コアゲーマー御用達ブランドとして必ず名前が挙がる老舗のSteelSeries。数多のプロゲーマーをサポートしながら精力的に新製品を発売しているため、店頭で見かけたり名前を聞いたことがある読者も少なくないだろう。そんなSteelSeriesの最高技術責任者であるティノ・ソルバーグ氏が来日中ということで、さっそくアポイントメントを取り新製品である2つのヘッドセットについて根掘り葉掘り聞いてきました!
SteelSeries最高技術責任者 ティノ・ソルバーグ(Tino Soelberg) 氏
BRZRK 本日はよろしくお願いいたします。早速SteelSeriesの新ヘッドセット『SIBERIA ELITE』について教えていただけますか?
SIBERIA ELITE
●SteelSeries(関連サイト)
実売価格 2万3000円前後
ソルバーグ氏 今回発売した『SIBERIA ELITE』ですけれども、今までリリースした製品とは大きく差別化した、「これぞ!」という製品をつくろうとリデザインしました。LEDイルミネーションはマイクをミュートしているかどうかが発光の有無で判断できるようになったりしています。1680万色のなかから、常灯・明滅・カラーシフトといった3つの発光パターンを設定可能です。
好評のヘッドバンドも、プラスチック製から新たにビーズメタルで仕上げたステンレス製のものを採用し、サスペンションヘッドバンドも調整し直しました。クッションは長時間の使用を想定し、快適性を考慮してブ厚いものになり、ヘッドホンの外と中の雑音を遮断するようにしました。
いちばんの変更点ですが、今まではケーブルの途中に調整用のボックスが取り付けられていましたが、イヤーカップに取り付けられたダイヤルを回すことで、音量調節とマイクのオン・オフを切り替えられるようになりました。
サウンドについては、新たに50mmのサウンドドライバーを搭載することで、我々が意図した完璧な音の仕上がりとなっています。Dolby Pro Logic IIxも動作しますので7.1chサラウンドで動作させることが可能です。技術面としましてはUSBサウンドカードも再設計しました。また、DSP駆動のアクティブノイズキャンセルを搭載し、メカニカルなマイクよりも自分の声がクリアに伝わるようにしています。
これらの機能は、『SteelSeries Engine 3』というソフトウェアで制御しています。このソフトウェアは軽量でCPUやメモリのリソースに影響を与えることがないよう設計していますが、パワフルなソフトウェアとなっています。
ただ、コネクターはDolbyに対応してLEDイルミネーションも制御しようとするとUSB接続しか選択肢はありませんでした。とはいえ、ゲーマーといえどもゲーム用途以外にヘッドセットを使うということもあるでしょう。そこで、タブレットや携帯ゲーム機に対応したコネクターも提供しています。もちろん、音量調節機能なども問題なく使用可能となっていますよ。
BRZRK イヤーカップの厚みが増しているようにも見えますが、より長時間の使用にも耐えられるようにしているのでしょうか?
ソルバーグ氏 もちろん、快適性というのもありますが、ノイズを遮断するという目的のためにこうなっています。触るとご理解いただけると思いますが、クッションの厚み自体はSIBERIA V2と同じです。
BRZRK なるほど。ダイヤルに関してなのですが、利便性を突き詰めた結果この形に行き着いたのだと思います。他社もまだ考えていないくらい先取りな仕様だと思いますが、どれくらい前からこの構想はあったのでしょうか?
