予想実売価格10万円超の怪物グラボ『RADEON HD7990』のスゴさをチェック!
去る3月26日、AMDは『GCD 2013』において2個のGPUを1枚の基板に搭載した超ハイエンドグラボ『RADEON HD7990』を発表しました。NVIDIAがKepler世代のGPUを出してからというもの、AMDはドライバーの熟成度を頼りに戦ってきました。しかしそろそろ純粋にスゴいといえるGPUがないのも事実。そこに登場したのがこのHD7990です。
原稿執筆時点での、ウェブでの予想実売価格は1000ドル前後となっていますので、日本円換算+αが加わって13万円前後になる感じでしょうか。これは明らかに『GTX TITAN』と真正面から激突することになりそうな製品です。AMDはHD7990発表の席で「このグラボでPCゲームでも頂点に立つ!」と豪語していましたが、AMDが単なるビッグマウスなのか否か、さっそくチェックしてみたいと思います。
『RADEON HD7990』
●AMD(関連サイト)
HD7990には2種類ある!
ここまでを読んで「あれっ? HD7990って既に秋葉原で流通してるよね?」と思った人もいるでしょう。実はHD7990は昨年発表されていますが、これは開発コード“New Zealand”と呼ばれるものです。これに対し、今回のHD7990は“Malta”という別扱いの製品です。新旧どちらもHD7970を2枚もち、たった1枚でCrossFireX状態で動作する、という点は共通です。
新HD7990のスペックは次のとおり。HD7970 GHz Editionと同じものが2基搭載されています。
製品名 | RADEON HD7990 | RADEON HD7970 GHz Edition | 旧HD7990 |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm |
SP数 | 4096基 | 2048基 | 4096基 |
コアクロック | 950MHz(ブースト時1GHz) | 1GHz | 925MHz |
メモリー | 6GB GDDR5/6GHz相当 | 3GB GDDR5/6GHz相当 | 6GB GDDR5/5.5GHz相当 |
最大消費電力 | 非公開 | 250W | 非公開 |
補助電源 | 8ピン×2 | 8+6ピン | 8ピン×3 |
新HD7990の情報を『GPU-Z』で確認。SP数はHD7970と同じですが、コアクロックが1GHzになっています。ざっと見る限り、新HD7990は“HD7970 GHz Editionをそのまま2基載せたもの”、逆に旧HD7990は“初代HD7970を2基載せたもの”という違いになっていることがわかります。これから買うなら断然新HD7990のほうが魅力的といえます。
新HD7990はEyefinity仕様なので、Mini DisplayPortがズラリ。2枚ぶんのHD7970を1枚の基板に押し込んでいるので、冷却システムも強烈です。トリプルファン+巨大ヒートシンクで対抗しています。当然ですが動作中はアツアツになります。全長300ミリオーバーのキングサイズのボードです。これだけ大きいとPCケースもしっかりしたものを選ばないと、脱落しそうで恐いですね。
注目すべきは補助電源の仕様です。新HD7990は8ピン×2基なのに対し、旧7990は8ピン×3基の男気あふれる仕様の製品もあったため、後発の新HD7990のほうが各段に使いやすいと言えます。しかし、実際に各メーカーから新HD7990搭載製品がリリースされた場合は、同じ8ピン×3基になる可能性もあります。ちなみに、電源の出力は公式では750ワット以上必要とのことですが、今回のテスト環境では、600ワットでも十分な余裕をもって動かすことができました。
ベンチ環境は?
ではベンチ環境から紹介しましょう。比較対象として、ASUS製HD7970搭載ボード『HD7970-DC2T-3GD5』と、GeForce GTX TITANのリファレンスボードを準備しました。旧HD7990とGTX690が確保できなかったのは残念です。
※ベンチ環境
CPU:Core i7-3770K(3.5GHz)、マザーボード:ASUSTeK P8Z77V PRO(Z77)、メモリー:センチュリーマイクロ CAK4GX2-D3U1600/ELP(PC12800 DDR3 4GB×2)、SSD:Intel SSDSC2CT240A4K5(240GB)、電源ユニット:ENERMAX EPG600AWT(600W、80PLUS GOLD)、OS:Windows8 Pro(64ビット)ドライバー:Catalyst 13.3 beta3/GeForce 314.22
性能も消費電力もやっぱりスゴい!
では定番『3DMark』の結果から比べていきましょう。フルHDベースの“Fire Strike”と、超高画質&WQHDベースの“Fire Strike Extreme”でチェックしてみます。
グラボ1枚で早くも1万超えキター!という感じですが、HD7970のスコアーを考えれば妥当という感じでしょうか。テストに使ったHD7970ボードは強めのOC版なので、新HD7990のスコアーの伸び率は1.5~1.6倍と少々渋い値になっています。GTX TITANに対しても余裕で勝っていますが、デュアルGPUなので当然です。
次は超重量級ゲーム『クライシス3』で試してみます。解像度は1920×1080ドット、画質およびテクスチャー解像度を“最高”に、アンチエイリアスを“SMAA 2X”に設定しています。検証はステージ2の中盤、開けたマップを移動する際のフレームレートを『Fraps』で計測します。
3DMark時よりもHD7970との差が際立ち、さすがデュアルGPU搭載グラボだ!という感じですが、GTX TITANもほぼ同じ性能をたたき出しています。首の皮1枚の差で新HD7990が勝ちましたが、「クライシス3はRADEONで遊ぶと最高だ」と豪語するからには、もう少し性能が出ないと厳しいでしょう。まだドライバーの熟成度が甘いためと考えられます。
最後に消費電力を『Watts Up? PRO』で計測してみます。システム起動後10分後と『クライシス3』テスト開始から10分後の値を計測しました。
GPUを2つも搭載し、さらにそれを連結するためのスイッチチップも搭載しているのですから、消費電力が大きくなるのは当然の話。しかしゲーム中で500ワットというのはちょっと引いてしまう消費量です。GTX TITANでもスゴいなと思っていましたが、これを100ワット以上超えてくるとは……。
まとめ:もう少しアドバンテージが欲しい
新HD7990はビジュアル的にもインパクトが強く、凄い性能を見せてくれました。しかし既存のシングルGPU最強グラボ『GTX TITAN』に対して、本来得意とすべきゲームタイトルで引き分けになるなど、まだまだ粗削りの印象を受けます。コツコツとベータ版ドライバーを追いかけ、CrossFireXのプロファイルも更新し……というマメにめんどうを見られる人のためのハイエンドグラボといえるでしょう。
(5月14日21時訂正)初出時、HD7990のコアクロックを1GHzと記載しましたが、メーカー側の訂正により950MHz(ブースト時1GHz)と修正しました。
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