2012年1月18日に開催されたこのイベントは、いつもと少し趣が違った。メディアへの招待状には「Special Event」ではなく「Education Event」と銘打たれていた。開催場所もApple社内やその近辺ではなく、ニューヨークのグッゲンハイム美術館だ。約1時間の短いイベントに込められた意味を再確認してみよう。
■ホスト役はフィル・シラー
イベントのホスト役はCEOのティム・クックではなく、マーケティング担当上級副社長のフィル・シラーだ。クックはCEOになってからも、自らは裏方にまわり、製品そのものに関するスピーチは担当責任者に任せるというスタイルをとることが多い。結局この日はクックは姿を現さなかった。
イントロは、iPadと教育の関係についてのレポートだ。いまやiPadは、学生にとって欲しい物ナンバーワンのアイテムになっているとシラーは言った。ハードウェアが高性能で魅力的なだけでなく、アプリによって学びの可能性を大きく広げた、と。
■iPadによって教科書を再発明
続けて、「いま我々は教科書を再定義しようとしている」とシラーは言った。米国の教育現場では、「教科書」が学生の大きな負担になっている。かの国の教科書は電話帳のように大きくて分厚く、かつ高価だ。そのため学生が真新しい教科書を買うことは少なく、先輩達から「お下がり」を譲り受けるのが常態となっている。当然ながらお下がりの教科書は傷み、くたびれている。そんな現状をiPadが革新すると言うのだ。
iPadは紙の教科書より持ち運びが楽で耐久性があり、インタラクティブで検索も可能なうえ、常に最新の情報を得られる。ただし、既存の紙の教科書には膨大なコンテンツがあるのに対し、iPadはどうか? その問いに答えるべく用意したのが「iBooks 2」だ。
iBooks 2のデモを実施したのは、iWork担当副社長のロジャー・ロズナーだ。電子書籍閲覧アプリのiBookに、電子教科書ビューアーとしての機能が追加されたことを実演。重要な部分にマーカーで色づけしたり、用語を抜き出して単語帳を作成したりといった、学習に役立つ機能を紹介した。
■電子教科書作成ツール「iBooks Author」
ビューアーとしてのiPadがいくら進化したところで、肝心のコンテンツがないのでは意味がない。そこでAppleが用意したのが、OS X向けの電子教科書作成アプリ「iBooks Author」だ。
教科書の作成ツールを無料配布することで、出版社が既存のコンテンツを電子化できるのはもちろん、教師が自分の授業内容に応じたサブテキストを作るといったことも可能。このiBooks Authorについても、ロズナーによるデモが実施された。
■キューによる「iTunes U」アプリ紹介
最後の発表は、iOSアプリ版の「iTunes U」だ。iTunesの教育コンテンツ配信システムをiOSデバイスから利用可能にするものだ。プレゼンターは、シラーに代わって登壇したエディ・キューが務めた。アプリのデモは、iTunes担当副社長のジェフ・ロビン。これまであまり表舞台に出てこなかった人物だ。
講演の締めは、再登壇したシラー。Appleは早期から教育市場に力を入れてきた企業であり、今後はいっそうこの分野に力を入れていくと語った。そのためのプラットフォームとして、iPadというハードウェと、iBook/iBooks Author/iTunes Uの3つのアプリを1社で提供するわけだ。
本イベントは特にハードウェアの発表もなく、時間も短めの比較的地味なイベントだった。しかし実は、iPadを軸とした教育市場におけるエコシステムを作り出していこうという、非常に野心的な発表だったと言える。
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