角川映画の劇場版アニメ『ももへの手紙』の完成披露試写会が4月10日、日本青年館で行なわれた。沖浦啓之監督(代表作『人狼 JIN-ROH』)が、第2作目として約12年ぶりに手がけたアニメーション作品だ。
「何て書きたかったの? お父さん――」
舞台は瀬戸内海の汐島。11歳の少女は、ケンカ別れしたまま事故で亡くなった父親の部屋で“ももへ”とだけ書かれた書きかけの手紙を見つける。母親とともに東京を離れ、初めて訪れた自然ゆたかな瀬戸内の島。田舎暮らしに不安を抱えていたももの前に突然現われた“見守り組”と名乗るイワ、カワ、マメという間の抜けた妖怪たち。深い悲しみを心に抱きながらも、前へ進もうとする母子の姿を、とても優しく穏やかな視点で描いた物語だ。
作画監督は安藤雅司氏(『千と千尋の神隠し』)、美術監督は大野広司氏(『魔女の宅急便』)。制作はプロダクション I.Gで、やわらかな表情、躍動感のある動き、自然の力強さをこれでもかと再現している。日本映画としては初めて、ニューヨーク国際児童映画祭で長編大賞を受賞。世界での評価も高く、韓国、香港、台湾に次いで、米国での公開も決定した。
完成披露試写会には舞台挨拶として、沖浦啓之監督のほか、優香さん(母親役)、美山加恋さん(もも役)、西田敏行さん(妖怪イワ役)が登場。
手紙が物語の軸にあることから出た、「今まででいちばん印象に残っている手紙は?」という質問に、優香さんは、17歳で仕事を始める際、たった1度だけ父親から手紙をもらったエピソードを語ってくれた。「……心のこもった手紙で、“これからこの世界で頑張っていくんだね”ということと、“小さいころからお父さんは君の笑顔でいっぱい救われてきたよ”と、それは自分の背中を押してくれる、あたたかい手紙だった」とのこと。
「最近、人間の役をあまりやっていない(笑)」という西田敏行さんは、中一の時にペンフレンドの手紙を大事に学校に持っていったら友人に見つかり、黒板に内容を書かれたうえ、“こういう手紙を学校に持って行っちゃいけない”と先生に怒られたことがあるといったエピソードで会場を沸かせた。その、気になる手紙の内容はというと、「僕の飼っているウサギが子を産みました。3匹います。そっちはどうですか?」といった、ある意味衝撃的な?内容。
また、手紙をあの世に届けてほしいなという思いはどこかにあるとしたうえで、「小さいころ、母親の愛情が少し重荷になった時期があって、今思うと誰でも通過する時期なんだろうと思うんだけど、ひと言、(あのときは)“ごめんね”って言いたい気持ちはありますね」と語ってくれた。
続いて舞台には杉並児童合唱団が登場し、原由子さんによる主題歌『ウルワシマホロバ~美しき場所~』をフルコーラスで合唱。
「お父さんを想うももちゃんの気持ちに、私自身の大切な人だったり、美しい故郷への想いをプラスして、心を込めて歌わせていただきました」と、原さん本人のビデオメッセージが流れ、会場は拍手で包まれた。
優香さん「この映画はとても気持ちのいい映画です。見終わった後に今まであまり話すことのなかった家族の話をいっしょにしていただけたらいいなと思います」
西田敏行さん「7年の歳月をかけてつくられた情熱と思いが作品のワンカットワンカットすべてに込められています。監督には敬意を表したいと思っています」
美山加恋さん「心温まる、愛情のたくさんつまったすばらしい作品です。たくさん笑ってたくさん泣ける、そんなすばらしい映画です」
沖浦啓之監督「すばらしいキャスト・スタッフに恵まれてできた作品です。真面目な話でもありますが、結構砕けた映画にもなっておりますので、気楽に楽しんでもらえたらうれしいです」
『ももへの手紙』(関連サイト)
4月21日(土)丸の内ルーブルほか全国ロードショー
配給:角川映画
美山加恋 優香 西田敏行 山寺宏一 チョー
原案・脚本・監督:沖浦啓之
作画監督:安藤雅司 美術監督:大野広司
主題歌:原由子『ウルワシマホロバ~美しき場所~』(タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント)
制作:プロダクション I.G
配給:角川映画
助成:文化芸術振興費補助金
©2012 『ももへの手紙』製作委員会
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