習するのですが、そのデータベースにも載っていないということで、練習対局でもやったことがない、ガチンコの対決だったと思います。初手からの▲1六歩、▲7六歩が出る確率は非常に低いので、練習では体験していなかったのでは。オーソドックスな形だったので、プロ棋士なら類似系として経験されているかと。そういう意味で序盤としては損だと思いました。それでもほぼ五分で進められたのでひどくはないかと。やねうら王には、角香交換などひどい定跡も入っているで、それが出てこなかったのは幸い。その後、桂馬を成り捨てた局面が、成り立っているか判断がつかなかった。
 中盤は、佐藤六段が見落とした局面では、やねうら王がよしと判断していたみたいですが、その後の(69手目の6四歩打ちに対して)角で取った局面がどうもやねうら王が見落としたようで、▲3一角成りが成立すると思っていたようでした。なので、評価値が700ぐらいあったものが0になってしまいました。
 ですので80手目までは五分で推移していて珍しい将棋だと思います。82手目△8四角と出たところで、こちらに傾きました。やねうら王は△6四角と読んでいて、こちらだとまだ五分だった。
 コンピューター同士の対局をいろいろとやっていますが、後半までほぼ五分に推移したことはあまりない。そういう意味ではすごい熱戦ではなかろうか」

――中盤は耐久力がありましたが。
「やねうら王は結構トン死筋が結構多くて、詰みをあまり読めなくて。今回もトン死筋があったようなので、この辺りが今後の課題かと思います」

――今回改訂問題がありましたが。
「いろいろと騒動を起こしてしまって申し訳なかったです」

――この結果はどうでしたか。
「勝ち負けではなく、対局できなくなってしまうことを恐れていたので、最後まで出来たので満足です」

――佐藤六段はいかがでしたか?
「たぶん練習対局では、勝ち越していると思います。ただ、こういう注目された一番で負けてしまうと、その一回だけでファンのかたは一事が万事に捉えてしまうので、佐藤六段には申し訳ないと思います」

――ソフト側が2連勝ですが。
「アンチソフト戦略として、たとえば入玉はコンピューター側が弱いので、露骨に狙えばもっと勝率は上がると思いますが、それはプロとしてのプライドが許さないと思います。そんなことしなくても、まだ五分で勝てると思います」

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↑終局後のやねうら王の画面。評価値の山が2つできているのがわかる。一度ほぼ五分まで戻したのだが佐藤六段に時間が足りなかった。

終局後の記者会見

『やねうら王』開発者・磯崎氏

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「勝利した実感はまだ湧いていなくて、とにかく無事終わったんだなという安堵の気持ちでいっぱいです。やねうら王にはバクがありまして、対局中に止まるんじゃないかと心配して、当日まで寝ていてもフリーズする夢を見ては、汗だくになって目が覚めるということがありました。これでそんな悪夢から開放されるかと思うと、やっと熟睡できるかなと。やねうら王は弱点はいろいろとありまして、佐藤六段もハマりパターンを見つけたかもしれません。しかし、そんなハマりパターンに持って行くことなく、正面から堂々と向かっていただき、最後まで指させていただいたことに感謝の気持でいっぱいです」

佐藤六段

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「残念な結果になってしまい、たくさん応援していただいたと思いますが、期待に応えられず、ホントに残念だと思いました。プロ棋士が弱いというより、私が弱いという将棋になってしまったのが、心残りですね。将棋には、今日は全力で望めましたし、精神的にも体調的にも万全で望めたので、しかたがないことかなと思います」

立会人・有野七段

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「これからあと3戦残っていますが、正直言いますと、私の予想だと人間のほうが強いと思っていましたので、コンピューターってこんなに強いんだと改めて思い知らされました。それでも、佐藤六段のほうが押していたと思います。ただ、コンピューターはそう思ってはいなかった。佐藤六段のほうが圧倒的優位だと思い込んでいたので勝つと思っていましたが、コンピューターが粘り強いということですね。一瞬のミスを突いてくる鋭さといいますか。良くなったら震えてくれないし。53手目▲6五歩に△4五歩と突き返してしまえば、かなり優勢だったようだけれど、佐藤六段はその手が見えなかったようで。佐藤六段が間違えたとき、これだけはっきり結果を残すコンピューターは、強いと思いました。できればあと三局は、がんばっていただき、プロは強いというところを見せてもらいたい」

日本将棋連盟・片上理事

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「夜遅くまでご覧頂きありがとうございます。またドワンゴさんには、素晴らしい対局場を用意していただきありがとうございました。本局に関しまして、佐藤六段はあまり言われたくないかもしれませんが、私もいろいろとあり責任を感じております。平常心で戦うのはなかなか難しいという人間と、なにやらわからないですが、開発者の方も思い残しのあるソフトの対戦となりましたが、観ている方には全くそんなことには見えなかったかと思います。第一局に続きまして、実力が存分に出た、いい将棋だったかと思います。将棋のことを言いますと、57手目▲7三歩成りと成り捨てた手がありました。これが人間には気が付きにくい妙手でした。その後、見応えのある熱戦が続き、人間が全力を出せば素晴らしい将棋になる、そんなレベルにコンピューターがあります。見る人をハラハラ・ドキドキさせるような展開になると、どうも最後少し足りないという結果になってしまうようです。昨年の船江六段の戦いもそうでした。今後も全力を出し切って悔いのない戦ってほしいと思います。みなさんにも将棋にご注目いただきたい」

