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グローバルモデルを積極的に取り入れ選択肢を広げたau2012春モデル発表会

2012年01月17日 23時32分更新

 KDDIが春の新サービスや新端末を発表した。今回の記者会見は単なる春モデルのお披露目ではなく、同社がかねてより推し進めようとしていたマルチデバイス、マルチサービス、マルチネットワークを推進する“3M戦略”や、それにまつわるサービス、料金、端末を総合的に打ち出す場という位置づけだったようだ。まず全体的な考え方を示したあとで、サービスや料金から説明するというプレゼンテーションの組み立てからも、同社の3M戦略にかける意気込みが伝わる。では、具体的に、KDDIはどのような世界を実現しようとしているのか。まずは、サービスから詳細を見ていこう。

au2012春モデル発表会
↑会見に登壇する田中社長。ロゴのデザインもリニューアルし、新生auを印象づけた。

 同社の田中孝司社長が「販売台数の56パーセントがスマートフォン。この後も堅調に伸びると予想している」と言うように、すでにスマホの普及は規定路線になりつつある。一方で、ITになじみのないユーザーからは、使い方がわからない、ウイルスなどのトラブルが怖い……といった声が挙がっているのも事実だ。田中氏が「本当にスマートフォンを使いこなせているのか」と述べたのには、このような背景がある。

au2012春モデル発表会
au2012春モデル発表会

↑スマートフォンの普及率が上がる一方で、ユーザーの不満も顕在化している。

 このユーザー層に照準を合わせて投入するのが、『auスマートパス』だ。auスマートパスとは、定期購読型で定額のアプリや、au専用のクーポン、セキュリティーサービスを組み合わせたサービスのこと。KDDIがアプリを厳選し、安心・安全を提供するセキュリティーアプリなどと一緒に提供することで、初心者のスマホに対する敷居を下げようという狙いがある。もちろん、使い方によってはお得感のあるサービスであり、スマホに慣れたユーザーが利用してもよいだろう。日本で人気のゲームに加え、「海外の人気アプリや、最先端のアプリも入ってくる」(高橋誠専務)と、用意するアプリのバリエーションも豊富だ。田中氏も「辞書からゲームアプリまであり、本当にオトク」と胸を張る。10GBのオンラインストレージも、このauスマートパスに含まれる。

au2012春モデル発表会
↑500本の取り放題アプリや10GBのオンラインストレージ、セキュリティーサービスで構成される『auスマートパス』。
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↑海外の人気アプリも取りそろえていくという。

 次に紹介したのが『auスマートバリュー』で、これは、FTTHやCATVなどの固定回線とauのスマホを組み合わせることで、割り引きを受けられる料金プランだ。対象となるのは“ISフラット”や“プランF”などを契約したauの回線で、固定通信については“auひかり”のほか、CATV各社や関西電力グループのケイ・オプティコムが提供する“eo光”と組み合わせることができる。データ通信料が最大2年間、1480円割引となり、世帯丸ごと恩恵を受けられるインパクトは決して小さくはない。NTT法の絡みもあり同様の施策を展開しづらいNTTドコモやNTT東西に加え、光回線のサービスに弱いソフトバンクにも提供のしづらい割り引きと言えるだろう。田中氏が「ゲームチェンジ」と述べたのには、このような意味合いがあると見られる。

au2012春モデル発表会
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↑対象となる固定回線がauに限定されないのも、この料金プランのインパクトが大きいところだ。

 KDDIは、このようなサービスをスマホにとどまらず、タブレットやテレビなどにも展開することを計画している。田中氏が「インターネットはそれ自身、オープンで自由な世界」と述べているように、さまざまなコンテンツやサービスをクラウドで共有できるのが3M戦略の真骨頂だ。『au one ID』を『au ID』へと発展させた理由もここにある。サービスやコンテンツを、個々のデバイスではなくひとつのIDにひも付けるためで、今後の重要性を考慮してのリニューアルと見てよさそうだ。

au2012春モデル発表会
↑ひとつのIDにサービスやコンテンツがひも付く、マルチデバイスのサービスを実現しようとしている。
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↑『au one ID』は『au ID』に名称を変更し、マルチデバイスのキーとなる。

