街で頭上にかざしたくなる『THETA』
ピヒューンという気持ちの良いシャッター音と共に、自分の周囲360度の全方位が撮影され、iPhoneなどに写真をWiFi転送。写真は360度パノラマVRとして展開され、指でぐりぐりまわしたり、ズームしたり自在に動かせる。そこから、専用サイトを通じて、FacebookやTwitterなどのSNSへアップロードするまでわずか1分足らず。そんなユニークなカメラがリコー『THETA』だ。
サイズ42(W)×22.8(D)×129(H)mm、重さ約95gの軽量かつスリムな白いボディーは、背中合わせに魚眼レンズが配置され、なにやらウルトラマンに変身するときに手に持って空にかざすベータカプセル(フラッシュビーム)のようである。
↑今年1月に開催されたCP+(シーピープラス)に参考出品されたときは、レンズがもっと飛び出た形状だったが、実際に販売する製品実機では、よりすっきりした形にまとまっている。 |
10月15日にアメリカ・ヨーロッパ向けに399ドルで先行発売され、日本での発売も11月8日にRicho Imaging Online Store(関連サイト)及び一部販売店から発売されることが発表され、すでに予約受付が始まっている。
↑パッケージも白に統一。 |
触った感触はあとにして、まずはどんな写真が撮れるのか作例をご覧いただこう。
作例1(画像クリックでパノラマVRでご覧いただけます) |
↑噴水から水が流れる様子を撮影。 |
作例2(画像クリックでパノラマVRでご覧いただけます) |
↑植物の中にTHETAを突っ込んでみた。 |
そもそも、360度パノラマVRはGoogleストリートビューで広く認知された表現だが、その技術は20年も前からあった。空間をトリミングし、切り取った構図で見せるのが「写真」であるのに対し、360度パノラマVRは空間をまるごと表現する全天球イメージである。
360度パノラマVRは、デジタルカメラに取り付けた魚眼レンズで水平天地を複数枚撮影し、PCでステッチングソフトを利用してつなぎ合わせ、Quick TimeやFlash、HTML5でVRとしてブラウザー上でインタラクティブに展開、という仕組みだ。
PC性能の向上やネット回線の高速化などで、最近ではストリートビューのみならず、新聞社などでも利用され、一般化してきている。私も軍艦島や、日本各地の世界遺産の360度パノラマVR作品を、本サイトやnippon.com(関連サイト)という海外向け日本文化紹介サイトなどで発表している。
THETAは、その360度パノラマVRをコンシューマー向けにもっと簡単に作れるようにした製品だ。生成されたパノラマ画像がわずか数秒でiPhoneやiPod touchに転送され、すぐに撮ったばかりの自分だけの全天球イメージを楽しむという体験は、360度パノラマVRの普及を一気に押し進めるかもしれない。
↑THETAで撮影した全天球イメージは、このようなエクイレクタングラーという投影法のjpg画像で保存される。これがiOSアプリ『RICHO TEATA for iPhone』やPCソフト『RICHO TEATA for Windows(R)/Mac』のほか、専用サイトを通じて360度パノラマVRとして閲覧できる。 |
どんな場面でTEHTAが力を発揮するのか?
360度パノラマ写真は複数枚写真の合成をする都合上、人が大勢移動する一瞬などを一度に収められず、合成時にうまく矛盾が出ないように調整しなければならない。しかし、THETAなら、一度に撮影できるのでお手軽だ。また、ビールジョッキやジオラマ模型のような狭い空間にも入るサイズなので、これまでとは趣が違った作品を撮ることもできるだろう。もちろん、バッグに常備してもかさばらないので、いつでもどこでも保存したい空間をそのまま丸ごと残せるのも大きな魅力。
THETAはボディーのシャッターボタンを押すほか、iPhoneアプリ経由のリモートシャッターでも撮れる。撮影された写真はTHETAのボディーが剣先のような形で少し残って映るだけで、ほとんど見えない。三脚穴にポール状のものを装着してうまく撮影すれば、空中に浮いているように見せて撮ることも可能だ。
THETAはそのデザイン、触り心地、シャーター音などから伝わる心地良いフィーリングと、マニュアル操作は明るさ(露光量)だけ、というシンプルな設計思想で作られている。そして、撮影した360度パノラマ写真はSNSを通じてすばやく共有でき、スマホやタブレットなどで気軽にぐりぐりまわしながら楽しむ、そのトータルな世界観を体感する新しいVRツールだ。既成概念にとらわれない新しい表現、体験を楽しめるカメラの登場に、新たな写真の未来を感じた。
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