2013年7月25日に開催されたバイクレースの祭典『鈴鹿8耐』。この併催レース『鈴鹿4耐』(鈴鹿4時間耐久ロードレース)に『初音レーシング&重音テト「TEAM-ネギドリル!」』(以下、TEAM-ネギドリル!)が初参戦することは、以前の告知記事(関連リンク)でお伝えしたとおり。ちょっと時間が空きましたが、続いてTEAM-ネギドリル!広報担当さんから参戦レポートを寄稿していただきました。レース当日はどんな作戦で、どのように完走に至ったのでしょうか。完全プライベーターの仲間だけで運営したチームの足跡のレポートです。
■初音レーシング、4耐本戦を走る
初音ミク、そして重音テトの描きおろしイラストをそれぞれまとったバイク2台の痛単車のレーシングチーム『初音レーシング』。今回はそのレース当日の模様をレポートします。
『初音レーシング&重音テト「TEAM-ネギドリル!」のたまやん選手(右)とありとー選手。もちろんレースクイーンは初音ミクと重音テトだ! |
ありとー選手。 |
こちらはたまやん選手。 |
昨年のエントリー数58台に対し今年は68台とほぼフルグリッドになり、一時期は予選落ちもあるのでは? と囁かれる程の盛況ぶり。全盛期よりは少なくなってきたとは言え、厳しい戦いになるのは覚悟して今回のレースに臨みました。
まずはレース当日の車両をご紹介します。
今回車両デザインをして頂いたのはクリエーター瀧爪獅乃さんです。デザイン面で特に意識したのは、少ない面積でいかにキャクターを際立たせるか。全体的にキャラクターを浮き出させるようにデザインしていただき、色々な角度で見てもキャラクターが判るような配置にしました、コレは効果バツグンで様々な方から高評価をいただき、チームとしても成功したのではないかと思っています。
マシンのペイントをチェック。ライダーから見て向かって右側面に描かれているのはミクさん。 |
狭い面積でもキャラクターがひとめでわかるように工夫されている。 |
反対の左側面にはテトさん。脚を曲げた構図とすることでほぼ全身が描かれている。 |
イラストがペイントされているのはマシン前部のカウリングだ。 |
■ライダーは明暗が分かれたものの予選は無事通過!
今回の公式予選は、タイムスケジュールの都合により13時15分~45分(第2ライダー)と17時30分~18時(第1ライダー)となり、コレが明と暗に分かれる原因になりました。
予選1回目は第2ライダーの“ありとー選手”が担当、今回の作戦は周回遅れになって速い集団に飲み込まれたら切り上げる、周回数は少なめというものです。
この作戦がピタリと決まり、6周目に自己ベストとなる2分28秒395をマーク。もう少しプッシュしたいところなのですが、予選もタイヤ1セットだけで戦っている我がチームとしてはピットサインを出してタイヤを温存。セットの確認を行なえる上々のスタートが切れたと思います。
予選1回目にアタックするありとー選手。早くも6周目で自己ベストを叩き出し、ここでタイヤ温存のためピットイン。 |
予選2回目、今度は第1ライダーの“たまやん選手”が担当、日没が近い18時近くの予選なのですが、調子の良いありとー選手のセットのまま走行。西日が射すのですがドンドンと路面温度が低くなり、しかも景色が薄暗くなってくると視界のイメージと実際のイメージのギャップが生まれて、上手くライディング出来なくなってしまい自己ベスト更新ならず。とはいうものの、合算タイム4分59秒745で総合61位と無事予選通過となりました。
予選2回目で走行するたまやん選手。見た目と違って路面温度はどんどん下がっている。 |
予選も無事終了し後は決勝のみ。決勝前の整備が行なわれます、このタイミングでピットマンも到着し、テントピット前で綿密な打ち合わせやピット作業の練習を行ないます、決勝での作業ミスは大きなハンデとしてのしかかってくるのでみんな真剣に取り組んでいます。
日没後の暗闇のなか、ピット作業を入念に練習。これは給油作業のリハーサルか。 |
■華やかな決勝当日!
決勝当日、今回は8耐ピット優先ということで、『TeamEBATA』さんの専有ピットを4時間だけお借りすることに。同チームのご厚意により前方ピットをほぼ全面お借りすることが可能になり、看板も差し替え。レースクイーンさんも到着しチームPRが万全に出来ました、有難うございました!
