アイドル専門レーベルの『T-Palette Records』を立ち上げるなど、とてつもない勢いでアイドル分野に注力するタワーレコードが、ついにアイドルイベントを主催! 2月28日に Zepp Tokyo で開催された『TOWER RECORDS Presents POP'n アイドル』は、2012年におけるアイドル戦国時代の最新動向を示す、絶好のショーケースとなったと言えよう。
ガチヲタで知られる嶺脇社長の就任以来、アイドル路線を拡充してきたタワーレコードにとって、POP'n アイドルはいわば必然ともいえるイベント。ほかにもアイドルイベントは数多くあれど、POP'n アイドルはそのラインアップに、タワレコらしさ(つまり嶺脇イズム)が体現されていたのではないだろうか。
『Pop'n アイドル』はタワーレコードが展開するアイドル・キャンペーンの名称でもある。 |
バニラビーンズ
参加5組が全員集合したオープニングに続き、トップバッターを務めたのはバニラビーンズ。T-Palette Records の第一弾アーティストである彼女たちはこの日、その独特な存在感を存分に発揮していた。
登場曲のインストをのぞけばわずか3曲のパフォーマンス。そのなかに彼女たちは初期の曲(サカサカサーカス)、最新曲(トキノカケラ)、そして代表曲(ニコラ)を織り交ぜ、見事に Zepp Tokyo を北欧色に染め上げてみせた。そのパフォーマンスたるや、さすがである。
バニビの曲はアイドルらしいのか? そもそも彼女たち自身はアイドルなのか? そんな質問が愚問であることは、誰よりも会場を埋めたファンたちが知っている。だからこそ、ふだんは熱いMIXやジャンプで自己表現するファンたちも、バニビの前ではうれしそうにポージングするのである。
いつもどおり、さわやかな北欧の風をポージングに載せて送りこんだバニラビーンズ。誰しもが好きになるユニバーサル感はさすがだ。 |
©TEPPEI |
そんなバニビはアイドル戦国時代の真っただ中で、誰とも刃を交わそうとしない。いみじくもイベント後に掟ポルシェがツイートしていたように、バニビは「アイドル戦国時代にレフリーで参加しているような、本来無かった別枠」なのだ。
それゆえ、各アイドルたちがパフォーマンスを終えるたび、その余韻を引き取るかのように舞台袖から現われ、軽妙なトークで場の熱をさます MC の役割をこなせるのであろう。おかげで次に登場するアイドルは、自分たちのステージに集中できるのだ。
これは決して簡単な仕事ではない。アイドルに近く、それでいて特定のアイドルと馴れ合いにならない、そんな微妙な距離感が要求される。そんな難しい立場を、ホンの2年前までマイナーな存在だったバニビがいま、危なげなくこなしている。
これもまたアイドル戦国時代における、ひとつの勝ち戦なのかもしれない。こんなシアワセなポジションにたどり着いたのは彼女たちが、きっと沢山のありがと。を言い続けてきたからだ。
そんなバニビは4月11日にニューシングル『チョコミントフレーバータイム』をリリース。シャーベットカラーの新たな私服にも注目だ。
これがニューシングル『チョコミントフレーバータイム』用の私服。今年流行のシャーベットカラーを効果的に取り入れている。 |
■セットリスト■
VanillaBeans(インストルメンタル)
サカサカサーカス
トキノカケラ
ニコラ
LinQ
T-Palette Records の第二弾アーティストにして、20人を超える大所帯の『LinQ』。2月29日に待望のシングル『さくら果実/Sakura物語』が発売され、九州を拠点とする彼女たちはいま、首都圏で精力的にプロモーション活動を行なっている。
とにかく元気な笑顔がステージを明るく照らす LinQ。初見のファンもこのパフォーマンスを観れば幸せな気持ちになれるはずだ。 |
©TEPPEI |
そのLinQはまだデビュー1年に満たない、新人グループだ。正直なところを言えば、パフォーマンスのレベルは高くない。腕の角度はそろわず、動き出しのタイミングはバラバラ。ステップは単調で、決めポーズのあとにホンの1~2秒ガマンすることもできない。
にも関わらず LinQ のステージは、観る者に奥底から湧き上がる多幸感をもたらしてくれる。その懸命さを見守ってあげたいと思わせるなにかがそこにある。単なる未熟さとは次元が違う、“成長中”という未完成さを感じさせてくれるのだ。
