1月のMacworld Expo以降、スティーブ・ジョブズは休養中。そんな中で開催されたのが、「iPhone OS 3.0 Software Sneak Peak」と題された本イベントだ。未発表の新作映画を予告なしに公開して観客の反応を見ることを「スニークプレビュー」と呼ぶ。つまり、「スニークピーク」というのは「こっそりサミット」といった意味合いか。実際にはメディア関係者も出席しており、こっそりでも何でもないが、Appleらしい遊び心のあるタイトルと言える。
■Appleの公式イベントとしては異例の人選
オープニングに登場したのは、iPod/iPhone開発担当の副社長、グレッグ・ジョズウィアック。いつもならフィル・シラーあたりが演じる役どころだが、iPhone関連のイベントであることからの人選だろうか。この日、Appleの社員で登壇したのは、このジョズウィアックとスコット・フォーストールの2名のみ。開発者向けとはいえ、Appleの公式イベントとしては異例とも言える配役だ。
ジョズウィアックは前口上として、累計で1700万台のiPhoneを出荷したことや、App Storeから8億本のアプリがダウンロードされたことなどを報告。iPhoneのプラットフォームが破竹の勢いで成長していることを、いくつものグラフや数値で示していった。
■後はフォーストールのワンマンショー
ここからは本日のメインイベント、というタイミングで登壇したのは、iPhone OS(後のiOS)開発担当上級副社長であるスコット・フォーストールだ。本イベントは、彼の独演会と言ってもいいほどだった。ポストジョブズはこの俺だ、と言わんばかりの威風堂々たる振る舞いで、巧みにスピーチを展開していく。我々一般ユーザーとしては、特段フォーストールを嫌う理由もないのだが、後にAppleを追放されることになる事実を知る今となっては、彼のギラついた眼差しがどうしても悪役のそれに見えてしまう。良くも悪くも、押し出しの強い男ということだ。
スピーチの前半は、iPhoneアプリの開発環境(SDK)に関するもの。主な内容は下記の通りだ。
・App Storeにおける有料アプリの課金方式
・アプリ内課金への対応とその方式
・iPhone端末同士のピア・トゥ・ピア通信に対応
・周辺機器とアプリの連動をサポート
・Googleマップをサポート
■大手企業の導入事例を紹介
続いて、先ほど紹介したSDKの新機能を使って、すでに大手各社が開発を進めていることを紹介。実際に各社の代表をステージに招き、プレゼンしてもらうという形式だ。Johnson & Johnson社やORACLE社などの名だたる企業が、新しいSDKを渡されて2週間で開発したというアプリが披露された。中でも面白かったのは、スタンフォード大学の教授で、Smule社の創立者でもあるガ・ワン氏による音楽アプリのセッション(57分30秒くらいから)。会場がシュールな空気に包まれる様子を、その目で確認してほしい。
■iPhone OS 3.0の新機能
後半に入ると、ようやくコンシューマーにも関係のあるiPhone OS 3.0の新機能が紹介された。誰もが待ち焦がれていたカット/コピー/ペースト機能をはじめ、ランドスケープ(横向き)モード、「メッセージ」アプリのMMS対応、ボイスメモ——など。今となっては当たり前の機能だが、当時はいずれも画期的な機能として歓迎された。
ところで、本講演を見直していて、今さらながらわかったことがあった。それは、iPhoneでは「アンドゥー」がシェイク動作(本体を振る)でできるということ。恥ずかしながら、今の今まで、操作のやり直しはいちいち手動で行っていたのだ。そういうわけで、過去のビデオにも新しい発見はある、というオチで本稿を締めたいと思う。
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