ギガバイト『GV-N65TOC-2GI』 |
GeForce GTX650TiのOC版。実売価格1万7000円前後。 |
2012年10月9日22時、NVIDIAの最新GPU『GeForce GTX650Ti』が正式発表され、同時に製品の販売も封切られた。今年のNVIDIAは消費電力あたりの性能向上を重視した“Keplerアーキテクチャー”を投入し、同様に消費電力あたりの性能で先行していたRADEON勢を各個撃破するような戦略をとっている。
GeForce GTX650Tiは、GTX660と同時に発表された低価格帯のロークラスGPU『GTX650』のやや上に位置するGPUだ。今回はGTX660の発表時のレビュー(関連記事)でカバーできなかったGTX650の評価も合わせ、NVIDIAの最新ロークラスGPUの実力をチェックしてみたい。なお、今回検証に使うGTX660、GTX650Ti、GTX650はすべてギガバイト製のオーバークロック(OC)版なので、クーラーはリファレンス版より大幅に強化されている。
ギガバイト『GV-N660OC-2GD』 |
GeForce GTX660のOC版。実売価格2万3000円前後。 |
ギガバイト『GV-N650OC-2GI』 |
GeForce GTX650のOC版。実売価格1万2000円前後。 |
まずはGTX650Tiのスペックから、すでに発売済みの兄弟GeForceとの違いを確認しておこう。さすがにKepler世代だけあって、TDPは前世代のGTX550Tiよりも抑えられている。補助電源コネクターはGTX650Ti、GTX650ともに6ピン1基となっている。
GTX650TiとGTX650は、GPUを自動的にオーバークロックする機能“GPU Boost”に非対応なのが最も重要なポイントだ。また、メモリーバス幅が128ビットと上位モデルに比べて狭いこと、メモリークロックと容量がGTX660より控えめになっているなど、各所にコストダウンの影響が見られる。
そして、最も3D性能に影響を及ぼすSP数(CUDAコア数)だが、GTX650Tiが768基に対し、GTX650が384基と半分に減らされている。そのぶん、GTX650のほうがコアクロックが高く設定されているが、SP数2倍の差を挽回できるほど高くはない。
また、SP数とコアクロックだけを見れば、GTX650はGTX560Tiより高性能のように見えるが、GTX650TiとGTX650のメモリーバス幅はGTX560TiやGTX560の半分。この差が3D性能にどう影響するかも見どころだ。
GTX650 |
GTX650Ti |
GTX660 |
また、『GPU-Z』を使ってもGTX660とGTX650Ti、GTX650の情報を比較してみた。グレードが1段下がるほどSP数もガクッと減っているが、GTX650だけはクロックが高い点に注目。さらにGTX650TiとGTX650はGPU Boost非対応なので、右下の“Boost”欄に数値の表示がない。
今回検証するGTX660、GTX650Ti、GTX650を裏から見たところ。リファレンス仕様ではどのGPUもショート基板だが、高性能なGPUほど基板を長く設計し、長くした部分に電源の部品をゆったり配置する設計のようだ。また、GTX660はSLIに対応するが、650Ti以下は非対応なのでブリッジコネクターがない点に注目したい。
また、GTX660はヒートパイプ4本だが、TDPの低いGTX650Tiはやや細めのヒートパイプ2本に減らされていた。補助電源コネクターはどれも6ピン1基になっている。映像出力端子は、DVI×2はどれも共通だが、GTX660はHDMIとDisplayPortの組み合せなのに対し、GTX650TiとGTX650はD-Sub15ピンとHDMIという構成になっている。
今回の検証環境は以下。GTX650Tiのドライバーは10月4日時点の最新βを使っている。
●検証環境
CPU:インテル『Core i7-3770K』(3.5GHz)
マザーボード:ASUSTeK『P8Z77-V PRO』(Intel Z77)
メモリー:PC12800 DDR3 4GB×2
SSD:インテル『330 Series SSDSC2CT120A3K5』(120GB)
電源ユニット:玄人志向『KRPW-G630W/90+』(630W、80PLUS GOLD)
OS:Windows7 Home Professional SP1(64ビット)
ドライバー:ForceWare 306.23/ForceWare 306.38(GTX650Tiのみ)/Catalyst 12.8
そして、テストに使ったグラフィックボードは次の通り。今回はファンノイズも見たかったので、GTX660、650Ti、GTX650はすべてギガバイト製で統一している。ただし、それ以外はパーツ調達の関係上メーカーがバラバラだ。今年のGPUはOC前提のものが多いので、旧製品を除きすべてOC版でそろえている。
●検証したグラフィックボード
<GeForce 600シリーズ>
GeForce GTX650Ti(OC版):ギガバイト『GV-N65TOC-2GI』
GeForce GTX650(OC版):ギガバイト『GV-N650OC-2GI』
GeForce GTX660(OC版):ギガバイト『GV-N660OC-2GD』
<Geforce 500シリーズ>
GeForce GTX560Ti:ZOTAC『ZT-50312-10M』
GeForce GTX550Ti:Palit『NE5X55T0HD09-1061F』
<GeForce 400シリーズ>
GeForce GTX460:EVGA『768-P3-1360-KR』
<RADEON HD7000シリーズ>
RADEON HD7850(OC版):ASUSTeK『HD7850-DC2-2GD5』
RADEON HD7770(OC版):ASUSTeK『HD7770-DC-1GD5』
RADEON HD7750(OC版):ASUSTeK『HD7750-1GD5』
ロークラスGPUでも『バトルフィールド3』が遊べる時代に
