地球で暮らす異星人を監視する秘密組織“MIB(メン・イン・ブラック)”のエージェントの活躍を描く人気シリーズが10年ぶりに復活。1997年の第1作、2002年の第2作に続き、メガホンをとったバリー・ソネンフェルド監督に話を伺いました。
バリー・ソネンフェルド
『メン・イン・ブラック3』監督
PROFILE
1953年、米ニューヨーク州生まれ。『ブラッド・シンプル』(’84)で撮影監督を務め、『アダムス・ファミリー』(’91)で監督デビュー。『メン・イン・ブラック』(’97、2002)に続き、メガホンをとる。
週アス:今回は大きな金魚のようなエイリアンが出てきますが、ゴキブリやミミズなど、グロテスクなエイリアンが登場するのは『MIB』のお約束なのですか?
ソネンフェルド監督:このシリーズで大切なのはウィル・スミスをいかにベタベタにするかということなんだ。ウィルはベタつくのが大嫌いなので、僕は必ず彼をベタベタにするようにしています。
トミー・リー・ジョーンズが中華料理店で戦うときに使うエイリアンだとか、キュートなエイリアンも出てきますよ。今回、いちばんお気に入りなのは、未来の可能性が見えるグリフィンです。僕は“量子力学のエイリアン”と呼んでいます。
週アス:10年ぶりに『メン・イン・ブラック』が見られてとても嬉しかったのですが、Zとフランクが出てこないのが残念です。
ソネンフェルド監督:今回はトーンでいうと第1作に近いですね。『メン・イン・ブラック2』はちょっとお笑いが多かったと個人的には思っているので。
第3作を作るにあたって、Zとフランクとジーブスは登場しないでおこうと決めました。『メン・イン・ブラック3』を見る方に「ああ、見たことがある」と思ってもらうよりも、何か新しいものを楽しみにして欲しかったからです。ただ、あなたのようにフランクに会いたいと言う人のために、実はフランクはちょっとだけ出てるんですよ。
週アス:『メン・イン・ブラック』シリーズはアクションコメディーですが、心に残って忘れられないのは、第1作でKが35年間、恋人を思い続けているなど、感動的なエピソードがあるからだと思います。
ソネンフェルド監督:『メン・イン・ブラック』で重要なのは、キャラクターとユーモア、そして今おっしゃったとおりエモーションです。アクション、アドベンチャーの要素はあるんだけど、決して『トランスフォーマー3』にはならないわけです。僕らが得意なのはそれではないし、僕らが描こうとしているのは、JとKの関係性の部分です。
週アス:第1作の公開は1997年です。15年間でCG技術は大きく進歩しましたが、それによって映画制作に違いはありますか。
ソネンフェルド監督:クリエイティブなプロセスは15年前とまったく変わっていません。ただコンピューターのパワー、スピード、ストレージが今は格段に良くなっているので、より低コストで使うことができるようになりました。
もともとキャラクターやエイリアンにCGを使うのはあまり好きではなくて、エイリアンや悪役がちゃんとそこにいて、役者と撮影できるほうが好きです。全部グリーンバックでテニスボールだけという撮影はやりません。
CGを使うのは、セットの延長線上にある部分や、何もないところに過去の風景を作り出すときです。今回でいえば、ロケットの発射シーン、クライスラービル、今はもうない野球場のシーンを全部CGで作成しています。これはコスト的には第1作と第2作ではありえません。絶対に無理でした。
1960年代のマンハッタンのミッドタウンは全部CGですが、ワンショットのレンダリングに1週間かかっています。今のコンピューターの速さでもそれだけ時間がかかる。変更したいと思っても1週間待たないといけません。昔だったらありえないよね。そこがいちばん大きな差かな。
週アス:先ほど名前が出たグリフィンは本作のキーとなる人物ですね。
ソネンフェルド監督:量子力学や量子物理学にはもともと興味があったんだけど、今回のグリフィンは科学者でもあり、スピリチュアリストでもあるというところが、とても気に入っています。最初に配役を考えたときはスコセッシ監督がいいんじゃないかと思ったんだ。
グリフィンを演じているマイケル・スタールバーグは、コーエン兄弟の映画にも出演している俳優さんですが、最初のころ、セリフをゆっくりとしか話してくれなくて、毎日「もっと早く話して」と言い続けたんだ。1週間たっても変わらなかったので、「君は量子力学的なエイリアンなわけだよね。未来の可能性が見える。君が文章を語り始めたら、セリフが終わらないうちにその可能性がなくなってしまうかもしれない。だから早く話すんだよ」と説明したら、「あー、なるほど」と言って、それからは早口で演じてくれるようになりました。
週アス:彼のように良い未来も悪い未来も同時に見えてしまって、自分では選ぶことができないのは幸せなのでしょうか。
ソネンフェルド監督:僕も彼は不幸だと思う。すべての未来が見えてしまってその可能性に圧倒されてしまっているよね。でも、今日傘をもってくれば雨に濡れなかったのにと思ったとしても、傘を取りに戻ったときに滑って怪我をするかもしれない。バスに乗り遅れて結婚するべき相手と出会えなかったかもしれない。人間にはいろんな可能性があるわけで、必ずしもひとつの選択によって不幸になるわけではありません。
グリフィンが我々、観客に伝えようとしているのは、たくさん可能性がある中から正しいと思うものを見つけて、それとともに生きるということ、自分の選んだことをまっとうするということだと思います。彼がミラクルについて語りますよね。そのセリフに僕は未来に対する楽観性を感じます。
↑ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのコンビが再集結。1969年にタイムスリップしたJは、若き日のKに出会う。 |
メン・イン・ブラック3
●公式サイト
●5月25日よりTOHOシネマズほかにて全国公開
Photo by WILSON WEBB -(C)2011 Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
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