 これらのサービスや戦略があったうえで、春モデルとして新たに5機種のスマホを投入する。田中氏が「世界中から最新のものを日本に持ち込み、選べるauを実現した」と語るように、端末はグローバルモデルが中心で、今まではドコモ中心だったサムスンやLGエレクトロニクスといった顔ぶれも加わった。

au2012春モデル発表会
↑春モデルとして、新たにAndroid搭載のスマホを5機種発表。

 サムスン電子は日本でも一大ブランドに成長したGALAXY S IIのWiMAX対応版である『GALAXY S II WiMAX ISW11SC』を開発。720×1280ドットのディスプレーなど、ドコモ版のGALAXY S II LTEよりスペックも強化している。NFCを搭載し、KDDIが新たに始めるサービスに対応するのもこの端末の魅力だ。LGエレクトロニクスはGeForceのグラフィックプロセッサーや、輝度の高いIPS液晶を搭載した『Optimus X IS11LG』を投入する。もともとauに端末を提供していたソニー・エリクソンは、デュアルコアCPUを搭載しワンセグ、おサイフ、赤外線、防水にも対応した『Xperia acro HD IS12S』を用意した。

サムスン『GALAXY L II WiMAX ISW11SC』
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↑新たにサムスンがスマホを投入。WiMAXやNFCなどに対応し、人気が出そうだ。
LGエレクトロニクス『Optimus X IS11LG』
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↑LGエレクトロニクスもOptimusをau向けにリリース。処理能力の高さが特徴だ。
ソニー・エリクソン『Xperia acro HD IS12S』
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↑Xperia acroのau版。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線に加え、防水にも対応。

 他キャリアにない端末として話題を集めそうなのが、モトローラの『MOTOROLA RAZR IS12M』だ。フィーチャーフォンとして一斉を風靡したRAZRブランドを冠したスマホで、最薄部7.1ミリとスリムながら、1.2GHzのデュアルコアCPUや1780mAhの大容量バッテリーなど、高いスペックを誇る。特定のトリガーに反応して自動的に各種設定を変更する“Smart Actions”や、PCのようなUIの画面を出力できる“WebTop”も、モトローラならではの機能で面白い。
 KDDIが独自に作り込んだ、テンキー搭載型の『INFOBAR C01』も投入する。フィーチャーフォンとして人気を博したINFOBARの姿をそのまま受け継ぐ外観で、デザインと操作性を両立。INFOBAR A01で好評を博したカスタマイズ性の高い“iida UI”も搭載している。

モトローラ『MOTOROLA RAZR IS12M』
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↑薄型で衝撃にも強いMOTOROLA RAZR。海外スマホ好きの人気が高そうな1台だ。
シャープ『INFOBAR C01』
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↑テンキーを搭載し、よりフィーチャーフォン時代のデザインに近づいたINFOBAR。

 サービス、料金、端末と3拍子そろったauの発表会だったが、auスマートパスは、スマートパス構想の序章に過ぎないという。今後1年かけ続々と新サービスを披露していくことになり、期待がもてる。

 ただ、気になったこともあった。先に田中氏が述べた言葉を引用したとおり、2012年はスマホが本格的に一般層に普及する1年になる。それに対して端末はグローバルモデルが多く、おサイフ、ワンセグ、赤外線通信のいわゆる“三種の神器”に全対応しているのがXperia acro HDとINFOBAR C01だけというのは、やや心もとない。すでに発表済みのスライド型でテンキー搭載の『AQUOS PHONE IS14SH』や、薄型端末の『ARROWS ES IS12F』などを含めて春モデルと考えれば十分な端末数ではあるが、WiMAXを前面に打ち出した秋冬モデルよりもテーマ性やバリエーションが乏しい印象も受けた。
 余談にはなるが、サービスに主眼が置かれていたためか、説明会でも、端末の解説が駆け足になったと感じている。このラインナップが同社の春商戦にどのような影響を与えるのか。今後の動向も、注意深く見守っていきたい。

最新スマホまとめ:2012春モデル

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