ファッション感覚で着用するオシャレ眼鏡もいいですが、今回は昨今注目の「機能性アイウェア」のお話。12月10日に株式会社ジェイアイエヌ(JINSブランドを擁する会社)が発表した「JINS Moisture」は、眼の保湿用メガネ。いわゆる「ドライアイ」を予防・改善すべく開発された製品です。
今回、新しいJINS Moistureの発表に際してメディア向けのセミナーが開催されたので、参加してきました。製品についての詳細は後述するとして、まずは現代人が抱えている「眼」の問題について見て行きたいと思います。
ドライアイとは何か
そもそもドライアイとは何かというと、文字通り「眼の乾燥」なわけですが、これには医学的な定義があります。それは、「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」というもの。単純に「なんか眼が乾いて不快だなー」というだけでなく、視機能の異常をもたらすれっきとした病気なんです。
慶應義塾大学の医学部眼科学教室教授であり、ドライアイ研究会の代表でもある坪田一男教授は、ドライアイがもたらす視機能の異常について「実用視力」という概念を提唱しておられます。通常の視力検査では、「C」の字(ランドルト環)の開いている方向を見極めますよね。しかし、通常視力が1.5ある人でも、ドライアイの症状があるとこの視力を長時間維持するのが難しいそうのです。
視力が持続しない=実用視力が低い
通常の視力検査で測る視力というのは、風速でいえば「最大瞬間風速」に相当するものです。つまり、Cの字に一瞬だけピントが合えば出る数値。これに対し、実用視力は「平均風速」に当たります。つまり、視力をどれだけキープできるかどうか。
坪田教授の研究によると、ドライアイでない人は長時間にわたって一定の範囲内で視力をキープできるのに対し、ドライアイの人は時間が経つにつれて視力が次第に低下していく傾向があるそうです。パソコンの画面を見続けていたり、長時間読書をしていたりすると、眼がかすんだり焦点がぼやけたりすることってないですか?
もちろんこれは、大なり小なり誰にでも起こり得る現象なのですが、ドライアイだとその症状が深刻になります。具体的には、通常の検査視力が1.0あっても、ドライアイの人は実用視力(=長時間にわたる平均的な視力)が0.6を切るといったケースがあるそうです。こうなると、眼を使う仕事の効率が下がるのはもちろん、クルマの運転などでは危険な状況を招く可能性も出てきます。
ドライアイはなぜ起こる?
では、ドライアイは何が原因で起こるのでしょうか。エアコンの風などによる空気の乾燥といった理由もありますが、現代における最大の要因は、やはり「パソコン画面の見過ぎ」だそうです。ご承知の通り現代人の目は、パソコンに限らずスマホやタブレット、大画面のテレビなどによる光の洪水に溺れているような状況下にあります。
しかも、仕事などに熱中すると私たちは瞬きの回数が減ります。自然な状態だと人は1分間に20回前後の瞬きをするのですが、パソコンでの作業を続けているとそれが6回くらいにまで減るのだとか。人の眼の表面は涙液(なみだ)によって覆われているのですが、瞬きが減ることで眼を覆う涙液が減ります。すると眼の表面の涙液が不均一になり、極端に言えば眼の表面が凸凹したような状態になってしまうのです。
ほら、カメラのオートフォーカスがうまく機能しない撮影シーンってありますよね。光を反射する被写体とかコントラスト差が少ない被写体とか。なんとかピントを合わせようとカメラがウィンウィンと四苦八苦するあの状態。
眼の表面はいわばカメラのレンズですから、表面が不均一になることで似たようなピント調節の不具合が生じます。眼のピント調節は「毛様体筋」という筋肉が伸び縮みして行うわけですが、スッとピントが合わせられなとその筋肉が疲れてしまうのです。
ドライアイがなかなか治らない理由
さらに、一度ドライアイになってしまうとさらに眼が乾きやすくなり、瞬きをしても眼の表面の涙液がすぐに不均一になってしまうという問題も生じます。通常は、瞬きをしてから8秒間程度、眼の表面が涙液に均一に覆われた状態を保てます。ところがドライアイがひどくなると、これが3秒程度しか保てなくなるそうです。瞬きの回数が減る上に、1回あたりの瞬きの効果も下がるという、悪循環に陥ってしまうわけですね。