第三局対局者・豊島七段

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「電王戦に立候補したとき、練習や本番でコンピューターと対局することで、自分の力が上がればと思いました。これまで、練習を積んできまして、自分の力が強くなったとは言えませんが、自分の将棋が少しずついい方向に向かってきていると実感しています。最近は公式戦でも調子がいいと感じています。電王戦に出た目的は達成できたと思いますが、大きな舞台でたくさんの方に応援していだだいていますし、連敗している状況なので、勝負にこだわっていい将棋がさせるように頑張っていきたいと思います」

続いて質疑応答が行なわれた。

――運営側からとしてこの1週間の経緯を。
片上理事

「水曜日に会見しましたので、そちらをご覧いただきたい。3月15日土曜日にやねうら王の改変の問題で、新しいソフトで対戦したほうがいいのではと決定し、発表しました。水曜日に将棋ファンの声を受けてという形になりますが、発表を撤回し、元に戻した状態で対戦することになりました。佐藤六段には、苦しくて辛い状況でも対局するとおっしゃってくれたので、今回の対戦となりました。今日使ったソフトは、電王戦出場を決め、佐藤六段に貸し出し自宅で練習対局を行なったものになります」

――今日はいつものパフォーマンスは封印してということだったんですか?
佐藤六段

「そうですね。ちょっと色々あったりもして、気分的にもそういう感じではなかったので。ただ、いろいろ言ってみたものの、本番ではやる余裕はなかったので、あまり変わらなかったと思います」

――やねうら王はどういった特徴があるのか?
磯崎氏

「局後学習という今までの将棋ソフトにはない機能が特徴です。局後学習とは、一局を振り返って、もっと深い読みでじっくり時間を掛けて読みなおすというもの。その結果、序盤で横歩取りなどを長い時間掛けて読ませると、今まで出てこなかった手が結構あるものだということがわかり、今後局後学習によって編み出された手を、プロの実践で現われることもあるのかなと思います。局後学習によって生まれた定跡がプロの世界でも使われていく、その魁となるソフトだと思います」

――何局ぐらい事前に対局しましたか?
佐藤六段

「40局ぐらいです。持ち時間は1時間です。最初来たとき5時間で2局対戦し、1勝1敗でした。決着は本番でつけようなんて思っていました」

――局後学習がうりだそうですが、練習で指してそれを感じたか。
佐藤六段

「同じ形になることはあまりなく、そんなに関係はなかった。2局同じ形で指すと、ノータイムで指したりしたので、これが局後学習の効果なのかなと思いました」

――序盤は挑発的な指し手に対し、穏便に指していましたが。
佐藤六段

「そんなに挑発的とは思っていませんでしたし、そんなにおかしな手ではなかったです。序盤から考えて、今日は穏便にいこうかなとと思いました」

――作戦は立てたのか。
佐藤六段

「後手番なので、相手の手に対応する事を考えました。あまりコンピューターということを意識せず、人間と指していると思って指すようにしました」

――水曜日にソフトが元に戻ったことに対しては?
佐藤六段

「そんなに驚きはなかったです」

――この舞台はいかがでしたか。
佐藤六段

「ほんとに感謝します。二度とここで指すことはないと思いますし。上を見ると、大相撲の優勝額が飾ってありますが、白鵬ばっかりで白鵬はスゴイなと思いました」

――今回の結果に対して、ご自身の弱さというのは、以前から感じていたのか。
「もともと弱いのはじゅうじゅう承知はしていますが、今日の展開はプロ棋士なら勝てる展開かなと思いました。それがどんなソフトかは関係なく。プロなら勝たなければならないと思っています」

――今回のソフトは練習対局の結果が反映されたものでしょうか?
磯崎氏

「佐藤六段へ貸し出したマシンを、そのまま会場に持ってきていますので、学習して蓄積されたものをそのまま使っています。ですので、練習対局した11月下旬ぐらいから3月頭まで対局したものが反映されています。学習した結果は即指しするようなことがあります」

将棋電王戦第二局

 これで、対戦成績はコンピューターの2勝ということになり、プロ棋士側はあとがなくなった。今回の対局は、事前のゴタゴタはあったものの、内容的にはおもしろかったと思う。最終的にはやねうら王に押し切られてしまったが、やねうら王が終盤の読み違いで控室が大いにわいたし、ある意味人間らしいと感じた一瞬であった。
 磯崎氏を含め、開発者の人たちは、心のなかではプロ棋士に勝ってほしいと思っているところも、この電王戦を魅力ある戦いにしているのではないかと思う。もちろん、自分のソフトは勝ってほしいと思っているだろうが、プロ棋士との対局に恥じないアツい対局を第一に考えていて、勝負は二の次的なのである。
 プロ棋士側も、ソフトの弱点を見つけ出して勝つという方向から、対人間であるかのような真っ向勝負をかけてきている方向へと変わってきている。“勝つ”という情熱が、逆にふだん以上に時間を使ったりして本来の力を発揮できていない感じもする。対人間より“ミスしたら終わり”というプレッシャーからかもしれない。残り3戦あるが、プロ棋士のスゴさを視聴者に見せつけてほしい。

 第三局は今週末29日土曜日に、大阪天王寺に新しくオープンしたあべのハルカスの40階で行なわれる。豊島七段vs.YSSの戦いを見逃すな!!

●関連サイト
『GALLERIA 電王戦』モデル
日本将棋連盟
第3回将棋電王戦のページ
将棋電王トーナメント

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