『アスキークラウド』で小説『それでもボクは会社にイタいのです』を好評連載中の荒木亨二さんに、「大切にしている自分ルール」や「ルールについての考え方」をお聞きしました。
「すいませんが……面接官を変えてもらえませんか?」
20代前半の学生時代、就活の面接において、私は幾度かこのような発言をしたことがある。明らかに人を見る目がなさそうな場合に限り〝面接官チェンジ〟は許されると、自分でルールを決めていた。キャバ嬢チェンジではないが、学生である自分にも相手を選ぶ権利はあるはず、と考えたのだ。
もちろん怒る人もいたが、私の意見に納得して新しい面接官を用意してくれる人もいた。
ルールは自分で変えられる。納得できないルール、理にかなっていないルールに出くわしたなら、もっと良い手法なり考えなりを、自分から提案すればいい。ルールはルールだからと、じっと守っているだけでは、損をするばかりだ。
日本のお家芸である柔道で勝てなくなったと言われて久しいが、その理由の一つに「日本人に不利なルール改正」が挙げられる。海外勢は積極的に声を上げ、自分たちに有利なルール改正を迫る。一方の日本は「柔道はこうあるべき」というスタンスを崩さず、海外勢の動きを傍観するだけ。その結果、日本は不利な状況に追い込まれている、というわけだ。
ビジネスの世界にも、さまざまなルールが存在する。誰もが納得するルールもあれば、理不尽でも守らねばならない暗黙のルールもあるが、律儀に守りすぎるビジネスマンが多いように思われる。
ときには、決裁権がない立場でも、その場で即決すべき案件があるはず。そんなときはルールを破り、後から死ぬ気で上司を説得すればいい。
あるいは、前例のない案件が振ってきた場合、むしろそれは絶好のチャンス。チャレンジして成功を掴めば、自分が新たなルールを作ったことになり、その後のビジネスを有利に展開できるだろう。
私の唯一のルールは「ルールを自分で変える」こと。コンサルタントとして独立して十数年、ひたすらにこれを守ってきたが、ポイントは2つある。
ひとつは「必ず相手にメリットをもたらす」こと。私の新たな提案により、業務が効率化されたり事業の領域が広がったり、相手に「是非ルールを変えたい!」と思わせたりしなければならない。自分だけにメリットをもたらす自己中心的なルールは、決して通らない。
もうひとつは、漠然とした表現だが、「気づいたらルールが変わっていた」という自然な状況を作り出すこと。私は変えたいルールがある場合、まずは身近な人で試してみる。その反応を見ながら徐々にルール拡大の幅を広げ、賛同者を増やし、最終的に上層部が「そういえば……今はそんな感じのルールだったか?」と、思うように仕向けていく。
朝礼で突然「今日から○○ルールを導入します」と宣言すれば、多くの人は戸惑うに違いないが、気づかぬうちに変えてしまえば、心理的な抵抗も少ない。
相手のメリットを考慮しながら、じわりこっそりルールを変える。すべては、最高のビジネス、最高のパフォーマンスのためである。私がルールを変えることになるので、結果として「自分に有利なビジネス環境」が生まれる。
ルールを変えるには、まずはビジネスで実績を積んで、周囲からの信頼を獲得する必要がある。そのうえで、狡猾なまでにコミュニケーション力を磨きあげ、必要な人脈を蓄える。
そして、もっとも肝心なのは、「自分が主役になる」という意識。狡猾さと自意識がないと、そもそもルールは変えられない。
ルールを変えることは、悪いことではない。
ルールを守ることの方が、悪いこともある。
荒木亨二(あらきこうじ)
ビジネスコンサルタント・執筆業。荒木News Consulting代表。
早稲田大学卒。幅広い業界でさまざまなコンサルティングを手掛ける。著書は 『就職は3秒で決まる。』(主婦の友社)、『名刺は99枚しか残さない』(メディアファクトリー)。雑誌『アスキークラウド』(KADOKAWA)にて小説『それでもボクは会社にイタいのです』、『Begin』(世界文化社)にてファッションコラム『仕事着八苦YOU!』連載中。
■関連サイト
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