看板やレースクイーンの衣装もチームに協力していただいたクリエーターさんの作品で、チームや大会を盛り上げるために作った力作揃いです。
決勝に向けて、「TeamEBATA」の専有ピットが4時間だけ「初音レーシング」のピットに早変わり。 |
『初音レーシング&重音テト「TEAM-ネギドリル!」』の看板が登場! レースクイーン2人も現われ、気分はすっかりボカロワールドだ。 |
■鈴鹿のレースを一番近い所で見続けてた経験が生かされた
レース進行が始まり華やかなムードの中、スタート時刻の午前9時が近づきます、ライダーはこの時間はナーバスになりやすいのですが、チームメートの笑顔に見送られることにより少しは緊張が解されて、良い緊張感でレースに臨めたと思います。
スタートライダーは、たまやん選手、彼は10年来、『鈴鹿8耐』や『SUPER GT』等のレースオフィシャルを担当してきた選手です。レースの危険な箇所や時間帯は熟知しており、今回のチームの作戦も彼が中心となり組み立てたものでした。
たまやん選手は危険な第1スティントでスタート早々に起きたアクシデントにも難なく対応し、順位を61位から53位まで引き上げ、2周目からのセフティーカー導入時も冷静に対応。順位を下げることなく第2ライダーの、ありとー選手にバトンを引き継ぎました。
初参戦で、これだけの波乱をヒラリヒラリとくぐり抜け、何事もなかったかのようにライダー交代を行なえたのは、ひとえに彼の経験が生かされたのだと思います。
たまやん選手がスタートライダーを担当。さっそく順位をジャンプアップした。 |
第2ライダーの、ありとー選手は今回初の600ccのレース。普段は250ccの軽量バイクでのレースに臨んでおいますが、勝手が違うライディングにも柔軟に対応したクレバーな走り。ラップタイムもキッチリ刻んでくるところはレース巧者な面を見せて、チームの安心感と士気を高める良い選手だと思います。
チームの作戦はピットの混乱を避けつつライダーと燃費の安全を考え、通常ピットイン5回でゴールするのを1回多くして、完走する可能性を高く保つ作戦に出ました。
初の600ccレースに臨むありとー選手。きっちりとラップタイムを刻む堅実な走りを見せた。 |
実際、ピットクルーには負担になりますが、クルーも『鈴鹿8耐』を経験したメカが中心となって纏めた事により一度もミスなくライダーを送り出すことに成功。特に3度目のピットストップは、セフティーカー開け直後という絶妙なタイミングでのピットイン。順位もこの時点で42位と大きくジャンプアップに成功しました。
この作戦も見事に当たり、他のチームでは別のチームのピットクルーを跳ねてしまう事故があったりとピットレーンは混乱と緊張のムードが充満していましたが、初音レーシングは初参戦とは思えないほどの安定感。この冷静さが完走という目標を達成した一つの要因かなと考えています。
鈴鹿のホームストレートを疾走する初音レーシングのマシン。 |
その後も1つ1つのタスクをこなし、最後のピットイン。ありとー選手からたまやん選手にバトンタッチ直前、クルーと握手するシーンは自分も相当数レースを経験してきましたが、最後まで何があるかわからないわけで、心のなかで「最後まで無事に戻って来てくれ」と呟いていました。
最後のピット作業が終わり、たまやん選手を送り出しピット内では拍手。クルーはやれることはすべてやりつくし、安堵に包まれながらモニターを見つめ、たまやん選手が帰ってくるのを待ってました、そして4時間が経過、待ちに待ったチェッカー! クルー全員がピットウォールに駆け寄ってたまやん選手を出迎え、たまやん選手もガッツポーズで応えてくれました。総合40位、Rクラス17位でした。
併催レースとは言え、暑く熱いレースで本当に感動的なチェッカーにみなが酔いしれてました。
レースを終えピットレーンに入るたまやん選手。ガッツポーズを見せてくれた。 |
初参戦&初完走が出来たのも、右も左も解らないチームをレースサポートしていただいた『Link Well TEAM KOUWA』をはじめ、協力していただいた企業さまに応援してもらった仲間が1つの目標に向かって頑張った結果が、嬉しい結果になったと思います、本当に有難うございました。
■テントピットは大盛況!