では、負荷が重いゲームから軽いゲームまで順にチェックしていくことにする。まずは現在最重量級の『バトルフィールド3』。画質は“最高”、解像度は1920×1080ドットに設定。『Fraps』で4面開始時のフレームレートを測定している。
GTX660に比べメモリーバス幅やSP数に低いぶん、GTX650TiとGTX650にはハードなテストになった。しかし、それでもGTX650Tiなら最高画質で動き回れるだけの性能が出せるようだ。最も低スペックのGTX650は、HD7750とHD7770の中間、GTX650Tiは1ランク上がってHD7850と7770の中間という感じだ。従来1万円~1万5000円クラスのグラボではRADEON系が強かっただけに、GeForceでこの層を積極的に攻め始めてきたことがよくわかる。
一方、旧世代との比較をした場合、GTX650Ti/650のポジションはやや微妙だ。まず、GTX650TiはSP数ではGTX560Tiの2倍も搭載しているが、メモリーバス幅の制約がキツく、SP数の多さを活かしきれてない。さらに(OCされた)GTX650と1世代前のGTX550Ti、2世代前のGTX460がほぼ同じ性能な点に注目。GTX550TiやGTX460からパワーアップを狙うなら、最低でもGTX650Ti、可能ならGTX660にしないと性能差を体感できない、ということになる。
次は中量級ゲーム『The Elder Scrools V: Skyrim』だ。画質“Ultra High”、高解像度テクスチャーパックを導入し、解像度1920×1080ドットに設定している。フレームレートは『Fraps』を使い、フィールド移動時に測定した。
Kepler世代のGPUはパワーこそ上がっているが、メモリーバス幅が細め。このゲームではメモリーの帯域がフレームレートに影響を与えやすいため、メモリーバス幅が広いHD7850やGTX560Tiが有利だ。そのため、メモリーバス幅が128ビットしかないGTX650TiとGTX650はかなり苦戦している。ただし、HD7770やHD7750と比べると、最低フレームレートが10フレームほど高く、遊んでいても引っかかる感じがほとんどない。ちょっと高画質化Modを入れて遊びたいなら、GTX650Tiが最低ラインになるだろう。
次は『ファンタシースターオンライン2』の公式ベンチを使ったテストだ。スコアーのほか、『Fraps』で最初のシーン(都市部)のフレームレートを計測してみた。画質は“5”、解像度は1920×1080ドットのフルスクリーン表示に設定している。
GTX650TiやGTX650が、GTX560TiやHD7850より下で、HD7770やHD7750に被せるような位置取りはほかのベンチ結果と同じ。現在の人気ゲームタイトルは、こってりと画面を描き込むゲームよりも比較的描画の軽いゲームのほうに偏っている感じだが、そうしたゲームでは高性能なGPUは無駄になりやすい。軽量級ゲーム中心ならGTX650Tiは良い選択になりそうだ。
最後に『3DMark 11』の結果も載せておこう。PerfomanceとExtremeでそれぞれ総合スコアーを比較する。
このテストではGTX650TiがGTX560Tiをわずかに上回り、HD7770に大差をつけている。このベンチではGPGPU(DirectCompute)のテストもスコアーに加味されるため、現実のゲームでは評価されない部分がクローズアップされためだ。
ゲーム性能はやや良い~ややパッとしない的な位置についたGTX650TiとGTX650だが、今のGPUは消費電力やファンノイズなども製品評価の対象となる。そこで消費電力計測機器『watts Up? PRO』を使い、システム全体の消費電力を、『GPU-Z』でGPU温度を、さらに騒音計でファンノイズを測定してみた。
アイドル時はPC起動から10分後、ゲーム中は『バトルフィールド3』テスト開始から10分後にそれぞれ安定値を計測。室温は28度、暗騒音は31デシベルでファンの排気口から30センチの位置で計測している(各グラフィックボードのファンとCPUクーラー、電源ファンのみ稼動)。
ゲーム中の消費電力はGeForce勢が優秀
アイドル時の省電力性能はあいかわらずRADEON勢が優秀だが、ゲーム中の消費電力はGeForce勢が全体的に有利。ほとんどの製品がOC版なのでリファレンス性能よりもじゃっかん高めに出ているが、ピーク時はRADEON勢と同等、もしくはわずかに優れているといった感じだ。
テストに使ったグラフィックボードはクーラーを強化した製品が多いため、GPU温度は単純に比較できないが、ギガバイトの2連ファンを使ったGTX660とGTX650Tiの冷却力はかなり高い。ギガバイトのGTX650はヒートシンクが小さめなので温度は高めだが、60度なら優秀な部類だろう。
最後にファンノイズ。かなり強烈にファンを回すHD7850以外は、体感的にはどのグラボも大差なかった。アイドル時はむしろCPUのリテールクーラーの音が目立つほど。しいて言えば、ギガバイトのGTX660とGTX650Tiはほかと比べ耳ざわりがソフトな印象。バラック組みに近い状態でテストしてもゲームに集中できた。
まとめ:本気でRADEONを潰しにきた低価格帯Kepler!
新ロークラスGPU『GeForce GTX650Ti』は、コアなゲーマーには物足りないが、軽めのゲームを毎晩ちょこっと楽しみたいライトゲーマーには“ちょうどいい塩梅”の性能になっている。
そしてなんといっても、リファレンス版の想定価格が約1万5000円とかなり値ごろ感がある。現在流通しているGTX560Tiの価格は1万7000円がボリュームゾーン。性能的にはGTX560Tiのほうがやや上だが、GTX650Tiのほうが消費電力が少なく使いやすい。GTX460やHD5770などの“2年以上前のミドルクラス”をリプレースし、DX11世代のゲームを動かすには非常にお買い得なゲーム用GPUと言えるだろう。
■関連サイト
NVIDIA
(10月11日11:30更新)記事公開時のGTX660Tiのスペックに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
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