前回は「アイデアのつくり方」について書きました。今回はそれをもう少しすすめてみたいと思います。
作家やライターを志望していて「書くネタがない」と言うひとがいます。自分は普通の人間で、特別な人と会うこともないし、派手な出来事とかも身の回りに起こらないから、とくに書くに値する出来事の持ち合わせがない、だから書かないのだというのです。お笑い芸人を志望していてこういうことを言っている人もたぶんいるでしょう。
■「ネタ切れ」しない人たち
『ほぼ日刊イトイ新聞』(関連サイト)を主催している糸井重里さん( @itoi_shigesato )は、『今日のダーリン』というコラムを毎日書き続けています。『ほぼ日』は1998年に創刊しているので、これまでに5000本以上を書いた計算です。数もすごいのですが、いつも面白いのがさらにすごいです。もちろん糸井さんは、これだけでなく、日々ほかにもたくさん原稿を書いているはずです。
脳科学者の茂木健一郎さん( @kenichiromogi )も、毎朝ツイッターで連続ツイートをしています(本日2012年10月8日が739回目です)。ぼくも毎朝読んでいるのですが、いつもおもしろいです。少しでも文章を書いたことがあるひとならわかると思うのですが、これは驚異的なことです。毎日、こんなに内容のあることをどうやって書けばいいのか。ぼくのような凡人は気が遠くなります。
さて、すごい人々をすごいとばかり言っていても仕方がありません。どうやったらあんなことができるのかを考えてみましょう。そこに山があるときは、登る方法を考えてみるのがいいクライマーになる秘訣というものです。
考えるべきは、すごい人たちはなぜ「ネタ切れ」にならないのか、という問題です。どうして彼らは、毎日書くことを見つけられるのでしょうか?
彼らの周りにだけ毎日おもしろいことが起こるのかというと、おそらく、そんなことはありません。有名人なので多少はカラフルなことも起こるのでしょうけど、アウトプットはぼくら凡人の何千倍です。1日が24時間なのはみんな同じですから、何千倍も面白いことが起こるということはありません。
ひとはみんな、朝起きたり、ご飯を食べたり、ニュースを見たり、仕事をしたり、人とあったり、本を読んだり、恋をしたり、寝たりしています。だいたいみんな同じです。となると、アウトプットの違いは、世界のほうではなく、世界を見つめる「目」のほうが違うと考えるほうが自然です。
つまり、彼らは、世界を見つめる目の「解像度」が違うのではないでしょうか。解像度が高いカメラを使うと世界がよりくっきり写りますが、彼らの目はぼくらよりもずっと細かく世界をとらえています。同じ物を見ていても、見えているものがぜんぜん違うのです。
次に考えるべきは、どうしたらそうなれるのか、ということです。まったく同じになるのは難しくても、迫る方法を考えて、前に進むためにやるべきことを考えましょう。
■目の解像度を上げる方法
結論から言うと、まずは「書く」ことではないかと思います。アウトプットするようになると、世界を「より細かく見ざるを得なく」なります。そうしないと書くことがなくて困りますから。偉大な表現者は多作なひとがほとんどです。手塚治虫さんは誰よりもたくさんのマンガを描きましたし、向田邦子さんも短い人生の間に膨大なエッセイや脚本、小説を書いています。
こうした人々は、もともとすごい人々だったのは間違いないのですが、書きまくることでさらに「解像度」を上げていったのだと思います。糸井さんや茂木さんに会うことができたら、毎日書くことで自分にどんな変化があったのか、ぜひ聞いてみたいです。
今回のテーマ「世界を見つめる解像度」というのは、「観察力」という言葉に置き換えられます。コラムを書く人は観察力を外の世界に向けるといいし、エッセイを書く人は自分の内面に向けるといいし、物語を書く人は外の世界と内面の両方に観察力を向けてるといいと思います。書く場所は、ブログでもなんでもかまいません、大事なのはそれを続けることです。
あと必要なのは「表現する技術」なのですが、紙幅が尽きました。そのあたりはまた今度!
【筆者近況】
加藤 貞顕(かとう・さだあき)
株式会社ピースオブケイクCEO。すごい人の登っている山に本気で登りたい人は連絡ください。そういうひとを助けるのが僕らの仕事で、そのための場がcakesです。
■関連サイト
・cakes(ケイクス) クリエイターと読者をつなぐサイト
・cakes公式ツイッター:@cakes_PR
・株式会社ピースオブケイク公式Facebookページ
-
1,575円
-
777円
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります