アメリカ・ヴァージニア州のワロップス飛行施設から、9月7日(日本時間)、NASAの月探査機が打ち上げられた。名前は“LADEE(ラディー:Lunar Atomosphere and Dust Enviroment Explore)”。ミノタウロスVロケットがLADEEを乗せて発射する際、カエルを吹き飛ばしたことのほうで有名になってしまったが、LADEEは月の大気やチリを調べるという、おもしろい役割を担っている。
↑飛んでいったカエルが世界中のニュースサイトで話題に。 |
(C)NASA |
月はこれまで真空の場所と言われてきたが、最近の研究では、ナトリウムやカリウムを含む微量の大気が存在するということがわかってきた。ただし、地球の大気には1立方センチメートルあたり10の19乗個の分子が存在するのに対し、月の大気では100万個以下程度のわずかな分子しかない。ただし、わずかと言っても、人工衛星を軌道から落としてしまう程度の影響力はもっている。
こうしたごく薄い大気が月にできた原因としては、太陽風が月の表面にあたって表面の物質が気体化したという説や、星や小惑星の衝突によるもの、あるいは何らかの理由で月内部の物質が気体として放出されたために発生したなど、複数の説が挙げられている。NASAではそのメカニズムを突き止めるため、探査機を打ち上げるに至った。
LADEEはNASAエイムズリサーチセンターが開発した小型の探査機。月の薄い大気やチリ、粉じん環境を観察する目的で開発されたもので、質量分析計や紫外・可視分光計、ダスト検出器が装備されている。また、この調査は、月面基地の建設、資源調査、月で活動するロボットへの影響に関する研究も含まれているほか、月面レーザー通信のデモンストレーションも予定されるなど、将来に向けた本格的月探査のための情報収集も担っているのだ。
ミッション期間はわずか160日程度。10月6日(日本時間)に月周回軌道に乗り、その後30日ほどかけて観測機器の調整中を行なっており、実際の月の観察は11月の初旬~2014年2月初旬ごろを予定している。
同時に、LADEEを応援するプロジェクトとして“月面衝突発光現象観測LIMEプロジェクト(Lunar Impact Monitoring Event)”が進められている。日本のLIMEプロジェクト『MOON.J ~NASAの月探査機LADEEとともに月面衝突閃光を観測する100日間~』は、地上から月を仰ぎ、月のごく薄い大気に突入した流星の発光を観測することで、LADEEをサポートする計画。
月の欠けた影の部分に隕石等の小天体が落ち光る現象を日本のアマチュア天文家や天文台、科学館、学校などが連携して観測、NASAに提供し、LADEEの観測結果とMOON.Jが捉えた記録とを突き合せることで、“月に大気が存在する証”となるデータを多く集めようという画期的なプロジェクトなのだ。
『MOON.J ~NASAの月探査機とともに月面衝突閃光を観測する100日間~』
観測は月の暗い部分を観測するため、三日月から半月くらいまで(月齢3~7)の時期がベストとされる(月が細く暗くなっていく、月齢21~27くらいでも可)。暗い部分に閃光が見えれば、それが月面に衝突した天体だ。
MOON.Jメンバーで日本天文愛好者連絡会(JAAA)の武島佑季さんに、観測方法をたずねてみた。
観測に必要な機材
●天体望遠鏡(観測画像を共有、検証する場合は口径20センチ以上)
●赤道儀(自動追尾ができる架台)
●録画用のビデオカメラ
●動画処理のためのPC
●GPS(時刻と観測位置の確認)
1) 月がよく見える、天候条件がよい日を狙う
まずは月齢カレンダーで月齢と月の入り/月の出時刻を確認し、日没後30分以上たってから、また日の出前の完全に暗い時間帯で観測する。望遠鏡が口径20センチ以下の場合、月の縁まで捉えられず、科学的な検証のための資料とはならないが、まずは手持ちの機材で月を見てみよう。
2) CCDカメラで動画を記録する
カタディオプトリック式望遠鏡 |
