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ソニーも流れに沿う スポーツ利用で一般化するセンサー系ウェアラブル by 本田雅一

2014年01月23日 22時30分更新

 今年はウェアラブル元年と言えるほど、多くのウェアラブル機器が市場に投入されるとみられている。『Google Glass』など視覚的なユーザーインターフェイスを拡張する取り組みもあるが、もっとも活況を呈しているのがセンサー系のウェアラブル機器。活動量、心拍、体温などを計測しておき、スマートフォンやクラウドを通じ、ヘルスケアやライフスタイルの向上に役立てようというわけだ。

 こうしたセンサー系ウェアラブル機器は、少なからず以前からも存在していたが、超小型で高精度のセンサーを作るMEMS技術の発達、スマートフォンの普及、クラウドの一般化などが、ウェアラブル機器の爆発的増加の背景にある。2014年1月に開催された“International CES 2014”では、センサー系ウェアラブル機器のメーカーだけでも300社を数えた。

センサー系ウェアラブル

 このようにセンサー系ウェアラブル機器が流行している背景をとらえるならば、ソニーが1月20日に発表した『Smart Tennis Sensor』も、一連の流れに沿った製品であることがわかる。この製品は内蔵するGセンサー、ジャイロスコープ、音響モニターなどのセンサーを用い、ラケットの動きやボールインパクトの情報を蓄積、あるいはBluetoothでスマートフォンやタブレットに即時転送させる。そして、そのデータを専用アプリで分析することで、各ショットのデータを分析する。

 実はこの製品とよく似たコンセプトですでに商品化されているラケットがある。仏バボラが開発した『Pure Drive Play Connect』だ。日本では未発売だが、基本的な仕掛けはまったく同じ。実は筆者自身が愛用しているが、スキルアップの自己診断などに有益なデータを得られており、非常に満足している。

センサー系ウェアラブル

 センサー系ウェアラブル機器の本質がアプリやクラウドの出来に依存しているように、その派生製品ともいえるテニスラケット用センサーも、製品の良し悪しはアプリで大きく異なる。ソニーの製品詳細についてチェックしてみた。センサーで検出できる項目はほとんど同じか、ややソニーの方が優勢という印象だが、機能や使いやすさの面では圧倒的な差がある。

 ソニーのSmart Tennis Sensorは、スマートフォンのアプリで動画撮影しながらプレイデータを記録でき、ショットの分析データとビデオ記録を突き合わせながらプレイを振り返ることができる。対するバボラのPlay Connectはショットの統計データを閲覧できるだけ。同じように新しいセンサー技術、分析技術を使いながらも、情報を見せる切り口や応用方法などで、その商品性が大きく変化するという好例だろう。

センサー系ウェアラブル

 もっとも、アプリとサービスを改善していけば、同じセンサーでも機能や応用範囲を広げていけるのも、こうした製品の良いところだ。ソニーの製品は5月下旬、当初はヨネックス製ラケットのみへの対応で発売とのことだが、バボラ、そして他社の参戦にも期待したいところだ。

 スポーツへのウェアラブル機器の応用は、まだまだこれから広がるはずだ。すでにチーム競技などでは、トレーニング用や選手のコンディション、あるいは戦術分析のために幅広く使われている。たとえばサッカー向けには心拍計、GPS、シューズ用の加速度計などを用いたコーチ向けシステムをアディダスが提供している。アディダスは心拍計を内蔵したGPS付スポーツウォッチ『Smart Run』も2013年末に発売した。

センサー系ウェアラブル

 将来はセンサーを複数併用することで、さらに複合的なトレーニングのアドバイスを行う人工知能コーチサービスへと発展させることもできるだろう。たとえば上記のテニスラケット用センサーに、シューズ内蔵加速度センサーの情報を時間マッチングさせれば、フットワークとショットの質に関する相関データを導ける。

 センサー系ウェアラブル機器というと、大まかな活動量を元にした、おおざっぱなゲーミフィケーションアプリで、その底は浅いものだと想像しているかもしれない。もちろん、そういった分野も今後発展していくだろうが、一方でスポーツへの応用もさらに本格化し、多様な競技への応用が検討されていくはずだ。

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