本連載では、Appleの公式Podcast「Apple Keynotes」のコンテンツを振り返ってきたが、それも今回で一区切りとなる。というのも、最新コンテンツに追いついてしまったからだ。今回取り上げるのは、「Apple WWDC 2013 Keynote Address」。今年6月、ついこの前開かれたイベントだ。
発表内容に関する詳細記事まとめ
WWDC 2013で発表されたプロダクトの詳細については、イベント直後から各記事で取り上げているのでそちらを参照してほしい(下記リンク)。本稿では、歴代のAppleの講演のひとつとして見たときのポイントを取り上げていくことにする。
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フェデリギの存在感がかつてないほど上昇
本講演のホスト役は、もちろんCEOのティム・クック。各製品を紹介する幹部陣の顔ぶれも従来とあまり変わらない。しかし、その役割分担に大きな変化があった。登壇したApple幹部のメンバーと担当は以下の通り。
●ティム・クック(CEO):ホスト
●クレイグ・フェデリギ(ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長):OS XおよびiOS 7概要紹介
●フィル・シラー(ワールドワイドマーケティング担当上級副社長):新型MacBook AirおよびMac Pro紹介
●エディ・キュー(インターネットソフトウェア&サービス担当上級副社長):新SiriおよびiOS in the Car紹介
●ジョナサン・アイブ(デザイン担当上級副社長):iOSの新デザイン紹介(ビデオ出演)
●ロジャー・ロズナー(iWork担当副社長):iWork in the Cloudデモ
中でも大きなプレゼンスを発揮したのは、OS X MavericksとiOS 7のプレゼンを担当したクレイグ・フェデリギだ。ここ最近のAppleの講演では、事実上の主役のはフィル・シラーだった。もちろん今回も、新型MacBook Airの紹介と、次期Mac Proのプレビューという大役を任されたことは間違いない。
しかしそれ以上に、フェデリギの存在感は大きかった。Apple製品の中枢とも言えるOS XとiOSの両方の紹介を任され、講演時間の半分近くがフェデリギのプレゼンに費やされたのだ。
ソフトウェアエンジニアリング担当として、フェデリギは過去にもしばしばイベントで登壇している。しかし、これまではどちらかというと淡々と機能を紹介していくという役柄だった。しかし今回は、ジョークやアドリブも交え、プレゼン巧者のシラーにもひけを取らない役者ぶりを見せた。Apple社内での勢力地図に変化が起きていることを感じずにはいられない。
ハードウェアのプレゼンはシラー
主役級をフェデリギに譲ったとはいえ、シラーも役割も決して小さいものではない。当日から発売される最新型のMacBook Airの発表に加え、結果的にAppleユーザーの最大の関心事となる次期Mac Proのチラ見せ(Sneak Peek)を任されたのだから。
重厚なBGMとともに次期Mac Proのティザー映像が流れると、観衆はどよめいた。こういう「おいしいところ」を持って行くのは、やはりシラー以外にいない。
ちなみにこの新型Mac Proが発表されたとき、観客席にいたスティーブ・ウォズニアック(ジョブズとともにAppleを創業した一人)も唖然とした表情を見せていたのが面白かった。
その他の細かい見どころ
講演の冒頭、本論に入る前の余興的に、アンキ社という新興企業のデモが実施された。「Anki Drive」という、iOSデバイスと連携するミニカーのレースゲームなのだが、最初このデモがうまくいかず、会場が微妙な空気に包まれた瞬間があった。Podcastではこのデモ失敗シーンはカットされており、いかにもスムーズにプレゼンが進んだように編集されている。
iOS 7の紹介の際には、ちょっとした内輪ウケのネタも披露された。あらゆる機能がフラットUI化されていることを説明するくだりで、「Game Center」に触れる際、フェデリギは「グリーンのフェルトなんてすっぱり取り除いたよ」と言った。
この瞬間、Appleの幹部陣がどっと笑う光景が挿入されている。グリーンのフェルト生地はカジノのテーブルを模したものであり、こうしたメタファーはかつてのiOS開発担当社、スコット・フォーストールが好んだと言われている。フォーストールがApple内で嫌われていたという噂話を裏づけるかのようなシーンだ。
自らの立ち位置を確認して閉幕
約2時間の発表を終え、最後を締めるのはやはりクック。「我々の気持ちを込めたこのビデオを見てほしい」と、企業イメージCMのような映像を流した。
ラストには「Designed by Apple in California」という文字が入り、自分たちが米国カリフォルニア州を本拠地とする企業であることを明示。次のAppleの10年のスタートもここから始まるのだ、という決意表明だったのかもしれない。
会場は大きな拍手と歓声に沸き、イベントの成功を確信したクックは笑顔でステージを去った。
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