レース終了後、マシーンがテントピットに戻るやいなや、色々な方が集まって来てマシーンやレースクイーンさんの撮影会でテントピット前は大盛況。併催レースのピットとは思えない位の盛り上がりで、イラストレーター・くぅ。さん描き下ろし応援イラストを元に制作したステッカーは、制作した枚数がほぼなくなる(500枚)と言う事態に。コレは大会を盛り上げる為に様々なクリエーターさんが頑張ったおかげだと思います、本当に有難うございました。
来年、参戦があるのならまたこの様な企画を頑張っていきたいと思います。
テントピットではマシン&レースクイーンの撮影会が大盛況だった。 |
■メンバーコメント
初音レーシング&重音テト「TEAM-ネギドリル!」ライダー兼代表、たまやん選手
「仲間と大きな思い出を作りたい」。バイクが好きだからこそ飛び込んだモータースポーツ界は決して楽なものじゃないのですが、継続は力なりが今に至り素晴らしい仲間と共に4時間を走り抜けられました。
この4耐では特に、モータースポーツファンではあってもサーキットでは観戦だけしかしたことない友人知人に声を掛けて協力していただいたのは、参戦側としても楽しんでもらいたい、この機会にもっとモータースポーツの奥深い所にも気付いてほしい、とたくらんでいたからです。
MASAMASA.TVさんにレース中、ピット内をネット配信してもらったのも、遠くて鈴鹿に行けない人、痛車(痛単車)に興味があってもレースは見たことない人、そんな視聴者に「なんか楽しいことやってるなぁ」と、内側を届けたかったからですが、結果としては4時間ずっと応援し続けてもらっちゃいました(笑)。
痛車(痛単車)チームらしくコスプレイヤーさんとコラボしたりイラストレーターさんたちに描いてもらったりと、最初に企画した内容より十二分に豪華になって大団円を迎えられただけに素晴らしい一生の思い出です。
ライダーとしては何も語りません。まだまだずっと続けるレース人生ですから、この先自分を超えてこそ4耐の自分自身がずっと思い出になるので、次にサーキットで会う時はライバルかもしれませんし。
ただ代表としては集まってくれて、協力してくれて、一緒に4時間戦えて、とても楽しかったです。それだけで他には出来ないレースができたことを感謝しています。ありがとう!
「TEAM-ネギドリル!」ライダー兼代表、たまやん選手 |
初音レーシング&重音テト「TEAM-ネギドリル!」ライダー、ありとー選手
昨年までは知人チームの手伝いでしか来ていなかった鈴鹿4耐。自分が参加しうる最大のレースへの参戦。どうなることかと不安もありましたが、無事結果を残せたことにまずはホッとしています。これも声をかけてくれたたまやんをはじめ、数多くのお手伝いや協力いただいた方、さらには応援してくれた方々のおかげと思います。
今回のプロジェクトで少しでもレースに興味を持ってもらえれば幸いですし、観戦・参戦してみたいと思う方でわからないことがあれば何でも聞いていただけたらと思います。
TEAM-ネギドリル!」ライダー、ありとー選手 |
レースアドバイザー兼チーフ・メカニック
「Link Well TEAM KOUWA」山本陽大さん
今回、初音レーシング4耐チャレンジのメカをさせてもらうにあたって心掛けていたことは、次へのStepUPでした。正直、両ライダー共にトップを狙えるタイムは出ていません。そこを無理矢理トップライダーのマシンセット、レース環境を真似しても無駄なプレッシャーになるだけだと思いました。
なので二人に足並みを揃えつつも、二人を引っ張っていけるポジションを探り、自分の経験を生かして、マシンセット、緊張感、その他のノウハウを伝える事に重点を置きました。
その結果二人とも自己ベストを出せたし、今後への課題も見つけれたので、自分の役割は果たせたのかなと思います。
「初音レーシング」代表 maemaeさん
今回は初めての鈴鹿4時間耐久ロードレース参戦でしたが、無事に完走することができました。これも、多くの方々に応援いただいた結果と感謝致します。
また、今回もVOCALOIDキャラクターから興味を持ち、初めてレース観戦された方もいて嬉しい限りです。
初音レーシングは、今後も幅広くモータースポーツに参戦し、皆様とともに楽しんでまいりますので、引き続き応援をよろしくお願いします。
鈴鹿のコントロールタワーに、初音レーシングの番号390が53位という順位とともに表示された。 |
(2013/8/11更新 一部の表現や画像を差し替えました。)
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