また、最近話題の「ブルーライト」もドライアイのリスク要因だと坪田教授は言います。パソコンなどのモニターが発する光にはブルーライトが多く含まれるため、眼をより疲れやすくしてしまうそうです。
なぜブルーライトが眼によくないのか。簡単に言うと、「青い光は大気中で拡散しやすいため、眼に対して強い刺激となり、ピント調節も難しくするから」です。ブルーライトについてはこちらの記事もご参照ください。
ドライアイの改善方法
そんな厄介なドライアイを予防・改善するにはどうしたらいいでしょうか? 坪田教授によれば、次のような対策が有効だそう。
(1)パソコン作業中は意識して瞬きする
(2)目元をしっかり洗浄する
(3)パソコンの画面位置を下げる
(4)目元を蒸しタオルなどで温める
(5)保湿メガネを利用する
最もポピュラーなのは市販のドライアイ用の点眼薬(目薬)だと思いますが、それだけではなかなか治らないそうです。上記のように瞬きを意識的に増やしたり、保湿をしたりといったケアを複合的に用いることで、症状が改善しやすくなるのだとか。
そして、ようやくここで再登場となりますが、「JINS Moisture」のような保湿用メガネも、ドライアイ対策に有効なツールのひとつになります。JINS Moistureは、フレームの両サイドにあるポケットに水を入れ、そこから蒸発する水分で眼を潤すメガネです。また、周囲をゴーグルのように覆う形状になっており、より眼を乾きにくい構造になっています。
ちなみに、JINS Moisture自体は数年前から販売されている製品なのですが、本日発売された新バージョンでは、次のような点が改善されています。
(1)ウォーターポケットの容量が従来モデルの3倍に
(2)ウォーターポケットをフレームから外すことなく注水可能に
(3)ラバー製のカバーにより下を向いた際などの水漏れを解消
(4)フレームのカバー率アップ
(5)デザインの改善
──などです。もちろん、このメガネを掛ければたちまちドライアイが治るというものではありませんが、眼が乾きやすいと感じる人は、試してみてはいかがでしょうか。
ドライアイ対策の選択肢のひとつとして
実際に掛けてみた感じでは、最初は結構視界が圧迫される感じはあります。1時間以上かけていると、確かに眼が潤っているような気がします。前述のような説明をたっぷりと受けた後の着用なので、単なるプラシーボ効果という可能性も否定できませんが、少なくとも主観的には眼が楽になった感じがします。
眼が乾いて疲れると言う人は、ドライアイ対策の一環として取り入れてみる価値はあるんじゃないでしょうか。視界の圧迫感は、慣れるとさほど気にならなくなります。また、外見上もけっこうゴツめな印象のデザインなので好みが分かれるかもしれません。そういう人は、職場用などと割り切って使ってもいいと思います。
オーバルタイプ |
スクエアタイプ |
JINS Moisture
■発売日 2013年12月20日(金)
■価格 3990円
■ラインアップ スクエア/オーバル型、各8色
■オプション 追加料金2000円で度付きレンズに交換可能、追加料金8980円でJINS PCレンズに交換可能
■問い合わせ JINS(外部サイト)
ちなみに、今回のセミナーが開かれた東京・青山の南青山アイクリニック(外部サイト)では、希望すれば専用の測定器を使った「実用視力」の測定をしてもらえます。涙液の状態を見るテストもやってくれるそうです。
※まめ知識
1)JINS Moistureはゴーグルのような形状であるため、花粉症対策としても有効だそうです。完全にシャットアウトすることはできないものの、眼への花粉の侵入をある程度防げるそう。
2)コンタクトレンズもドライアイのリスク要因のひとつだそうです。ドライアイの自覚がある人は、視力矯正手段としてはコンタクトレンズよりもメガネのほうが目に優しいとのこと。
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