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想いをつなぐ編集力

編集者の仕事は「影響力を最大化する」こと

2012年08月27日 16時30分更新

 みなさん、こんにちは。加藤貞顕というものです。

 これまで、いくつかの出版社に編集者として在籍して、雑誌や本をつくってきました。いまは、株式会社ピースオブケイクというデジタルコンテンツの有料配信のしくみをつくる会社を経営しています。

 この『週アスPLUS』の運営主体である、アスキー・メディアワークスに在籍していたこともあり、それが縁でこの原稿を依頼されたというわけです。

 アスキー・メディアワークス在籍時は、パソコン雑誌や書籍『英語耳』シリーズを担当し、その後、別の会社では書籍の編集をしていました。とくによく売れた本をいうと『スタバではグランデを買え!』や『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』などがあります。また、それといっしょに電子書籍の編集などもやることになり、今の会社をつくるに至るのですが、それはまたいずれ。

 この連載では、編集の仕事を通じて体験した「伝える」ということのおもしろさと難しさについて、そしてネットによって、本、雑誌、メディアはどう変わっていくのかといったあたりを、みなさんといっしょに考えていきたいなと思っています。みなさんの仕事や生活のヒントにしてもらえればうれしいです。よろしくお願いします。

 

■なぜ本をつくるのか

 さて、まず初回は、編集者の仕事について、すこし知っていただこうと思います。

 編集者、という職業があることを知らない人は、たぶん少ないでしょう。しかし「編集者ってなにをする仕事?」と聞かれると、困ってしまう人も多いのではないでしょうか。じつはぼく自身、そう聞かれると説明に困ることがあるのです。

 わかりやすい答えは「本をつくる仕事」です。本、雑誌、テレビ、インターネットなどの様々なメディアから情報を得たり、いろいろなひとに会って話を聞いたりして、企画をたてます。それをひとに依頼して文章を書いてもらったり、写真を撮ってもらったり、デザインをしてもらったものを組み合わせて、印刷して、本ができあがります。

 そして、できあがった本は、売らなくてはなりません。かなりいろんなプロセスがあって、編集者はこの過程の大部分にかかわります。だから実際には、構想からできあがりまで、数ヶ月から数年を要することもあったりします。

 ただ、本はあくまでも著者さんのものです。ぼくたち編集者は裏方なので、名前が表に出ることはあまりありません。では、なんのためにこの大変な作業をしているのかといえば、やはり「伝えたい」からです。おもしろいひと、おもしろいアイデア、おもしろい物事をひとに伝えたくて、ぼくたち編集者は昼夜を問わずがんばっているわけです。

 

■「影響力」について考えてみよう

 以前、岡田斗司夫さんの『評価経済社会』という本を編集しました。「これからはお金を中心とした貨幣経済から、『評価』を中心にした評価経済に社会が移行していくのだ」ということを説明した、とても刺激的な本です。

 本のオビやカバーの折り返しにある宣伝文を考えるのは編集者の仕事なのですが、ぼくはこう書きました。

twitterのフォロワーが
100万人いるひとなら
1億円をかせぐのは難しくない。
逆に、1億円を持っていても
twitterのフォロワーを
100万人にするのは難しい。
“評価” > “お金” 時代を
やさしく強く生き抜くために
どうしたらいいのか?

 たしかに、評価ってすごい力を持ちつつありますよね。twitterのフォロワーだけでなく、Googleの検索結果で上位に表示されるかどうかも、評価を形にしたものです。これもお金では買うことができません。評価というのは、メッセージがたくさんのひとに伝わった結果、形成されるものですよね。

 これについて、ヒントとなる図をつくってみました。

編集者の仕事は「影響力を最大化する」こと

 グラフの縦軸は、メッセージの強さや深さを表しています。横軸は情報やメッセージが広まった数。そして、深さと数を掛けあわせた領域(オレンジや水色の部分)が、グラフの面積として表示されます。この部分は、メッセージが伝わった量なわけで、メッセージの「影響力」を意味します。

 本でいうと、オレンジ色の部分は内容は深いけど数はそんなにたくさんは売れない本。水色は内容の深さはオレンジの半分くらいだけど、数がたくさんなので伝わる量=影響力の面積はずっと大きい。ぼくが編集した本でいうと、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』とその原典である『マネジメント』の関係は、水色の四角形とオレンジ色の四角形の関係に近いのかもしれません。

 もちろん、面積の増やし方はいろいろあります。上にずーっと伸ばす方法だってあるだろうし、横にずーーーーっと引き伸ばす方法だってある。両方とも伸ばす方法もきっとあるでしょう。それぞれの引き伸ばし方も、いろいろなやりかたがあっていいと思います。本の個性というものは、その四角形の形に現れてくるのだと思うし、ぼく自身ひとりの本好きとして、いろいろな形の本に出会いたいと思っています。

 というわけで、冒頭の「編集者ってなにをする仕事?」という問いに対しては、「影響力の面積を最大化すること」が現時点でのぼくの答えです。

 第一回目は編集者の仕事について書いてみました。みなさんにうまく伝わったでしょうか?

 ではでは、今日はこのへんで。

 

【筆者近況】
加藤 貞顕(かとう・さだあき)
株式会社ピースオブケイクCEO。デジタルコンテンツの有料配信プラットフォームのcakes(ケイクス)をつくる日々です。告知サイト、ぜひ見てください。

■関連サイト
cakes(ケイクス) クリエイターと読者をつなぐサイト
cakes公式ツイッター:@cakes_PR
株式会社ピースオブケイク公式Facebookページ

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