ソルバーグ氏 ゲーム用のヘッドセットを次の次元に押し上げようと考えていましたので、コードをどうこうするといった小手先だけではダメだろうと思っていました。開発には1年ほどかかりましたが、内部での話し合いやデザイン会議で今までにないことをしようと頑張りました。
BRZRK 私が過去に使用したヘッドセットは、ケーブルの途中に音量調整やマイクのミュートを操作する小さなボックスが付いていたのですが、正直なところ邪魔だったんですよね。ですが、今回のSIBERIA ELITEではイヤーカップのダイヤル式になったのが本当に嬉しい仕様ですね。服にひっかかったり、ムダに重くなくて済みますし。
ソルバーグ氏 ありがとう。私達は2週間に1度の間隔でスポンサードをしているプロゲーマーたちと話し合いの場を設けています。彼らは非常にコンサバで、自分に必要なのはコレと言って聞かないことが多いんですよね。なので、彼らに新しいものを見せて納得させるのは大変な作業となるのですが、それができるだけの製品になったのかなとは思います。
BRZRK プロゲーマーが納得できる製品をつくるには、それだけの根気と覚悟が必要なんですね……。
ソルバーグ氏 では、次の製品である『H WIRELESS』についてご説明させてください。この製品はホーム・エンターテイメントを前提とした製品です。こちらはトランスミッターボックスなのですが、テレビや家庭用ゲーム機の横に置くことを想定してこのようなデザインになっています。
ソルバーグ氏 ヘッドセットはご覧のように美麗な仕上がりとなっていますが、トランスミッターボックスもOLEDによるディスプレーを採用しています。ワイヤレスヘッドセットで問題となるのが遅延です。トリガーを引いた瞬間に射撃音がしなければならないということで、2.4GHzの無線を使用し、レイテンシーは一定で16msとなっています。
BRZRK 他社のヘッドセットだったりすると、明らかに描画された画面より遅れて音が出たりしますよね。あれはFPSだと特に致命的で、敵の足音が聞こえた!と思ったらすでに倒されているとか。FPSは見えない情報を音で補っている部分が多いですし。ですが、これなら問題なく扱えそうですね。
ソルバーグ氏 仰るとおりです。なぜこれまでPC対応の製品をリリースしなかったのかといいますと、音質やレイテンシーが悪かったということがあります。ですが、長い時間をかけて研究した結果、ようやく私達が求めていた技術が出来てきたということで今回発売しました。
基本的に30msのレイテンシーであれば、FPSでも問題なくプレイできると考えていますが、それよりも速い16msなので問題はないでしょう。また、常にレイテンシーが一定であるという点も大事でしょうね。音質に関しても圧縮を行なわずRAWデータを送信しているのが大きな違いです。圧縮をかけた場合は確かに情報のやりとりが速くなりますが、迫力のある音が潰されてしまいますからね。
効率的なコーデックを実装したことにより、30ms毎に周波数を切り替えるチャンネルホッピングを行なっています。Bluetoothの場合は、何かに干渉するとチャンネルを切り替える仕組みなのですが、本製品では自動で行ないます。
そのほか、SIBERIA ELITEと同様にDolby Pro Logic IIxにも対応しています。また、ゲームで使用する場合に仲間同士で会話をしているときに、爆発音などで声がかき消されないように自動で音量を調整するライブミックス機能も搭載しています。
BRZRK 特にFPS系のタイトルでは重要になる機能ですね。作戦がいき渡らなくなると大惨事ですし。
ソルバーグ氏 仰るとおりです。ちなみに、25段階で異なる調整を行なってくれるように設定されていますので、安心してチームプレイが可能ですよ。
BRZRK 便利な世の中になりましたねぇ。
ソルバーグ氏 本製品はマルチプラットフォームでの使用を前提としていますので、Xbox 360やプレイステーション3、もちろん次世代機であるPS4だけでなく、PCやMacでも使用できます。
ソルバーグ氏 また、ワイヤレス仕様のヘッドセットということもあり、トランスミッターボックスを触らずともプロファイルや設定を切り替えられるようにしました。操作方法はいたってカンタンで、イヤーカップにあるダイヤルを回すだけです。
ソルバーグ氏 そしてバッテリーですが、リチウムイオンバッテリーをイヤーカップ内にひとつ取り付けることができます。そして、2つ目のバッテリーはトランスミッターボックスの側面にある穴に差し込むことで、常時充電状態で待機させられます。つまり、バッテリーが切れたら満充電まで待たずに継続して利用可能な仕様にしました。
BRZRK ちなみに、無線の有効範囲はどれくらいでしょうか?
ソルバーグ氏 12メートルですね。ただ、壁などに遮られた場合はもちろん短くなってしまいますが。
BRZRK 日本の住宅事情を考えた場合は十分すぎるかもしれませんが(笑)
ソルバーグ氏 うーん、確かにそうかもしれません(笑)
BRZRK 至れり尽くせりといった仕様になっていますね。まだ未発売となっていますが、ちなみに今後の予定は?
ソルバーグ氏 こちらは来年の早い時期にヨーロッパでのリリースを控えています。現在は、限られた海外のメディア向けに触っていただいておりますが、ゲーム専門誌やPCとMacの専門誌から非常に良い評価を頂きました。普段は厳しめの評価を出しているようなところでも好感触だったので、自信を持っていますね。
BRZRK 来年を楽しみにさせていただきます。本日はありがとうございました。
ソルバーグ氏 こちらこそアリガトウ。
ということで、SteelSeriesとしてはこれまでSIBERIAのカラーバリエーションを変更することで多数のモデルを発売していたのだが、新たに設計を見直したSIBERIA ELITEと、ワイヤレスヘッドセットのH WIRELESSが登場する。どちらもマルチプラットフォームを前提として作成されており、ゲーム用途以外でも使用可能なので、注目してみてはいかがだろうか?
BRZRK(バーサーク)
“FPS界の伝道師”、“鬼軍曹”、“3度のメシよりFPS(二郎系ラーメンを除く)”など様々な呼び名をもつゲームライター。『Counter-Strike』や『Quake』の海外大会に参戦した経験をもち、現在ではゲームイベントの実況解説などもつとめる。
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