↑望遠鏡はビクセン『VC200L-SXW』(鏡胴+経緯台セット)。こちらは販売終了品だが、有効径20cm以上であればよい。接眼レンズを取り外し、CCDカメラを取りつける。 |
↑41万画素のCCDカメラ、ビクセン『C0014-3M』。録画機能はなく、映像を出力してほかの媒体で記録するための機材。 |
写真で例に挙げた機材は、ビクセンの天体望遠鏡に取り付け可能なオプションCCDカメラ。接眼レンズをはずし、マウントをはさんで取り付ける。撮影時間は、最大で1時間ほど。長く撮影できれば理想的だがあまり長時間撮影すると、その後の動画ファイルサイズが大きくなり、取り扱いが難しくなる。天候などの都合で撮影時間が数分程度になっても十分に役立つ。重要な点は、撮影の日時と場所を正しく記録すること。
CCDカメラの映像出力は、アナログコンポジットタイプだ。PC+ビデオキャプチャーユニット、アナログ入力端子をもつHDDレコーダー、ハンディカムなど、録画機材は用意できるものでかまわないが、時計合わせを必ずしておく。GPSユニットなどを使用し、観測場所も正確に記録する。観測場所は家のベランダなど、電源を利用できる場所のほうがよい。
3) 動画をデジタル化する
↑CCDカメラからの映像を、アナログ映像端子をもつ機器に入力している図。TVキャプチャーユニットなどを使ってデジタル記録できれば手間が省ける。 |
テープカセット記録のハンディカムなど、アナログ媒体に記録した場合はビデオキャプチャーユニットなどを使ってデジタル化する必要がある。30フレーム/秒のフレームレートで記録する。まずは、閃光が映っているかどうか映像をコマ送りして確かめてみよう。衝突閃光は0.03秒(1フレーム)ぐらいの時間しか光らないものが多く、コマ送りでなければ見つけにくいという。
4) 画像提供、共有
MOON.Jのサイトでは、撮影動画の提供、共有を受け付けている。映像から閃光を検出するソフトウェアもあるため(NASA製)、目視で見えない閃光を宝探しのように見つけるのも楽しいだろう。
LIME期間中のフル観測が難しいという人は、『LIME DAY』キャンペーン期間に参加してみるといいだろう。また、高校生や中学生、一定規格の機材を持っていない方の参加も何らかのカタチで募集する予定だ(詳細はHPで確認を)。
日程 | 月齢 | 開始時刻-終了時刻 |
11/ 9 (土) | 月齢 6.0 | 19:00~21:00 |
11/10 (日) | 月齢 7.0 | 19:00~22:00 |
12/ 7 (土) | 月齢 4.5 | 18:00~20:00 |
12 /8 (日) | 月齢 5.5 | 19:00~21:00 |
1/25(土) | 月齢 23.3 | 2:00~5:00 |
1/26(日) | 月齢 24.4 | 3:00~5:00 |
これから、秋冬の夜空が澄んだ季節を迎えて、観測条件はよくなっていく。11月ごろに観測に慣れたら、12月のふたご座流星群の時期を狙ってみよう。実は、地球に流星(微小天体)が多く来る時期には、地球と近い月にも同様に微小天体が降り注いでいると考えられるからだ。ふたご座流星群の極大は12月14日で、このときの月齢は半月を過ぎているためLIMEプロジェクト向けの観測はできないが、流星が増えはじめる12月9~10日ごろは観測のチャンス。閃光が映ったよい映像を得られれば、研究への協力者として、撮影者の名前が論文に載る可能性もあるとか!
■関連サイト
LADEE Mission
LIME プロジェクト案内ページ「MOON.J」
LIMEプロジェクト募集要項(NASA サイト内/日本語)
LIMEプロジェクトFacebook
非公式キャラ ラディー・オービター@LadeeOrbiter
-
2,937円
-
2,600円
-
8,600円
-
1,487円
-
1,890円
-
1,890円
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります