容量無制限のプランを持ち、PC、スマートフォンともわかりやすいユーザーインターフェースで人気の新興クラウドストレージサービス“Bitcasa”のBrian Taptich CEOが来日。国内でも存在感を見せつつあるサービスだが、老舗が大きなアドバンテージをもち、新興サービスも群雄割拠のクラウドストレージ業界の中で、今後どのような展開をしていくのか。サービスの設計思想から、今後の展開までを聞いた。
↑Brian Taptich CEO。英語の教師として1年間、日本に滞在した経歴をもつ。
――Bitcasaについて教えてください。
Bitcasaはコンシューマー向けのクラウドストレージの企業です。5年前からデータ量、デバイスの数が増え、より多くのストレージが欲しいという問題を発見しました。当時のサービスではデジタルコンテンツをクラウドで管理するのが段々難しくなってると。そこで私たちは、3つの特徴をもつサービス“Bitcasa”を開発しました。
ひとつ目はプライバシーとセキュリティーを確保したストレージです。他の多くのサービスとは異なりエンドツーエンドの暗号化を提供しています。そしてアーキテクチャの中でブロックレベルの暗号化が行なわれています。そしてキーはユーザーが所有しています。私自身でもBitcasaのストレージの中に何が保存されてるかはわからないという状態です。2つ目は非常に大容量のストレージを低価格でご提供すること。3つ目の特徴は、どこからでも容易にアクセスができる点です。たとえばファイルをアップロードするときにWindowsタブレットからアップロードして、ほかのデバイスでも利用が可能です。Android端末であっても、MACでも。これはリアルタイムでトランスコーティングが行なわれてるからです。
またほかのサービスとの違いは、創立当初から真のクラウドストレージプラットフォームを提供していることです。現在有償ユーザーは160ヵ国にわたっており、格納されてる総データ量は35ペタバイト以上です。製品がリリースしたのが今年の2月ですから、まだ8ヵ月してたっていません。日本でローンチは8月末なのでほぼ3ヵ月で、非常に大きな成功を収められました。海外の中で日本は最大の規模を占め、25パーセントが日本です。
そして4つ目を準備中です。まもなく完成しますが、日本でデータを保有するというデータセンターを実装します。日本のデータは日本に存在して管理をするという、データインフラを東京で構築中です。日本のユーザーのデータがアメリカに行ってまた日本に帰ってくるというわけではなくなります。日本にデータインフラをつくる理由は、性能の向上とプライバシー、セキュリティーの担保のためです。データが東京とサンフランシスコを行き来するときに比べるとかなりのスピードアップが望めます。ユーザーやパートナーと話すとやはりデータを日本に置いときたいということに対して関心が高いということがわかりました。アメリカにデータが置かれるのに比べて安心感があると。
↑インタビュー後の11月21日に価格改定が行なわれ、無料プランでは10GBが5GB(友人招待で最大20GB)に、年額99ドルプランは無制限から上限1TBに変更になった。無制限プランは年額999ドルで提供する。
――無制限プランがありますが、ひとりひとりのユーザーはどのくらいの容量をつかっているのでしょうか?
容量無制限プランは競合サービスに比べて、主たる差別化要因になります。ユーザーがスペース不足を心配する必要がないよう考えました。ただ実際にユーザーがスペースを無制限に必要してるかというとそうではありません。実際にユーザーに聞いたり、データを見てわかったことがあります。ユーザーがBitcasaを気に入ってる理由は、容量無制限であることが優先的ではなく、セキュリティーやプライバシーが確保されてること、モバイルのアクセスが非常に容易であること、低価格であるということです。
有償ユーザー(インタビュー時は年額99ドルの無制限プランの契約者)の99パーセントの消費容量が5TB以下、95パーセントのユーザーの消費容量が1TB以下です。無制限容量は話のタネになりますが選択の最優先事項ではありません。具体的な数は言えませんが、50TB以上使ってるユーザーもいます。おそらく、SOHOや中小企業などエンタープライズのユーザーだと考えています。
――エンタープライズ向けのサービスは考えているか?
エンタープライズ向けのサービスは2014年の第一四半期にリリース予定です。内容は確定していません。エンタープライズのコンシューマー化が進んでいます。BtoBtoC、中小企業やエンタープライズでも、コンシューマー向けに提供しているフィーチャーとまったく同じものを求めていると思っています。加えてアクセスコントロール、アプリケーションのコントロール、コラボレーションの機能などを構築中です。ただ、コンシューマーに対して提供してるものと一貫した戦略であることは間違いありません。プライバシーとセキュリティーの確保、またコスト効率の実現、そして容易にアクセスできるストレージということです。
↑インタビューでも、ほとんどのユーザーが1TBを使っていないと説明。価格の改定も無制限容量が最優先事項ではなく、あらゆるデバイスからアクセスできることが重要と説明する。
――APIの公開で期待していることは?
良い質問ですね。プラットフォームが進化するうえで、次のステップとなるのがAPIだと思っています。中小企業また大手企業の方々はアプリケーションの一部としてBitcasaを使いたいという開発者の要望を聞きます。アクセスが簡単なストレージを自社で構築したくないという考えです。APIプログラムを公開すれば、サードパーティーの開発者、デベロッパーの方々には自社で構築開発をしなくてもクラウドストレージソリューションが使えるようになります。
――Dropboxにはどう対抗する?
Dropboxは特にシンクを求めてる方には優れたサービスだと思ってます。Dropboxに対してBitcasaはまったく違ったものを提供してると考えています。たとえばDropboxは複数のデバイスで利用するとき、別のデバイスでもスペースが必要になりますが、Bitcasaは真のクラウドストレージサービスだから必要ありません。さらにプライバシーとセキュリティーを担保するエンドツーエンドの暗号化の機能、セキュアな形でデータを格納するブロックです。
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