このあとに登場したスパガや女子流が高校野球の全国大会出場校とするなら、LinQ はさながら地方予選の決勝進出校だ。まだスポットライトは当たっていないかもしれないが、そのステージがもたらす感動は、大手事務所によって訓練された先輩たちのパフォーマンスに、なんら劣るところはないのである。
ラストの『カロリーなんて』では、全員そろってのラインダンスふうのステージを展開。こういうのを「元気をもらう」って言うのだろう。 |
©TEPPEI |
その感動の源泉はおそらく、汗と“覚悟”だろう。汗はウソをつかない。間違いなく LinQ は、他のアイドルに負けないだけの汗(と涙)を流してきたはずだ。それは新曲『さくら果実/Sakura物語』を披露した際の完成度からして、明らかである。
そして、覚悟。最年長のひとり一ノ瀬みくは、イベント後に自身のブログにて、他のアイドルたちに圧倒されたことと会場に萎縮したことを告白しつつ、他のアイドルを観て勉強できたこと、そして、夢見ながら踊ったことを綴っていた。その意気やよし。いまの立ち位置を認める覚悟は、成長へのステップでもある。
そんな LinQ は4月17日、Zepp Fukuokaにてデビュー1周年記念のワンマン・ライヴ『豚骨革命! 濃すぎたらごめんたい!』を開催する。バニビにうながされ「ワンドリンクは豚骨ラーメン!」とのジョークを飛ばした彼女たち。福岡代表の決勝大会に勝ってほしいという願を抱くのは、一部のファンだけではないだろう。
■セットリスト■
ハジメマシテ
チャイムが終われば
さくら果実
Sakura物語
カロリーなんて
SUPER☆GiRLS
この手のアイドルイベントで観るスパガは、実に正統派のアイドルグループだ。CM効果もあって誰しもが口ずさめるヒット曲(MAX!乙女心)をもち、きっちり揃ってキビキビしたダンスはチアリーディングのような爽快感をもたらし、なにより美少女ぞろい! ビジュアルの良さは恐れ入るほどである。
キビキビとしてステージで、自信に満ちたパフォーマンスを見せたSUPER☆GiRLS。妹キャラから女子大生までさまざまな美少女を取り揃えております! |
©TEPPEI |
だが、曲者ぞろいのアイドル戦国時代では、その正統派ぶりがアダになることもある。なにごとも及第点のため、突出したところがないのだ。美少女ぞろいという特長も、各メンバーの美しさが際立たないという効果を生み出しかねない。
その点を差し引いても、この日のスパガは輝いていた。ひとつには、2月5日に日本青年館でリベンジ公演を成功させた体験が大きいのではないだろうか。アイドル戦国時代が始まりかけたころ、目標動員人数に達する見込みがないとしてコンサートを中止した、苦渋の決断へのリベンジだ。
スパガの公式サイトにはいまでも、その「コンサート中止のお知らせ」が載っている。挫折の記録は、彼女たちがさらにビッグになっていくために、忘れてはならない記憶なのである。それが彼女たちの力になっていることは、この日のステージを観たファンなら実感できるだろう。
そのリベンジ公演を収録したDVDが、公演からわずか52日後という異例の早さで発売されるのは、スパガが次のステージに踏み出した証拠だ。いまや立派な大名となった彼女たちは、さらなる勢力拡大をにらみ、今回のPOP'n アイドルでも新規ファンを獲得したに違いない。
ビジュアルの良さとダンスの気持ちよさで思わず見惚れるステージ。開始時は大きすぎた音量が中盤では上手く調整されていたのはスタッフさんのグッジョブだ。 |
©TEPPEI |
実際、スパガのステージは変幻自在だ。フレーズごとにリードボーカルを替え、声質の違いを際立たせながら、グループとしての一貫性に揺るぎはない。12人のメンバーが分かれては融合するフォーメーションは実に有機的で、コール・ド・バレエ(群舞)のような優雅さすら感じさせる。
そして、角度とタイミングのそろったダンス。ラスベガスのショーと言ったら言い過ぎかもしれないが、統制されたダンスからはグループの一体感が感じられる。そして2月1日発売の2ndアルバム『EveryBody JUMP!!』の表題曲では、ファンたちが待ちに待った一斉ジャンプ! 『MAX!乙女心』からの流れは、セットリストの組みかたにすら貫録を感じさせた。
■セットリスト■
女子力←パラダイス
NIJIIROスター☆
夢の引力
恋愛ルール
MAX!乙女心
EveryBody JUMP!!
