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Surface Proが日本で発売されない理由とは?

2013年04月24日 21時16分更新

文● 山口健太 編集●アタラシ

 米マイクロソフトは4月23日(米国時間)、Surfaceの公式ブログ(関連サイト)において、Surfaceファミリーの発売地域を拡大することを発表しました。

Surface Pro

↑いまだ日本での発売が発表されないSurface Pro。

 これによりSurface Proは新たに24の国や地域で発売され、Surface RTも合計29の市場に投入されることになります。しかしSurface Proの発売地域として、なぜか日本は含まれていません。これがいかに奇妙な状況であるか、各地域におけるSurface RTとSurface Proの発売状況を表にしてみました。

Surface Pro

↑世界29の地域におけるSurfaceの発売状況。○は発売済み。

 Surface Proは当初アメリカとカナダでのみ発売された後、4月2日には中国で発売。5月から6月にかけて、アジア・ヨーロッパ地域に広く展開していきます。

Surface Pro

↑中国でのSurface Pro発売イベントの様子(Surfaceブログより)。

 一方、Surface RTが発売される地域の中でSurface Proが投入されないのは、日本とメキシコだけ。Surface RTが発売済みの地域に限定すれば、Surface Proが投入されないのは日本だけといえます。

■Surface発表からもうすぐ1年

 Surface RTとProが最初に発表されたのは2012年6月18日のことであり、もうすぐ1年を迎えることになります。Surface Proの発売は今年の2月とはいえ、そろそろ新鮮味が失われつつあります。

 たとえば6月上旬には、台北でPC関連の一大イベント『COMPUTEX TAIPEI 2013』が開催予定となっており、次世代のタブレットやUltrabookが多数登場する見込みです。

 米マイクロソフトの第3四半期決算でも、CFOのPeter Klein氏が第4世代Coreプロセッサーや次世代Atom“Bay Trail”搭載機の登場を予言。それに加えて、小型タッチ端末の開発をOEMとともに進めていることを明かしています

 もちろんSurface自体にも、プロセッサーのアップデートや大型・小型のバリエーションを含む、第2世代モデルが期待される時期といえます。

 こういった状況を踏まえると、Surface Proを発売するには6月くらいが限度と思われます。日本では、夏のボーナス商戦直前であり、絶好のタイミングではないでしょうか。

■Surface Proの遅れはPCベンダーへの配慮?

 Surfaceが登場した背景には、昨年10月以降、マイクロソフトがこれまでのソフトウェア企業から“デバイス+サービス”の企業にシフトするという戦略の変化がありました。Surfaceファミリーは、Windows8とWindows RTのメリットを直接ユーザーに訴求できるデバイスとして、その中核を占める製品だったはずです。

 まずは10月のSurface RT発売により、Microsoftストアだけでなく、世界各国のPC量販店に“Surfaceコーナー”が設けられました。さらにSurface Proを投入することで、Windows8とWindows RTという選択肢を提供できるようになります。PCを買い換えようとするユーザーは、NECや富士通といった候補の中に“マイクロソフト”という選択肢を含めることになるでしょう。

 これはPCベンダーにとっておもしろくない事態といえるかもしれません。まだ市場が確立していないWindows RTタブレットはさておき、x86のWindows PCは競争が激しい市場です。Surface Proが1台売れるということは、いずれかのPCベンダーのPCが1台売れなくなることを意味しています。

 さらに日本のPCベンダー各社は、日本マイクロソフトとの間で長期間に渡って密接なパートナー関係を築いています。その歴史的経緯から、日本ではPCベンダーとの関係に特に配慮しなければならない、いくつかの事情があるといわれています。

 一方で、パイを奪い合うのではなく、パイ自体を拡大することも重要です。IDCが発表したように、2013年1~3月期の世界PC出荷台数は13.9%も減少しており、その背景にはスマートフォンやタブレット端末の台頭があります。タブレット型PCのバリエーションを増やすことも含め、まずはPC市場全体を活性化することが先決ではないでしょうか。

■日本でSurface Proを発売する下地は整っている

 Surface RTとSurface Proは、もともとお互いを補完し合う関係にあります。コミュニケーションやエンターテイメントを中心に、“仕事にも”使えるのがSurface RT。高性能なPCとしてがっつり使えるのがSurface Proです。

 Surfaceの開発チームはSurface Proについて、「MacBook AirとiPadが欲しいけど、両方持ち歩くのはめんどうだと考えている人に最適」とRedditで回答しています(関連サイト)。ハイスペックなPCとモバイルを両方使いこなすユーザーが多い日本では、Surface Proこそ“本命”と考える人も少なくありません。

 4月26日からは、Surface RT用のタッチカバーに新カラー“マゼンタ”が追加されます。Surface RT用のタッチカバーやタイプカバーは、Surface Proでも同じように使えます。Surface Proを日本に投入する準備はすでに整っているといってよいでしょう。

Surface Pro

↑日本語タッチカバーにマゼンタ色が追加。

 今回の発表では、日本でSurface Proを発売するという情報はないものの、発売しないという情報もありません。日本マイクロソフトはSurface Proの国内投入について、「準備が整い次第、ご案内する」と回答しています。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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