■担当者を直撃! レッツノートが丈夫なまま3分の2の薄さになった秘密
レッツノートの15周年、そして、SXシリーズの発売を記念し、新機種の開発にかかわったエンジニアと話をしてみようということになった。アスキー総研の遠藤所長と、週刊アスキー宮野編集長、そして山田祥平という3人組で大阪・守口のレッツノート開発拠点を訪ねてきた。
■堅ろう性・機能美は維持薄さの限界に挑戦
山田 今回、一新された天板のデザインですが、ポイントはどこですか。
田中 会社に入ったばかりのころは、なんでこんなボンネットみたいなカッコ悪い形なんだろうと思っていましたよ。でも、設計を続けていくうちにこれが機能美だと思うようになったんですよ。
遠藤 丈夫が最優先ということなんですよね。
田中 はい、私は2003年の入社で、配属早々W4、T4の開発に参加し、体中にセンサーを貼り付けて満員の電車に乗り込み実験をしました。ですから、レッツノートの丈夫さが決してオーバースペックではないことを身をもって知っています。
西村 最初にレッツノートを見たときはゴツゴツしているなぁと思っていたのですが、そのゴツゴツが機能を表わしていることをユーザーが理解していることがわかったんです。タフに見えるんですね。だから、フラットにするとそれを不安に感じてしまう可能性があるんです。
宮野 それなのに今回は前の3分の2の薄さになったんですよね。本当に大丈夫なんですか(笑)。
田中 開発をスタートするときに、多方面のお客さんをヒアリングしたのですが、実は薄くすると壊れやすくなるから変えないでほしいって声が大きかったんです。だったら同じ強度で薄くすればビックリしてもらえるかなと考えました。
遠藤 開発や設計上の問題はなかったんですか?
田中 段差の小さいボンネットで面強度を確保するためには、部分的に分厚い部分を設ける必要があり、その結果、変形などが生じ、苦労しました。天板の裏側にひと工夫することでなんとかものになりましたが、何度も試行錯誤しましたね。
西村 ホントは、天板の山と谷を単にもっとフラットにすることもできたんです。でもそれでは機能美を追求したとはいえない。レッツノートは意味のある形と機能美にこだわっています。機能を追求した形を続けているので、たとえばテレビでチラッと映ってもすぐにレッツノートだとわかる。今回もそれは継承できているはずです。
宮野 薄さのゴールは最初から決まっていたんですか?
田中 25.4ミリです。1インチというキリのいい数字を目指しました。
山田 今、目いっぱい薄くしておかないとタッチパネル時代に困ることになりますからね。
宮野 そういう意味では正常進化なんですよね。ソフトの点ではどうですか?
田原 起動の高速化という点で、今回は“クイックブートマネージャー”にセキュリティーチップであるTPMをスキップする機能を搭載しました。何百ミリ秒という細かい作業の積み重ねで、起動時間約9秒を実現しています。
■12インチがマストのモバイル必然的に決まった解像度
山田 バッテリー駆動時間も申しぶんないですね。標準電圧版の第二世代 インテル® CoreTM i5プロセッサーを搭載しながらすごいことです。スマホ充電ができるUSB端子が用意されましたが、そのくらいではバッテリー駆動時間の残量はびくともしない感じです。
遠藤 スマホを持ち歩くようになってパソコンを開く時間って減っているんだろうけど、これはそんな人にも役立ちますね。
宮野 あまりバッテリー駆動時間が長いと、処理速度を遅くしてるんじゃないかって噂も出そうですが、実際、開発の方々はどう使っていらっしゃいますか?
田中 私は、自分の設計したPCのことをわかっているので、1泊の出張では電源アダプターを持って行かないことが多いです。
宮野 サイズなんかはすんなりと決まったんでしょうか。
田中 モバイルでは12インチを求める声が大きいため、それほどもめなかったですね。ただ、16:9がパネルのトレンドで縦方向の解像度が現行のSやNを下回ることがないように、今回はHD+を選択しました。また、16:9になったことで横幅が広がったので、バッテリーセルが4つ横に並び、結果的に液晶が180度フラットに開くようにもなりました。
西村 あるべきものが整理された、底面の美しさも見てほしいですね。ビスの並びとか。
田中 底といえば、蓋を外すとファン風の吹き出し口の内側にたまったホコリを掃除機で吸い出せるんですよ。これは新しい設計です。
遠藤 それはすばらしいですね。パソコンの調子が悪くなってくるのはファンがうるさくなるのでだいたい兆しがわかるんだよね。きっとホコリのせいだと思うけど、それってカタログにも書いてないし、発表会でも言ってないし、言わなきゃ誰も気がつかないよ。ちゃんとアピールしなきゃ!
山田 これだけのスリム化を図りながら、機能を落とさずに、こうした気が利いた改良を加えられるのはさすがですね。
最適化したSXの基板 |
SXシリーズの基板部分。横が約16センチ、縦が約12センチ。必要なものを最適配置したことで、Sシリーズに比べて部品面積が小さくなり、スリム化にも一役買っている。 |
排気口の掃除が可能に |
裏蓋を取り外し排気口の掃除が可能になったファン部分。 |
独自のドライブパーツ |
フタが上下に開く“シェルドライブ”Wのパーツ。省スペースと堅ろう性のために独自のユニットを設計。 |
キーボードデザインも一新 |
指の腹が接しやすいように外側部分にカーブを持たせたファンクションキー。 |
これが初期段階の試作機 |
ソフト開発初期で使われた段ボール製のSXの試作。 |
■対談の参加メンバー
ソフト設計担当 田原靖太氏 |
「長時間駆動のために、不要な電源を切るという発想から、プラットフォームの省電力化のためのソフトのチューンアップに注力しています」 |
機構設計担当 田中慎太郎氏 |
「モバイルだから12インチにこだわりたい。12インチで光学ドライブを装備できるのは“シェルドライブ”だからこそだと思います」 |
デザイン担当 西村拓紀氏 |
「意味ある形・機能美の追求というデザインが、レッツノートの信頼につながると考えています」 |
アスキー総合研究所 遠藤諭 |
「スマホでPCを開く時間が減ってきている。電源に求めるものが変わりつつあり、今回のスマホ連携は斬新かつ重要ですね」 |
本誌編集長 宮野友彦 |
「十分なバッテリーに加えて、新幹線の中とか給電できる場所も増えてきた実情も踏まえ、ミニACアダプターという選択肢は画期的」 |
オリジナル天板カバーが当たる!
予約キャンペーン実施中!
Facebookに公式ページが登場。予約宣言後、実際に購入した登録者の中から500名に着せ替え対応“オリジナル天板カバー”をプレゼント!
■関連サイト
レッツノートオフィシャルサイト
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります