8月29日、独立行政法人産業技術総合研究所と科学技術振興機構は、インターネット上の楽曲を自動解析する音楽鑑賞システム『Songle』を発表した。同システムは『Songle』のサイト(ページ下部にリンク)より無償で利用できる。
本サービスの特徴を以下にまとめる。
・ネット上にあるMP3データ、もしくはピアプロに投稿されている楽曲(歌曲)の内容を自動解析し、コードやメロディー、ビートなどを抽出できる。
・楽曲の解析に基づいて、曲の“サビ”の部分にジャンプできる。
・解析データのある曲から特定のコードを検索できる。
・解析したデータをビジュアライザーで見て楽しめる。
・解析したデータはユーザーが訂正できる。
・自分のウェブページに『Songle』のプレーヤーを設置し、解析したデータを元に派手な演出が可能。
Songleの仕組み |
なお、現在のところ対応できるのは歌曲のみであり、クラシックやカラオケなどの楽器のみで構成された楽曲には対応しない。また、楽曲は歌が入っていれば、英語など他言語の歌詞でも対応できる。楽曲の解析時間は約5~10分前後。一度解析すれば、2度目からはすぐに再生される。なお、本システムの開発者のひとりで産業技術総合研究所 情報技術研究部門 上席研究員の後藤真孝博士によると、楽曲解析の正確さは現在8割前後。極端にテンポの速い曲などは解析しにくい場合もあるという。
●初音ミクの打ち込みに便利!?
Songleにアクセスすると既に解析済みの楽曲が聴ける。解析されたデータは視覚的に色分けされてわかりやすく表示される。
実際の解析データはこんな感じ |
上部のコントロール部は再生ボタンや解析データの拡大縮小、サビや繰り返し部分の頭出しボタンだ。画面内のオレンジ色のバーが歌のサビ部分、また青色のバーはAメロ、Bメロなどのメロディーを繰り返している部分を表わしている。
そして、その下の“Ebm”や“C#m”といった文字は曲のコード。ギターなど楽器をやっている人にはおなじみだろう。その下には歌声のメロディー部分。左端の鍵盤に対応している。MIDIなどの打ち込みをやっている人は見たことのあるデザインだろう。そして、いちばん下の赤い三角形はビート構造、拍と小節の先頭部分。このようにサビの部分を解析するシステムが音楽プレーヤーに搭載されれば、より直感的に自分の聞きたい部分を頭出しできるようになる。iTunesなどの音楽配信サイトでサンプルとして曲の一部を聞かせる場合などにも使えそうだ。
ここでピンときた人もいるかもしれないが、歌声のメロディー部分をこのように解析してくれれば、既存の曲を初音ミクなど、ボカロの打ち込みで表現したい場合に役立つかもしれない。
●ビジュアライザーが超カッコイイ!!
解析したデータは4種類のビジュアライザーで再生できる。従来のビジュアライザーでは、音量や周波数などの成分で表示を生成していたが、本システムの場合には、サビやAメロ、Bメロなどの解析データが使えるため、より楽曲内容に沿った表現ができる。
実際にこの空間をイメージしたビジュアライザーは、よく見るとメロディーやサビの部分などで表現が変わる。この解析エンジンを使えば、カーナビや携帯電話などに搭載された音楽プレーヤーのビジュアライザーがより進化したものになるだろう。
このように解析データを円形にしたものなどが用意されている。本システムはピアプロに登録されている曲をリスト化して聴くこともできるので、クールなプレーヤーとしても使えそうだ。
自分のウェブページにプレーヤーを設置できる |
Songleは、Googleマップなどと同じように埋め込み用のソースコードを生成し、自分のサイトに埋め込むことも可能。サイトをつくるときにソースコードを埋め込み、HTML5対応ブラウザーで開けば、専用プレーヤーで楽曲が再生でき、簡単にサビまでジャンプできる。なお、プレーヤーは現在FLASHでつくられている。一部のAndroid端末では動作するものの動作が重く、基本的にはスマホでは再生できないようだ。スマホ対応やFLASH以外のツールへの転換は今後の課題とのこと。
自分のページ全体にビュジュアライザーのような図形エフェクトを表示できるのもユニーク。これを使えば、曲を再生したときに派手な演出ができる。この部分の処理はJavaScriptで書かれており、サビやメロディーに合わせてウェブページに効果を入れるといったこともできるという。
コード検索 |
Songleはコード検索の機能も搭載。たとえば、“Am,F,G,C!といったコードを入れると、解析済みのデータからそのコードを使った曲が一覧で表示される。
また、“お気に入り”や“プレイリスト”機能もあるため、ピアプロに公開されているか、MP3データがウェブ上にあれば普通の音楽プレーヤーとしても使える。
ログインは、Songleのページからツイッターやピアプロなどのアカウントをトリガーにできる。新たにアカウントをつくらなくてもいいのはラクチン。
Songle自体は産業技術総合研究所が特許をもっているメロディー解析などの技術を組み合わせ、実用的な形にしてみたもの。本格的な活用はまだこれからとのこと。後藤博士は連携したいところはぜひ連絡してほしいとのことだ。この技術を核に音楽プレーヤーなどがより便利に進化しそうな予感がする。
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