NTTドコモは1月27日、度重なる通信障害に対し、記者会見を実施した。
山田社長は「ドコモは安心・安全でユーザーに支持されてきた。今回の障害によってご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げたい。傷ついたブランドイメージを一日も早く回復できるよう、努力していきたい」と謝罪した。
↑27日、あらためて謝罪をしたNTTドコモ幹部。役員報酬の一部返上も明らかにした。 |
NTTドコモは2011年度に5度に渡る重大な通信障害を発生させており、26日には総務省から指導が入っている。
昨年12月20日、今年1月1日はspモード、さらに1月25日には都内の一部エリアでパケット・音声通信がつながりにくくなる障害を起こすなど、相次ぐ重大事故に対して、NTTドコモの信頼が揺らぎつつある。
27日の記者会見では、通信障害への対策として、パケット交換機で1200億円、spモードシステムで400億円の設備投資を2014年度までに実施することを明らかにした。
山田隆持社長は「これからスマートフォンが5000万台になっても耐えられるネットワークを構築していきたい」と意気込む。1月25日の障害ではパケット交換機を現行型から新型に一斉に切り替えてしまったことが原因であったため、「新型と現行型を並列させて運用させることで容量を確保していきたい」(山田社長)とのこと。ほかにもメール情報サーバーの内部処理の見直し、パケット交換機の処理能力の一斉点検、設備増設を行なう予定だ。
↑昨年12月20日に発生したspモード障害を踏まえ、社内に“ネットワーク基盤高度化対策本部”を設置し、対策を準備していた矢先の大規模障害となってしまった。 |
今回の障害では、ここ最近、人気のVoIPやチャットアプリによる“制御信号”が莫大に増えたことで、パケット交換機の処理能力を超えたことが原因とされた。そのため「アプリ開発者にも、制御信号をできるだけ使わないような協力をお願いしていきたい」(辻村清行副社長)として、アプリ開発者にも理解を求めていく方針だ。
また、ほかのスマートフォンプラットフォームに比べてAndroidはトラフィックを大量に発生させる傾向が強いため、「グーグルのOS開発者とも話を始めている。OSレベルでアプリから出る制御信号をコントロールできないか、といった検討も始めている」(辻村清行副社長)とのこと。
会見では、記者からspモードのシステム設計自体を疑問視する声も聞かれた。システムがドコモ独自の設計になっており、それが障害を生む原因になっているのではないか、という指摘だ。その点に関して辻村副社長は「IPアドレスで識別して、電話番号で認証するやり方はKDDIでもソフトバンクでも、同じはずで特別ではない」という。ただし、「電話番号による認証結果をサービスに展開するのは世界でもかなり先進的なオペレーターだと思う」と語る。
また、iモードサービスをスマートフォンにも展開する意義を問われると「iモードユーザーが5000万人以上いる。おサイフケータイやiコンシェルといったサービスを使いたいという要望が強く、それに応えたかたち」(辻村氏)と答えた。
ただ、他キャリアを見ると、ソフトバンクモバイルのキャリアメールはMMSベースになっている。auもCメールをSMSベースにし、iPhoneでもまもなくMMSに対応する。どちらもスマートフォン時代を見据えた姿勢に生まれ変わっている。
NTTドコモでのMMS導入の可能性を聞かれた辻村氏は「アメリカではFacebookが利用され、メールを使わないようになりつつある。メールに関しては重要なテーマとしている」と回答。MMS導入に関しての具体的は発言はなかった。
ここ最近のスマートフォンの売れ行きを見ると、富士通『ARROWS X』やシャープ『AQUOS PHONE』など日本特有機能を搭載したモデルの人気が高い。確かにスマートフォンにiモードのような機能を求めるユーザーが増えつつあるのは間違いない。NTTドコモとしても、そういったユーザーに応えるためにspモードの開発に注力していた。しかし、やはりスマートフォン時代では、キャリアのシステムもグローバルスタンダードに近づける必要があるのではないか。
iモードのような機能をスマートフォンに求めるユーザーがいる一方で、「ドコモはいつでもどこでも快適につながるだけでいい。余計なキャリアサービスは不要」というスマートフォンユーザーもいる。もはや“何でもかんでもキャリアが提供する”という時代は終わったように感じる。
“spモードのための複雑なネットワークシステム”を維持する必要は本当にあるのだろうか。spモードメールの障害を見ていると、NTTドコモとして改めてspモードの存在意義を見直す必要があると感じた。
※石川温氏のさらなる見解、コメントが1月31日発売の週刊アスキー“スマホ魂”ページにて掲載予定です。
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