11月7日に2年半ぶりにニューアルバムをリリースしたトクマルシューゴさん。新作『In Focus?』に関するインタビューをお届けします。週刊アスキー11月20日号(11月6日発売号)にはプレイリストや愛用ガジェットが掲載中。併せてチェックしてください!
今回は“雑多”
――2年半をかけて制作された新作が遂にできあがりました。
トクマル ようやく完成したというか、だいぶ消耗しましたね。時間が無制限だったのでまるまる制作に費やし途中で寝る時間や寝方がわからなくなりました。
――没頭するほど制作が楽しかったということですね。
トクマル 楽しいので、集中して制作をしてしまうんですよ。息をするのも忘れる……というか、それでたまにハッとなったり。集中するとすべてを忘れてしまうんです。ずっと自分の音楽を繰り返し聴いて、その世界に入り込みながら、世界を創り上げる感じでしたね。
――その創りあげた世界はどのような景色なのでしょう。
トクマル 大きさは東京23区のどこかの区程度の街で、いろいろな国の楽器が弾ける人たちが住人。彼らに演奏させてアルバムをつくった、そんな感覚です。住人は大人で意見もたくさんあるから、僕は統治するのに忙しくて。すべての希望を叶えるのは無理なので、「なんとかこの丁度いいところで収めてはくれないか」とうまくまとめたり。だから今回は“雑多”。より現実に近い仮想空間を創るには雑多なままがいちばんなので、多くの要素があるなかでどうやりくりするかを意識しました。すべての曲が違うほうを向きながらうまくまとまったと思います。
「これでいいのか?」と
――まるで世の中の縮図がアルバム1枚で表現されているよう。
トクマル そうですね。それはアルバム名『In Focus?』にもつながる要素なんです。いろいろな要素があると矛盾が生まれます。でもひとつひとつを大事にしていれば合わさったときに矛盾はあれどいいものはできると思うんです。でも結局は正しいのか正しくないのかはわからない。「これでいいのか?」と。否定でもなく、肯定でもない状態ですね。それを小さな街のなかでどうなるのか実験し、生み出していたんです。
――その実験の結果がリスナーに提示されるということですね。
トクマル ずっと家に籠ってつくっていたものを人前に出すのはかなり勇気のいることなんです。伝わらないのではと考えたり心苦しい。それに鎖国していた国が急に開かれたようで、少し残念な気持ちもありますね。
――でも鎖国中は独自の文化が開き、良いものが生まれますよ。
トクマル 僕のアルバムもそうだといいですし、それを願うばかりです。やりたいことはうまくできたと思うんです。今は鎖国が終わり開国して、輸出する段階に入っている状態なので、いい形で届くとうれしいですね。
――ところで今回限定盤には著作権フリーの音素材を99種類収録していますね。
トクマル 曲のなかにたくさんの楽器が使われているのはわかりますが、それが何の楽器なのかはわからないと思うんです。そこで分解して聴いてもらうのも面白いと考え今回収録しました。これ自体で作品になっているし、気に入ったフレーズが入っているので聴いてほしいですね。実はDISC2も本編と同じくメインという認識なんです。
――音自体を楽しんでほしいということなのかなとも。
トクマル わりとそれは強いと思います。60%くらいはそこかもしれません。あとの40%は……曲を聴いて想像してもらえる余白だとか細かい部分ですね。
――なお、たくさんの楽器を使う場合ソフト音源を使うのが一般的ななか、生楽器にこだわり、かつ自身の演奏にこだわるのはなぜでしょうか?
トクマル 自分で演奏すると自分らしさが出るし、自分らしさの出た音のパーツをかき集めて曲にすれば、より濃いものができる。それは自分の名前を出してソロで活動しているからこそできることだと思います。それに、自分でやることでいろいろな雑念を全部消せるんですよ。
――では曲のなかにはトクマルさんの純粋な部分が入っているのですね。
トクマル 僕のつくってきたアルバムはそういう部分がとても強く出ていると思います。誰でもできるようにはつくってはいますが、それを再現したところで、絶対に同じにはならないと思います。ソフトウェア音源もいいですが、それを使わずに、自分で演奏すればこその部分だと思いますね。本編も音の素材も楽しんでもらえればと思います。
【ニューアルバム】
トクマルシューゴ ニューアルバム
『In Focus?』
すべての要素をうまく統治
柔らかなサウンドにはたくさんの要素が混在。日々の疑問は螺旋階段のようにグルグルめぐり答えは出ない。でもそれでいいと思わせてくれる音が聴こえる。
●限定盤2900円、通常盤2500円 ●11月7日発売 ●Pヴァイン
【プロフィール】
2004年にデビュー。現在までに4枚のフルアルバムを発表。国内外での評価も高く、自身の楽曲制作のほかにCMやTVなどへの楽曲提供も多数行なっている。
関連ページ トクマルシューゴ公式サイト
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