近年ではテレビ番組の視聴率が落ちている──。ネットではそうした声を割と見かける機会も多いが、実際のところはどうなのだろうか? 一般社団法人メディア事業開発会議(MEDIVERSE)とアスキー総合研究所は25日、都内にてワークショップ『「今、TVを見ているのは誰だ」1万人調査データでフォーカスする顧客行動』を実施。アスキー総研 遠藤諭所長が、アスキー総合研究所が販売している調査資料『MCS(メディア&コンテンツ・サーベイ)2012』を用いて、2011年におけるテレビ視聴の傾向を語った。
プレゼンしたのは遠藤諭所長。冒頭では「震災の影響もあったりして、2010、2011年でメディアが激変した」と語っていた。
『「今、TVを見ているのは誰だ」1万人調査データでフォーカスする顧客行動』と題したワークショップ。広告業界を中心に30人ほどが集まった。
まず変わったのはテレビ自体。通常、テレビの需要は800万台程度しかないのに、アナログ地上波が終わった2011年7月の前には2500万台近くのテレビが出荷された。「この2年半ぐらいで大型化し、レコーダーではなくテレビの機能で録画するようになるなど、テレビを取り巻くいろいろな環境が変わってきている」と遠藤所長。以下の6つのポイントでMCS 2012を解説していた。
(1)2010年から2011年にかけて、全世代で視聴時間が減っている
↑2010年末から2011年末で、テレビの視聴時間は17.9分も減っている。一方でスマホの所持率は167%増えた。 |
↑性別/年代別で見ても落ち込んでいることがわかる。注目してほしいのは、女性で高齢の方の落ち込みが激しいこと。「東日本大震災があって、テレビを見る気分にならなかったという影響があるのでは。映画も同じだけど、映画館から離れると予告編を見なくなり、次への導線が失われる」と遠藤所長。 |
↑1日で2、3時間とテレビを観る人が減って、1時間未満しかテレビを観ない人が増えている。 |
↑地域別で見ると北海道の落ち込みが激しい。なお、東方のデータは被災地では調査していない。 |
(2)テレビは主婦メディアである
(3)テレビは“個メディア”になっている
↑ラーメンが“個食”といわれるように、テレビはすでに一人で見る“個メディア”になっている。遠藤所長は「番組自体を主婦か個人向けに特化してもいいぐらいじゃないのか」とコメント。 |
↑25%は家族がいるにも関わらず、ひとりでテレビを観ている。 |
↑「兄弟で見るのはテレビ、友達や恋人とは映画というクロス関係にある」と遠藤所長。 |
↑さらに子供がいるという31.8%にいっしょに観るかと調査した結果、半数は子供とテレビを観ていないことが判明。遠藤所長は「子供が親とテレビを観るのは、子供側が気を使ってるから。だからいっしょに観てるからといって、理想的な家庭かどうかはわからない」と語る。 |
(4)録画機能付きテレビで録画文化が変化しつつある
↑テレビの買い替えもあって、ファミリー層に録画機能付きテレビがある状態に。 |
↑全年齢でテレビの録画機能を使ってる。 |
↑20代は録画しない層が約4割。 |
(5)20代のメディア行動がかなり特徴的
↑20代、特に大学生やフリーターの行動がほかのクラスターに比べて特殊だという。テレビを見るのは、リビングではなく自分の部屋が多い。 |
↑利用してる機器で見ると、テレビがあまり使われていない。 |
↑何より特徴的なのは、ネットの動画視聴に費やしてるということ。全年齢で見るとYouTubeだが、20代はニコニコ動画がウケてるとのこと。 |
ちなみにオタクの割合でいうと、20代はかなり多くて、30代は少し下がり、40代でまた上がるという曲線を描くという。20代が多いのは、10代後半の時期に観るテレビ番組が二次元のアニメが中心で、子供向けの実写モノは10歳以下ばかりだったということも影響しているそうだ。
(6)今後、スマホやソーシャルメディアが影響する
↑スマホを持つ割合も20代がピーク。 |
↑今年就職したのは、大学に入った頃にみんなでmixiに登録した世代。これからは子供の頃からケータイやネットがあったソーシャルネイティブな層が出てくる。 |
↑講演の後には『MCS 2012』のウェブ版に実際に触れるワークショップも実施していた。MCSを使えば、ハイブリッド車の購入意向者が好むテレビ番組が『ニュースウォッチ9』ということなどが調べられる。 |
↑簡単な操作で資料をグラフ化できるウェブ版、3重クロスなど複雑な集計にも対応したWindows版を用意。価格はいずれも20万円。7つの分野別パッケージも9万円で販売する。 |
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります