みなさん、こんにちは。MacPeople編集部、元編集長の吉田でございます。さて、11月1日からTOHOシネマズ 日劇などで、映画『スティーブ・ジョブズ』の上映が開始されました。そこで、映画公開に合わせて来日したジョシュア・マイケル・スターン監督に、映画のこと、ジョブズのこと、アップル製品のことについて話を聞いてきました。なお、ネタバレの内容を含むため、一部の発言は抽象的な表現に編集しています。
ジョシュア・マイケル・スターン。2005年の『Neverwas』で映画監督デビュー。Apple IIからのアップルユーザーで、若いころは脚本をMacで執筆していたそうだ。 |
挨拶のあとOS X Mavericksを大特集したMacPeople 12月を手渡して本題に入ろうとすると、「おー、クレイジーだね。Mavericksでこんなに分厚い雑誌を作るなんて」と笑顔で応えてくれました。そして数分間はMavericksの話題に。Mountain Lionとはいったいどこが違うのか、根堀り葉堀り聞かれました。インタビュー中にも出てきますが、実は監督、根っからのアップルユーザーなんです。
――映画を撮影する前にステーブ・ジョブズのことをどれぐらい知っていましたか?
プレゼンがうまい人物、革新的な製品を生み出す経営者、ビジョナリーな人物というイメージがありました。
――では、Apple製品のことは?
私はApple製品をApple IIから使っています。映画業界に入ったのもApple製品のおかげかもしれません。若いころは脚本家だったのですが、Macがなければシナリオを書くのを苦労したと思います。Macなら、カット&ペーストなどで構成を変更することが容易でしたから。初期のころは一体型のMacなどを持ち運んでいましたね。
共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック(ジョシュ・ギャッド)とのやり取りにも注目 |
(c) 2013 The Jobs Film, LLC. |
――映画ではマイク・マークラが重要な役割を占めていると感じました。彼に焦点を当てた狙いを教えてください。
マイク・マークラは、ジョブズがAppleを作ったときに出資し、彼を追い出すときにも彼が復帰するときにも取締役会の一員として関わりました。そして最後には、マークラー自身がジョブズに追い出されることになります。ジョブズにとってマークラは父親的な存在であったといえます。父が子を助け、そして追い出し、再び迎え入れ、最終的には子に追い出される。この映画のメインストーリーを描くうえで、スティーブ・ウォズニアックとともに必要不可欠のキャラクターだったのです。
ストーリーを進めるうえで欠かせない存在だったマイク・マークラ(ダーモット・マローニー) |
(c) 2013 The Jobs Film, LLC. |
――主演のアシュトン・カッチャーさんについて教えてください。彼の演技をどう評価していますか?
素晴らしいのひと言です。彼のことはこれまで、コメディー映画に出ていたコメディアンとして捉えていました。しかし、この映画ではスティーブ・ジョブズと容姿を似せるだけでなく、シリアスなシーンでの感情の起伏などもうまく表現していたと思います。
主演を務めたアシュトン・カッチャー |
(c) Kaori Suzuki |
――会議室でのやり取りなど、部外者にはうかがい知れない部分は、どうやってシーンを構成されたのでしょうか。
この映画は半分は真実で半分はフィクションだと思っています。私はスティーブ・ジョブズに会ったことはありませんし、そもそもジョブズに内面については誰も真実は語れません。ジョブズの内面を描くシーンは想像するしかありませんが、客観的に考えてこういう発言をしただろうということを、ひとつずつ確かめながら撮影を進めました。
――映画の中で最も印象に残っているシーンを教えてください。
ジョブズが会議室に開発チームを集めて議論する場面です。議論がエキサイトしていき、最後にはスタッフをクビにするというシーンは、アシュトンの熱演もあり気に入っていますね。
アップル社を創業した当時の実際のガレージも撮影に使われた |
(c) 2013 The Jobs Film, LLC. |
――映画は冒頭である製品の発表会シーンがあり、最終的には別の製品がリリースされる前で物語が終わっています。一般ユーザーにとってはiPhoneが出てきたほうがわかりやすかったのでは?
実は冒頭の新製品発表会の場面は、当初の脚本では最後のシーンになっていました。しかし、製品発表会でエンディングを迎えると、革新的な製品を生み出すまでの映画という印象が強くなると思いました。当初は予定になかった、あのシーンをエンディングに挿入したのは、最後までジョブズ個人に焦点を当て続けたかったからです。
アシュトン演じるジョブズがある新製品を発表するシーンから映画が始まる |
(c) 2013 The Jobs Film, LLC. |
――iPhoneが発表されたころの話を描く予定はなかったのでしょうか?
ジョブズ率いるAppleは、ある製品の発表以降、いくつかの失敗はあったものの、iPhoneやiPadなど次々とヒット作を生み出して今日に至っています。一定の成功を収めたあとの部分を映画にしてもあまり面白くないと思いました。上映時間は2時間程度ですが、これでも当初予定していた時間よりオーバーしているんです。限られた時間でジョブズを描くなら、成功を勝ち取るまでの時期だと思いました。
――本作を取り終えたあと、ジョブズの印象は変わりましたか?
彼は、この世にない新しいものを作るためにさまざまなフラストレーションを抱えていたことがわかりました。同時に情熱があり、取り憑かれていたと思います。それはとても大切なことだと感じました。何かに執着していると周りがそれに影響される。執着があるからこそ天才が生まれたんだと。執着のおかげでジョブズは誰も見ることができなかった世界を見られたのだと思います。ところで、君たちが作っているMacPeopleも、それに負けないぐらいMavericksに取り憑かれているよね(笑)。
さて、監督に「クレイジー」「執着してる」と言わしめたMacPeople 12月号は好評発売中です。Mavericksの素晴らしさを皆さんに伝えるために取り憑かれたように制作しました。MacPeople編集部が全身全霊をかけて制作した渾身の1冊です。これさえ買えば、もう何もいりません。みなさんも一緒にMavericksに執着しましょう!
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