8月27日、富士通はモバイル製品やサービス群を体系化した“FUJITSU Mobile Initiative”を発表しました。
富士通が現在提供しているモバイル製品は、ARROWSシリーズのスマートフォンやWindows8タブレット、LIFEBOOKなどのノートPCといったデバイスを始め、ネットワークやセキュリティーを含むクラウド技術基盤、アプリ、コンサルティングといったサービスまで多岐に渡ります。これらの7000件に及ぶ商談実績をもとに体系化したのが、FUJITSU Mobile Initiativeというわけです。
↑富士通の多岐に渡るモバイル製品やサービス群を体系化。 |
↑ARROWSシリーズやLIFEBOOK、らくらくスマートフォンもその一部に。 |
この発表に先立って富士通執行役員常務の大谷信雄氏は、「端末を作る企業や、アプリ開発、コンサルを中心とする企業はたくさんある。しかしモバイルについて端末からネットワーク、クラウド、ソーシャルまですべてを提供できるのは富士通くらいではないか」と独自の強みを強調しました。
↑富士通の大谷信雄氏。 |
この体系化にあたって富士通はさらに新しいサービスを次々と発表しましたが、ここではモバイル向けアプリの開発・実行基盤として新たに発表された“MobileSUITE”を中心に見ていきたいと思います。
■業務用モバイルアプリの開発・実行基盤“MobileSUITE”
従来のモバイル向けアプリでは、iOSやAndroid、Windowsといったプラットフォームごとに、個別にアプリを開発する必要がありました。これに対してMobileSUITEでは、認証やID管理、セキュリティーといった共通基盤を提供。これらを利用してHTML5でアプリを作ることで、開発者は業務アプリの作り込みに専念することができるようになります。
↑MobileSUITEの機能を利用してHTML5で業務アプリを開発しやすくなる。 |
富士通によれば、MobileSUITEの利用により開発工数は50%以下になるとのこと。WebブラウザーをターゲットとしたアプリではOSに依存しないため、Windows PhoneやFirefox OSなど新しいOSにも対応できるとしています。
MobileSUITEを利用すれば、既存の業務システムをモバイルで活用したいときに、サーバー側に手を加えずにモバイル対応を実現することもできるとのこと。具体的には既存の業務システムからデータを抽出する“アダプタ”を開発し、これをHTML5のアプリとWebAPIで接続するという仕組みです。
↑既存業務システムを、サーバー側に手を加えずモバイルに対応させる仕組み。 |
■アプリは暗号化して配信、利用履歴の管理も
通常、開発したアプリはiTunes App StoreやGoogle Play、Windowsストアに登録する必要があります。しかしMobileSUITEはアプリ配信機能も提供しており、公開アプリストアを介することなく、企業内で独自にアプリを“セキュアに”配布することができます。
↑アプリストアを経由することなくアプリを配信。 |
“セキュアに”アプリを配布する機能としてMobileSUITEでは、アプリを暗号化してモバイル端末に配布。アプリを実行するときだけ復号化するという機能を提供しています。これにより、アプリの改ざんや、アプリ本体から重要なロジックを盗まれるといったリスクを防止できるとのこと。
配布したアプリは“統合管理機能”により、ユーザーの利用状況や履歴を管理することができます。これにより、つねに最新アプリを使うよう管理したり、利用状況を業務改善に役立てることができるとしています。
■iPadでFlashアプリを実行する“アプリケーションブリッジ”
PC向けに構築された業務アプリのなかには、ActiveXやFlashなど、PC用のWebブラウザーを前提としたものが少なくありません。これに対して富士通が提供する新機能“アプリケーションブリッジサービス”では、iPadやAndroidタブレットでこれらのPC用業務Webアプリの動作を可能にします。
↑クラウド上で実行したPC用Webアプリの画面をタブレットに転送する。 |
このサービスは、モバイル端末から企業内システムに接続する“FENICSⅡ ユニバーサルコネクト”の新機能となります。具体的には、ActiveXやFlashを用いたWebアプリをクラウド上で実行。その画面をモバイル端末に転送することで、あたかもタブレット上でアプリが動いているように見せる技術です。
技術的にはリモートデスクトップに近い方式と言えます。しかし富士通では画面を効率的に転送する独自技術“RVEC(レベック)”を採用。モバイル環境のように通信帯域が限られていたり、遅延が大きい状態でも、スムーズに画面を転送することができるとしています。
↑ウインドーを閉じるデモ。RVECでは一瞬で画面から消えたのに対し、リモートデスクトップでは画面描画に数秒を要した。 |
デモでは、リモートデスクトップとRVECによる画面転送を横に並べて比較。動画再生やウインドーのドラッグによる移動、ウインドーを閉じる操作などで、RVECが滑らかに動作する様子が披露されました。
このとき、タブレットはクラウド側から送られてきた画面を表示するのみで、具体的な業務データが残ることがありません。そのため、タブレット紛失時にも安全であるとしています。
“MobileSUITE”と“FENICSⅡ ユニバーサルコネクト”は、いずれも2013年10月より提供開始予定となっています。
■オリジナルタブレットも可能にする“カスタムメイドプラスサービス”
デバイスについて興味深いサービスが、“カスタムメイドプラスサービス”です。たとえば8月7日は、明治安田生命が約3万台の“マイスターモバイル”というWindows8タブレットを導入することを発表しました。
このタブレットは市販モデルではなく、富士通が製造したオリジナルタブレットとなっています。この“カスタムメイドプラスサービス”は2013年8月よりサービスを強化し、ニーズに合わせたきめ細やかなカスタマイズを可能にするとしています。
↑オリジナルタブレットを可能にする“カスタムメイドプラスサービス”を強化。 |
ちなみにこのサービスを用いてWindows Phoneのカスタムメイドは実現可能なのか確認したところ、「Windows Phoneもやりたいが、マイクロソフト次第」(大谷氏)との回答にとどまりました。企業向けのモバイルソリューションにWindows Phoneという選択肢を加えるためにも、日本マイクロソフトの次の一手に期待したいところです。
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