Be with you
東京女子流
この日、最大のハンデを負っていた東京女子流。歌唱力でグループをけん引する小西彩乃が右脚骨折で欠場(早期の回復を祈念しております)。しかも、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生の3人はインフルエンザで2月25日のイベント(わずか3日前!)を欠場したばかりだったのだ。
小西の欠場は周知されていたものの、インフルエンザの件は知らない人も多かったはず。だが、このステージを観て彼女たちが病み上がりだと気付いた人が、いったいどれだけいただろうか? これがプロの仕事というものなのだ。
まるで最初から4人編成なのではと思わせる、隙のないフォーメーションを見せた東京女子流。短期間で人数変更を仕上げてきたその努力はさすが。 |
©TEPPEI |
もちろん、女子流を定点観測しているファンにとっては、口惜しいライブだったかもしれない。だがその心配は無用。女子流の素晴らしさは、インフルエンザでも侵すことができないということを、むしろ証明してみせたパフォーマンスだった。
バニビを別とすれば、今回のPOP'n アイドルで最少人数となる4人での出演となったが、いまの女子流に人数のハンデはない。むしろ、それまでと同じステージとは思えないほど、わずか4人で存分に舞台を使いこなすパフォーマンスはさすがだ。
そして4人のステージは、欠場中の小西へのメッセージでもあった。チア風のポンポンをもってのパフォーマンス(新井はボンボンと言ってました)が印象的な『頑張って いつだって 信じてる』では、本来なら小西から始まるエールの順番を入れ替えたうえで、ラストの「大好き!」を4人で斉唱。そう、ボクらも小西彩乃が大好きだ! 応援してるよ、ファイト!!
若いうちに完成されたタレントにありがちな背伸び感を感じさせないのが女子流の良さ。カッコいいのに若さハツラツなんだから、オジサンはメロメロです。 |
©TEPPEI |
また、曲間のMCではちょいちょいと「おんなじキモチだよね」、「ひまわりのようだね」とのキーワードを挟む小憎さも忘れない。それでいてこの日はあえて『ヒマワリと星屑』を封印。小西が復帰した時のためにとっておく、という心意気がうれしいではないか。
ラストの『Attack Hyper Beat POP』では照明を落とし、メンバーが強い光軸のライトで客席を照らすという粋な演出も披露。長大な光のビームは、筋肉少女帯の『サーチライト』を思い起こさせたと言ったら年齢がバレそうだ。
■セットリスト■
Don't Be Cruel
鼓動の秘密
Limited Addiction
Rock you!
頑張って いつだって 信じてる
W.M.A.D
おんなじキモチ
Attack Hyper Beat POP
スマイレージ
この手のアイドルイベントに、ハロプロ勢が参戦すること自体、異例な展開だ。それを可能にするのはやはり、主催者であるタワーレコード嶺脇社長の人徳であろう。
ある種、独特な世界を持つハロプロゆえ、アイドル戦国時代にあっても、スマイレージは初見というファンは決して少なくなかったはず。誰でも知っているのに観たことがない、という不思議な立ち位置に加え、トリという大役を任せられたスマイレージはこの日、かつてない気迫を見せていた。
並び的にアウェイでもおかしくなかったスマイレージだが、問答無用のパフォーマンスでファンを熱狂させた。この時間にロビーにいたあなた、絶対に損してるよ! |
©TEPPEI |
1曲目の『○○がんばらなくてもええねんで!!』では、ステッキを小道具にしてのパフォーマンス。小道具を使ったこの手の演出は古いようで、実際に実践しているグループは少ない。それだけで、スマイレージのオリジナリティーが際立ってくる。
とにかくこの日のスマイレージはアグレッシブだった。和田彩花や福田花音が、新規ファンを獲得に来たことを臆面もなく宣言し、他グループのファンを大向こうに回してのステージだ。それができるのも、彼女たちの基礎体力の高さゆえである。
とにかく彼女たちの底力はすさまじい。新加入メンバーが当たり前のようにソロを歌い、ダンスではやじろべえのように上げた片足を横に蹴りだす。これを単純な振り付けだと思った大間違い。体幹がぶれることなく、6人全員が同じタイミングで同じ角度で蹴りだすのは、ダンス専門集団でも難しい高度な技なのだ。
それを可能にするのは、途方もない訓練の積み重ねだ。LinQ の項でも触れたが、汗はウソをつかない。振付師の竹中夏海氏が評するように、彼女たちのダンスは「すごく難しいことをやっているのに、簡単そうに見える」のだ。ねこやら尻振りとは次元が違うのである。
6人編成ながら、ステージが狭く感じるほどの存在感。これがハロプロの凄みなのだ。ハロヲタになってしまう理由が実感できたステージだった。 |
©TEPPEI |
でも、アイドルを楽しむのに難しい理屈は不要だ。スマイレージの努力を心の隅に留めおきつつも、目の前で展開されるハッピーな瞬間に身をゆだねさえすればいい。そうすれば、この日 Zepp Tokyo を訪れた者の耳には、「チョトマテクダサイ!」のフレーズがこびりつくことは間違いない。
ふだんのハロプロライブとは異なり、MC を短めにして挑んだスマイレージ。彼女たちがトリを務めたのは決して嶺脇社長の配慮などではなく、当然の並びだったことは、この日のステージを観たファンなら納得できたことだろう。
■セットリスト■
○○がんばらなくてもええねんで!!
ショートカット
パン屋さんのアルバイト
サンキュ!クリームブリュレの友情
オトナになるって難しい!!!
夢見る15歳
チョトマテクダサイ!
同じ時給で働く友達の美人ママ
有頂天LOVE
スキちゃん
一部のファンからはすでに“神イベ認定”と高評価のPOP'n アイドル。早くも次回の開催が6月23日とアナウンスされたのはうれしい驚きだ。場所は同じ Zepp Tokyo。しかも次回は土曜日である。次は誰が、何組が出場するのか。いまからスケジュール帳に予定を書き込んでおくべきだろう。
●関連サイト
T-Palette Records
タワー企画イヴェント〈POP'n アイドル〉の詳細レポート
Pop'n アイドル by TOWER RECORDS(Facebook)
-
1,300円
-
1,000円
-
1,000円
-
3,850円
-
3,150円
-
3,203円
-
3,371円
-
Rock you! / おんなじキモチ -YMCK R...
1,260円
-
Rock you! / おんなじキモチ -YMCK R...
1,592円
-
Rock you! / おんなじキモチ -YMCK R...
1,546円
-
1,050円
-
1,478円
-
1,478円
-
1,478円
-
1,050円
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります